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強奪勇者物語  作者: ルスト
バグリャ
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番外編 ドンジャラで遊びましょう(前編)

PV100000の番外編。本編に非常に近いパラレルワールドです。

ついでに牌は完全オリジナルです。全部は……出ないでしょうけど。


ドンジャラ…四人で遊ぶゲーム。各自初期ポイント4000からスタートし、役を揃えて誰よりも早く上がることを目標とする。組み合わせとしては三個一組の牌を三つ揃えた物、三個一組+六個一組、同じ種類九個全部の牌を集めた物があり、その絵柄の組み合わせによって役が決まる。なお、牌の数は八十一個で、牌が尽きても(全部手牌と捨て牌になっても)誰一人上がらなければ引き分けになる。


手牌は各自八個持ち、毎ターン一個引いて一個捨てると言う方式のため、運よく引き当てる(ツモ)かリーチ宣言をしてから他のプレイヤーの捨てた牌を奪う(ロン)で九個揃えることとなる。リーチ宣言をするとロン出来る代わりに手牌を入れ替えられなくなる。

最初に親がランダムに決定され、一試合ごとに順番に親が交代する。なお、原則親からスタートするほか、親の時に上がるとポイントにボーナスがかかる。

「へい、いらっしゃいいらっしゃい! 最新のゲームが入荷したよ!」


 バグッタの町中を歩いていると、見たことも無い物を売っている屋台が営業していた。

 ……ゲーム……って、何だっけ?

 この前のエアライドみたいな、皆で遊べる機械の事?


「らしいですね。……ドンジャラ? 離れた場所、空間の人とでも対戦できるゲームらしいですよ」

「……最新版ドンジャラ。大人気の異世界系ゲームと同じく、電脳空間に自分の意識を飛ばして遊ぶことができるため、相手との距離などを気にすることはありません! か。どうする? 試しに買ってみるか?」

「……うーん……」


 遊んでる場合じゃないと思うんだけどな……。


「まあ、たまにはいいんじゃないかな? せっかくだし、皆で遊んでみるのも良いんじゃない?」

「マディスさんに賛成です。買いましょうよ、ルーチェさん」

「もう……。私達、遊んでる余裕はないはずなんだけどな……」


 そうはいっても、私もちょっと興味がある事は事実。

 だから結局買っちゃうことに。


「まいどあり! ああ、やる時は部屋でやってくれよ! 外でやると身体が大変なことになるかもしれないんでな!」

「分かりました。……早速戻って部屋でやってみましょう」

「そうだね」


 どんなゲームなのかな?






「えっと……まずはこの帽子らしきものにこの紐を取り付け、その上で頭にこれを被る。そしてその後はスイッチを入れて寝ればいいらしいですね」

「俺とマディスは準備できた。そっちはどうなってる?」

「……準備完了っと。大丈夫だよ」


 みんな準備できたみたい。

 私も準備できたし、さっそく始めてみようかな。


「えっと、このスイッチを押して……」


 スイッチを押した直後に10からの唐突なカウントダウンが始まり、カウントダウンが0になった直後、私の意識はどこかへと飛んで行ってしまった。




「やあ! ようこそ! ドンジャラ・オンラインの世界へ! さっそく遊んでいくかな?」


 意識が戻ってきたと思ったら、そこは見たことない煌びやかな空間だった。

 突如聞こえた声の正体は空中に浮いている神と書かれた大きな四角い板だった。

 それから声が聞こえてくる。


「はい。元よりそのつもりですよ」

「ああ。で、どうすれば遊べるんだ?」

「って、え? 二人ともアレが気にならないの……?」


 ジルとルシファー、それに黙っていたけどマディスも、空中に浮いた喋る板の事がまったく気になっていないみたい。

 ……普通気になるよね?


「ここが電脳空間である以上、気にするだけ無駄ですよ」

「だね。仮想空間だしね~」

「なんと! 冷静な反応だね! まあ、別にかまわないけどね」


 ……そう言う物なのかな……?

 

「え~、さて、始める前に注意事項。このドンジャラ、自分たちが持っている現実世界のお金をかけて戦ってもらうよ。だから、負けたら当然お金が無くなっちゃう。破産しちゃったら大変なことになるからね?」

「そうなる前に抜けろ、と言う事ですね」

「そう言う事! 物わかりのいい人は嫌いじゃないよ」


 かなり重要な事を言われた気がするけど、言っているのが巨大な板だからか、あんまり真剣に聞こえないんだよね……。


「注意しましょう。ルーチェさん」

「……うん……」


 まあ、最悪でも全財産失う前に抜ければ大丈夫だよね。


「さて、さっそく対戦してみるかい?」

「当然です」

「えっと……ああ、今は三人なら参加できるよ。すぐに戦えるけど、どうする?」


 三人? って事は、一人だけ待つことになるのかな?


「じゃあ、私は見学してるよ」


 やったことないし、どんなものなのか確かめないとね。


「良いんですか? じゃあ、遠慮なく」

「徹底的に巻き上げるから期待しておけ」

「行ってくるよ~」


 私を除いた三人は突如空中に出てきた椅子に座る。

 直後、椅子が浮き上がって三人を奥へと運んで行った。

 ……凄い……。


「じゃあ、見物の君にも椅子を用意するよ。座って」

「あ、ありがとう」


 板に促されるまま私は目の前に降りてきた椅子に座る。

 すると、私を座らせた状態で椅子が突如浮き上がった。

 ……本当に、どうなってるんだろ……。


「じゃあ、観客席に一名様ご案な~い」


 喋る板に見送られながら、私は空飛ぶ椅子で運ばれていった。




ーーーー




「おいおい、通行税も払えないのか? 勇者様の旅の資金を援助できないと言っているのと同じだぞ?」


 ルーチェたちがバグッタでゲームを購入しているちょうどその頃、バグリャの手前でとある行商人が兵士に詰め寄られていた。

 どうやら、短い街道に幾つも立ち並ぶ関所全てで大金を要求され、払えなくなってしまったようだ。


「し、しかしですな……ここに来るまでに関所が幾つも並んでいたではありませんか! その関所全てで金を払わされたんですぞ!?」

「知るか! おい! 金が払えねえなら、荷物で払いな!」

「なっ!? そ、それは私が昨日やっとの思いで仕入れた……!」

「税金はこれで免除してやろう! だからバグリャに進むがいい!」

「お、横暴です! こんなのは……あんまりですよ……!」


 バグリャの罠に嵌った可哀想な商人は、せっかく仕入れた商品を強制的に奪われてしまう事となった。


「勇者様に献上するか。褒美が出るかもしれんぞ」


 商人から奪い取った商品を勇者に献上するべく走り出したバグリャ兵。

 この商品がバグリャ勇者を、バグリャを破滅させる引き金になるとは、彼はまだ足らない――――。





「勇者様! 商人より勇者様に献上品を預かってきました」

「ほう? 僕に献上品だと? ……これは!」


 兵士が差し出した物を見て、勇者の顔色が一変した。


「はい。異国の地で開発された「ドンジャラ・オンライン」ですね」

「でかした。君には褒美を渡そう。特別ボーナスだ」


 この献上品を気に入ったらしく、勇者はこの兵士に特別ボーナスを支給することとし、兵士に手渡す。

 勇者の部屋を出て行った兵士の手にはなけなしの500ゴールドが握られていた。

 これが女の子だったなら軽く20000ゴールドほど握らせただろう。


「ふふふ……やっと手に入った。さあ、僕の華麗なる活躍を存分にご覧に入れよう! 華麗に戦う伝説の勝負師、その正体はバグリャの伝説の勇者……最高じゃないか! 行くぞ!」


 準備を終えたバグリャ勇者がそう叫ぶと同時にカウントダウンが終わり、勇者の精神は異世界に飛ぶこととなった。




「はっ!? ここは……ゲームの世界の中か!」

「はい。そうでございます、お客様」


 勇者が意識を取り戻すと、そこはすでにゲームの中だった。

 そう、バグリャ勇者もドンジャラをプレイするためにこの世界にやってきたのだ。

 バグリャ勇者が上を見上げると、無機質な機械から音声が出ていた。


「なるほど……話は速い! 僕をさっそく試合会場に!」

「畏まりました! 行ってらっしゃいませ!」


 そんな短い言葉を交わすと、彼は突如地面から出てきた椅子に座り、試合会場に運ばれていった。




ーーーー


「さあ、僕の華麗なる伝説の幕開けだ!」


 ジルです。……ようやく対戦相手が到着したようですね。

 私、ルシファーさん、マディスさんはすでに結託していますし、ルールブックも目を通しました。

 初期のポイントは各4000で、ポイントが増減した分お金を払ったり貰ったりするみたいです。

 ……それと、どうやらこのドンジャラ、普通のドンジャラと違って特技とか言う一発逆転の技が使えるみたいですね。


「……ツモ封印、ロン封印、って、これ併用されたら上がれないじゃないですか」


 他にも、相手の手牌を自分の手牌と交換したり、自分の手牌すべてを山に戻してシャッフルした後引きなおしたり、色々できるみたいですね。捨てられている牌と自分の手牌を交換できるって斬新すぎますよ。

 ……そして、一試合で使えるのは合計6回までみたいですね。

 まだまだありますが、やっていくとしますか!


「試合……開始!」


 始まりましたね。誰が親になるんでしょう?

 ……ルーレットを回して……マディスさんが最初の親ですか。

 マディスさん→ルシファーさん→敵→私の順ですね。

 私たちは互いに結託しているのであまり喋れませんが、マディスさんが上がれるようになるべく誘導していきましょうか?


(私の手牌は……というか、何ですかこの手牌。数字ばっかりじゃないですか。赤の1、4、7、黄色の2、4、青の1、緑の5、そして唯一違う牌がワイナーですか……)


 ルールブックに載っていましたが、出てくる手牌のうち、半分近くは色が違う1~9の数字で構成されています。

 無論、数字を並べて役を作ればボーナスが入るので大きいのですが、それでもこれは……。

 赤、青、黄色、緑、1~9……。カードを捨てていくゲームじゃないんですから……。


「僕の番だね。……これを捨てるよ」


 マディスさんが捨てたのはマシンインセクトの牌。……なんで魔物の牌なんてあるんでしょうかね。

 魔物の牌の中に何故かワイナー、ディイド、エンゲルなんて入ってますし。


「俺だな。……捨てるのはこれだ」


 ルシファーさんが捨てたのは黄色の3。黄色の回収には特技必須ですね。


「僕の番だ。……ふふふ、さっそくリーチだ!」


 ……いきなりですか。八百長でもしてるんですか?

 そんな状態で放置するわけにもいきませんね。

 ……捨てた牌はルシファーさんですね。

 まあいいです。


「そんな状態で居るなら使わないわけにはいきませんよね。手牌交換」

「何!?」


 必殺の手牌交換。リーチの状態でもお構いなしに奪えるって恐ろしいですね。

 ここで使ったらその試合では後五回しか使えませんが、別にかまわないでしょう。

 対戦相手の愕然とした顔が素晴らしいです。普通のドンジャラでは見られませんね。


(……いきなりヒローズの勇者、ベルナルド、レミッタ、スロウリー、教皇が揃っているって……イカサマでもしたんですかね? 残りは私、ルーチェさん、そして知らない女の子の牌ですね。……どうして私達と同じ分類になっているのやら)


 まあ、今は気にせずにやりましょうか。


「リーチ状態の牌を奪ったのでリーチ宣言は要らないですかね?」

「まあ、見ていればわかる」

「うん」

「……ああ(くっ……でも、女の子が相手じゃ過激な報復は出来ないな……)」


 では引きますね。


「……どうぞ」


 残念ながらツモは無理でした。まあ、無理も無いですね。

 私が捨てたのは能面の牌です。

 ……捨てられているのはマシンインセクト、黄色の3、ルシファーさん、能面ですか。


「僕か……。牌交換でルシファーを回収するよ。代わりに黄色の1を捨てる」


 マディスさんの手牌は分かりませんが、ルシファーさんの牌を回収したって事は、私の持っている牌と同じ牌を持っているって事でしょうか?


「俺だな。……これを捨てる」


 ルシファーさんが捨てたのはミドガルズオルム……でしたっけ? の牌。

 ……何も出来ないですね。


「くっ……牌交換で黄色の1を回収する」


 敵は代わりにワイナーを捨てました。

 ……どうなりますかね?


「ふふふ……もう一度リーチだ!」


 ……元から結構揃っていましたしね。

 ちなみに彼が捨てたのは緑の5です。……どう考えても青の数字が当たりですね。


「私の番ですね。……あなたのロンを封印します」

「なっ……せっかくのリーチなのに!」


 これで残り四回ですか。まあ、問題ありません。

 この試合が終わって次の試合になったらすぐにポイントが補充されて使えるようになりますし。


「……次どうぞ」


 敵のロンを封印したものの、当たりは来ません。

 まあ、まだ始まったばかりですしね。


「僕の番だね? ツモを封印するよ」

「なっ……!? 何で僕だけ……!」


 私たちが結託しているからに決まっているじゃないですか。


「……来ないなあ……」


 そう言いつつマディスさんが捨てたのは赤の3でした。

 ……何も出来ませんね。


「俺の番……何も出来ないな。まあいい、お前の特技を封印しよう」

「だからどうして僕だけが狙われるんだ!?」


 私達が結託しているのもあるかもしれませんが、一番の原因は試合前に変なこと言ったからでしょう?

 ちなみにルシファーさんが捨てたのは赤の5です。


「くっ……引くことしかできないなんて……!!(しまった! この牌……彼女のリーチの……!)」

「どうしました? ツモは出来ませんがリーチ状態なんですから、早く捨ててください」

「くそっ!」


 敵が捨てたのはヒローズの教会騎士団兵士(赤色)でした。

 もちろん、これでロンしない理由などありませんね。


「貰いますよ。ドンジャラです!」

「くそっ……僕がいきなり……!」


 マディスさんに勝たせることが出来なかったのは少々残念ですけど、かなりの量のお金が飛ぶはずですよ。


「清算するよ~。ヒローズの勇者、ベルナルド、レミッタ、スロウリー、教皇、教会騎士団・赤、ルーチェ、ジル、アスカだね~?」


 私たちがこの世界に来たときに案内をしてくれた板が点数計算を始めました。

 板が計算するって結構不思議な光景ですよね。


「ヒローズ勇者関連で……教皇までそろっているから「ヒローズ勇者一味」「主従」「教会関係者」「騎士と教皇」計3000点! ルーチェ、ジルで300点! 自牌で更にボーナス200点! 今回のレートは……10000倍だ! 3500×10000=35000000! 35000000ゴールド支払ってもらうことになるよ!」

「な……何だその金額は!? や、止めろ! 僕の金を……!」


 レート10000倍って……ぼったくりレベルですね。まあ、勝ち続ければいいんでしょうけど。

 それに私達は国家予算を巻き上げていてお金ならまだまだ大丈夫です。

 私に35000000ゴールドも払わされることとなったこの敵には同情しますね。


「な……ああ……!」

「おっと、まだポイントが500点残ってるよ! じゃあ、次の試合に行ってみようか! まだ負けたわけじゃないから、巻き返すチャンスはあるだろう!?」

「くっ……僕の金……必ず取り返す! 試合を続けろ!」


 どうやらまたやる気になったみたいですね。さあ、貴方の未来はどうなるでしょうか?

討伐対象はバグリャ勇者に決まりました。残念ながらこの話は本編にはできませんが。いきなり超絶なぼったくりレートですが、こんなの地獄の入り口です。最終的にはこの世界のバグリャ勇者は……。


ドンジャラの説明……足りないところがあったりしないか不安ですね。

後、言うまでもないですがツモ封印なんて現実のドンジャラでは使えませんのであしからず。

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