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地図なき直進

レジスタンスを立ち上げてすぐのこと。

COMRADEシリーズ「ラナン」サイドの、時間軸としては「過去」にあたる作品。


富豪の家に泥棒するため忍び込むラナン。

その行為に、未だ納得できない、滅びた国の皇子「サノイ」は、不安を抱いている。


迷うそぶりなく突っ切るラナンは、当然「地図」を持っているはず。

しかし、実際は……?

 これは、ラナが「ラバース」を辞めてすぐの出来事だった。


「ちょっといいですか?」

これまで、文句のひとつも言わずにラナの後に続いていたリオが声をあげた。とうとうこの不可解な行動にリオも疑問を抱いたのかと一瞬喜んだ私であったのだが、リオはこの行動に疑問を抱いたわけではないということがすぐに分かることとなる。

「ラナ、あなたいつの間にここの地図を手に入れたんですか?」

「ん? 地図?」

ラナは屋敷に入ってからというもの、迷わず、ただひたすらに一直線に……まぁ、おそらくは金庫だと思うのだが、そこに向かって走っていた。そのおかげで、潜入してからまだわずかな時間しか経っていないのだが、随分と奥まで入ってきた。これだけ自信ありげに進んできたところを見ると、事前に地図を手に入れて、入念にチェックを入れていたとしか思えない。

「そんなもの…………持ってねぇけど?」

「えっ……?」

私とリオは、とうとう言葉を失った。

「いや~……だってさ? 地図なんて思いつきもしなかったなぁ。というかさ、地図なんてそもそもあるんかな? あったらまぁ、便利だよな。こんな豪邸住んだことねぇし、わっかんねぇや」

私は一気に血の気が引く思いをした。地図もなしで、これだけ広い屋敷を走り回っていたというのか? 私たちは今、どこを歩いている? どこへ向かっているのすら、分からないではないか。

 現在地も分からなければ、目的地へのルートも何も分かっていない。無謀だ。あまりの計画性のなさに、私は愕然とした。


 今更ではあるが、ラナと私は根本的に性格が合わないのだ。


「では、ラナはどこに向かっているんですか? 目的があって走っているのではないんですか?」

私よりも、リオはラナとの付き合いが長かった。その分適応能力も早いのであろう。すぐさま頭を切り替えて、ラナに言葉を投げかけた。ラナとの付き合いが短い私は、リオとは対照的であり、未だ言葉を失ったままだ。

「どこって、金庫を目指してるんだけど……?」

予想通り、ラナは金庫を目的地にしていたらしい。その言葉を聞いて、私は少しだけ安心した。どうやら、金庫の位置だけは分かっているようだ。


 しかし、その安心はほんの束のものであった。


「なんか、こっちっぽくない?」


 何を根拠にそう言えるのか。


 もはやこの能天気なリーダーを前に、かける言葉はなかった……。




 この能天気なリーダーの名前はラナン。愛称は「ラナ」。この国、いや、世界を支配している王国フロートの傭兵組織「ラバース」の小隊リーダーだった男だ。しかし、小隊といっても、ラバースの中に存在する五つある組の、最下位クラスだったらしい。


 このフロートという国には、二種類の軍隊が存在している。ひとつがその「ラバース」だ。ラバースはただの傭兵組織であり、貧しい村の出のものが、出稼ぎのためによく志願してくると聞く。または、フロート直営の孤児院があり、その孤児院から将来有望な少年を、引き抜くという話も聞く。

 ラバースに存在するクラスは、上からS、A、B、C、Dと分けられており、各クラスにチームリーダー、隊長と副長が設けられている。ラナはDクラスの隊長であり、現在ラナと同行しているもうひとりの男、リオス。愛称「リオ」は、ラナがDクラスで隊長を務めていたときに、副長を務めていた。

 ラナがラバースに入隊してくる以前は、リオがDクラスの隊長をしていたようなのだが、何かがきっかけで、ラナが隊長に、リオが副長に就くことになったらしい。

 その詳しい経緯を、私はまだ聞いていない。これから先も、聞くことはないかもしれない。それは、すでに過ぎ去った時だからだ。


 今重要なのは、現在であり、未来だ。


 そしてもうひとつの軍隊、フロートの要。実質上この世界で最も力を持っている、「レイアス」という特殊部隊だ。

レイアスはラバースとは違って小隊に分けられてはいない。「ジンレート」という若き青年が隊長を務めており、その下には二十名ほどの「魔術士」が在籍していた。



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