プロローグ 30歳まで童貞を守り抜いたけど魔法使いになれませんでした。
プロローグ 30歳まで童貞を守り抜いたけど魔法使いになれませんでした。
「恋してえぇ」
私は布団の中で呟いた。
私は細川健次郎、無職、童貞の30歳だ。今のところ希望はない。
あるのは溢れんばかりの絶望だけだ。
「私は何故こうなった?」
天井のシミを数えながら考える。
私はいつ選択肢を間違えたのだろうか?大学受験に失敗した時だろうか?
浪人をしても希望の大学に入学できず、夜間の大学に消去法で入学した時だろうか?それとも就活に失敗し、ブラック企業に就職した時だろうか?
どやら誤った選択を無数に選択した結果、今の私を構成しているようだ。何故私は人生の重要なターニングポイントで尽く誤った選択肢を選んできたのできたのだろうか?
理由は簡単明瞭だ。それしか選択肢が無かった。
選択の余地が無かったのだ。故に私は悪くない。
悪いのは運勢だ。きっと私は不幸になる運勢の下に生まれてきてしまったのた。
私にはHappy Endは存在しないのかも知れない。
でもさ、ニートにもたった1つだけ欲望がある。
「恋人が欲しい。」
恥ずかしながら、ニートでも恋したいんです。
ネットでは「30歳まで童貞だったら魔法を使える」という噂がまことしやかに囁かれる。そこで私は試してみました。えぇ、私はアホなのです。
私は「30歳」まで童貞を守りぬきました。
正確には30歳まで彼女が出来ませんでした。
そして、30歳の誕生日を迎えた夜、私は泣きました。
残念ながら30歳になっても魔法は使えませんでした。
噂は噂です。現実は残酷で夢も希望もありません。魔法なんて夢のまた夢。
彼女いない歴=年齢という「最弱の男」が30歳まで童貞を守った男の報酬です。
「恋してえぇ」
枕に涙が落ちた時、同時に私は眠りに落ちた。