一時間くおりてぃ
いつもの帰り道、いつもどおりの帰り道、ただいつもと違うのは、二人の距離が半歩分遠い。
セミロングの明るい茶髪と黒いロングのポニーテール、その二つがふらふらゆらゆらと、いつもより半歩遠い距離で揺れていた。
声が響いた。
「ねぇ、嫌いになった?」
「何で……?」
「いや、よく考えなくても嫌われるような事を言った自覚はあるし?」
ビクリと驚いたような反応と共に返事が返ってきた。
「そんなこと……ないよ」
返事は否定だけれど、その声はどこか震えるような声だった。
「でも、いつもより遠いよ」
自分が思うよりも沈んだ声が出た。
自分は自分で思っているより引きずっているみたいだ、なんで言ってしまったのかはわかっている。以前から思っていたことだ、そのことに嘘はつきたくない。でも、傷つけようと思ってはいなかった、そんな事思っていなかったんだ。
彼女は何時も人に囲まれていた、誰も言葉にはしないけど、校則違反のはずの明るい茶髪も、彼女に似合っているから何も言われない、そんな人に好かれる子。
背が高くて、切る勇気がでない髪をまとめるためにポニーにしている私はとっつきずらいみたいで、高校に入って変わった環境になじめなかった事もあり、孤立してしまった私に、何の屈託もないく話しかけられた。その笑顔がとても綺麗で、私はたったそれだけのことで彼女のことが好きになった。
それからいつも二人で一緒に帰るくらいには仲良くなったけれど、どこか彼女のことが遠くに感じていたんだと思う。
だから放課後皆居なくなった教室で、
「今日、隣の男子に告白されたんだ」
困ったように、でもどこか嬉しそうに相談された時の彼女の顔を見て、言ってしまった。
「あなたが幸せそうなのは、私は嫌だ」
言うつもりはなかった、でも気づいたら言葉はこぼれてしまってた。
それから気まずい感じになって、私たちはなにも言えないまま、どちらともなく、いつもどおりに二人で帰りはじめてた。
「実はね、私も同じ事思ってたんだ」
その言葉に私はひどく驚いて、悲しくなった。
皆に好かれて、綺麗に笑う彼女に、そんな言葉は似合わないから。聞かなかったことにしたかった。
言葉が続いた。
「私達って二人とも似てないけど、そんなに変わらないと思うんだ」
「私も、あなたが幸せそうだときっと辛い」
「だって、あなたは私と遠いから、あなたの幸せの隣にいるのは、私じゃない」
「だから、あなたの幸せを、私は許せない」
気付いたらもう彼女の家の前だった。
「また明日」
「また明日」
今日、私達は少しだけ距離が縮んだ。でも、私たちの距離は明日も昨日と変わらない。
変わらないで、私があなたの隣にいたいから