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強奪勇者物語  作者: ルスト
バグリャ
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匠のリフォームを見てみましょう

 翌日、私たちは依頼を受けるためにバグリャギルドを訪れていた。

 昨日玉砕していたバグリャ勇者一行は昨日の怪我が原因で動けないと町の人達が話していた。

 要するに今日はあの連中に会わなくて済むんだ。


「で、どの依頼から受けるんですか、ルーチェさん?」

「え? ああ、空間の匠だっけ? から受けていくことにするよ」

「空間の匠? 何かを作るの?」

「話を聞いた限りじゃ、絶対ロクなことしそうにないけど……」


 まあ、依頼を受けてからのお楽しみかな? 早く依頼を受けよう。


「あら、昨日の女の子ね? どの依頼を受けるのかしら?」

「空間の匠の依頼を受けます」


 とりあえず最優先事項だよね。これ。

 バグリャの建物を無差別に攻撃していく危険人物みたいだし。


「空間の匠ね。……じゃあ、説明するわ。数か月前からこのバグリャに突然出没した空間の匠を名乗る自称リフォーム業者を討伐してほしいの。奴は、解放感が足りないとか狭いとか滅茶苦茶な事を言って建物を破壊し、辺りを溶岩の海に変えてしまうような物騒な男のうえ、討伐しても何度でも蘇ってくる厄介な奴よ」

「討伐しても何度でも蘇る……? どういう事ですか?」


 そんな話昨日は聞いてないけど……。


「溶岩の海や爆破行為によってたまにあいつ自身が自爆したり、出会いがしらに攻撃したりすることで匠を討伐したことはあるの。でも、その数分後には遺体が消え、どこからともなくまたあいつが現れるわ」

「……死なないんでしょうか?」


 ジルがぽつりと呟く。

 ……生き物である以上死なないのはおかしいけど……。


「分からないわ……。ただ、確実なのはあいつを普通に討伐しても絶対どこかで湧いてくるって事だけよ」

「……一度確認した方が良いだろうな。何処に出没する?」


 グリーダーが匠の出没場所を聞き出そうとした、直後。


「大変だ! 匠がとうとう町をリフォームするとか言って爆弾片手にやってきやがった!」


 町の人がギルドに駆け込んできて匠の襲撃を告げる。

 ……町をリフォームって……要するにバグリャを壊すって事!?


「言っているそばから出没か? まあいい。手間が省けたな」

「……行こう! 急いで止めないと!」


 何をしでかす気かはしらないけど、絶対ロクな事しないよね!?







「ハーハッハッハッ! この狭苦しい空間を、私自ら解放感ある世界に変えて見せようではないか!」

「やめろ! 帰れ! 私の家に何をする気だ!」


 ギルドを飛び出した私たちの目に飛び込んできたのは、広場にある建物の一つの前に街道で見かけた「株式会社 空間の匠」と書かれた旗を背負った眼鏡の男性が爆弾を大量に抱えて立っているところだった。

 匠が立っている家の入口にはこの家の住人らしき人が立ちふさがり、中への侵入を拒んでいる。

 ……止めないと!


「待て! 奴は大量の爆弾を抱えてるんだ! 下手に近づいたら吹っ飛ばされるぞ!」


 匠を止めようとした私を町の人間が止める。

 ……そんなこと言ったって、近づかないと何もできないじゃない!


「ん? ……私のリフォームも人気が出たのかな? 観客が以前よりも増えているな。まあいい。……さあ、この家の家主よ! 無駄な抵抗は止めて私にリフォームをさせるがいい! 今なら爆破+マグマでゆとりある空間をプレゼントしてあげよう!」

「何考えてるの!? 人が住める空間じゃなくなるよ!?」

「んん? 観客の中に見慣れない人間が混じっているねえ」


 匠が私の声に反応し、振り返る。

 ……ところでさっきから私を止めてる人!

 あんた何もしないくせに邪魔してるだけだからどいて!


「な、何だよ! こっちは……親切で止めてるんだ!」

「良いからどいて!」

「……」


 邪魔な町人はどかした方が良いかな?

 ……見物人なんて邪魔な存在でしかないし。


「そうですね。こういう愉快犯は見物人が増えれば増えるほどつけあがりますし」

「私が愉快犯だって?」


 ジルの言った「愉快犯」という言葉に反応する匠。


「黙りたまえ! シャラーップ! 私は愉快犯などではないんだよ! これはれっきとしたリフォーム工事だ。この家の家主も、私の夢の中に出てきて私にこの家をリフォームしてくださいと泣いてすがってきているんだよ! 分かるかね!? 君ぃ!」

「……この人は頭が逝ってしまっているんでしょうか?」


 ジルの発言に私も同意したくなるよ……。


「何を言い出すんだね!? 私は至って正常だ! この国の建物を私の手でリフォームしてあげたいとおもうくらいには正常だ!」

「それを狂ってるって言うんだよ! 正常な人はこんなこと考えないから!」

「ええい! なぜわからんのだ!? 私のリフォームの素晴らしさが! 辺り一面溶岩の海になったゆとりある空間で過ごしてみたくないか!? 温かみのある溶岩の家で暮らしてみたくないのか!? ふかふかの溶岩ベッドで眠ってみたくないのか!?」

「溶岩ベッドがふかふかとか考える前に溶岩の上に寝転んだら焼け死んじゃうよね~……」


 マディスが呆れたように言う。

 ……触っただけでも危ないのに、溶岩の上で寝れるわけないじゃない……。

 そんな物作っても、誰も住めないよ。


「何を言う! それもまた精神の修業ではないか! 何なら、君が体感してみるがいい! ちょうどこれからこの家をリフォームするのだからな!」


 話にならんとばかりに匠が家の方に向き直り、溶岩を家にぶちまけた。

 家はあっという間に溶岩に飲み込まれて崩れていく。

 ……ちょっと!? 何てことしてるの!?

 家主が悲鳴あげてるよ!?


「この家の住人が夢の中で私にリフォームをお願いしているのだ! やらないわけにはいかん!」

「……こうなったら力ずくで止めるしかないな」

「初めからそうするしかないのでは?」


 グリーダーが力ずくで止めることを提案してきた。

 話自体通じないしね……。そうした方がよかった?


「フリーズブレイバー!」

「うおおっ! わ、私を攻撃するのか!? この世紀のリフォーム職人を!? って、マグマが攻撃で冷えて固まってしまっている!?」


 グリーダーが即座に攻撃を仕掛ける。

 突き進む氷刃は匠にこそ当たらなかったけど、匠がばらまいたマグマはいっきに冷却されて固まってしまった。


「な、なんという事を……! やむを得ん! わが親友を用いてくれるわ!」


 マグマが通用しないと判断したのか、匠が自分の懐から頭が爆弾になっている魔物を大量に召喚した。

 ……町中に魔物を呼び出すなんて!


「行くのだ! ウォークボンバー! あいつらを近づけるでないぞ!? その間に私がこの家をリフォームするのだからな!」

「魔物まで使うなんて……」


 匠が指示を出すと、ウォークボンバーと呼ばれた無数の魔物が私達と匠の間に立ちふさがり、次々に爆発した。

 ……ウォークボンバーが爆発した跡地をよく見ると、地面が吹き飛んで崖になっている。

 不味いよ! ……これじゃあいつに近づけなくなっちゃう!


「……作戦を変えた方が良いですかね? ただ匠を狙ってもこれでは手が出しにくいですし……」

「でも、このままじゃここの家が……!」

「もう遅い! 世紀のリフォームの全貌、存分にその目に焼き付けるがいいわ!」


 匠の声が周囲に響いた、直後。

 家が一軒丸ごと崩れ落ち、残骸がマグマの海に沈んでいった。

 後に残ったのは柱や一部の家具だけがかろうじて残ったマグマの海だった。


「どうだ! これが私のリフォームだ!」

「どこがリフォームなの!? 辺り一面マグマの海になってるじゃない!」


 仮にこれが家だとしても、こんな危険な家誰も住めないよ!


「何を言う! こんな素晴らしい家他にはないぞ! 明るく、温かみのある一軒家じゃないか!」

「マグマが煮えたぎり、地獄の熱気で焼け死ぬことができる一軒家ですよね?」


 ジルが言ってるけど、本当にその通りだよ!

 見渡す限り辺り一面マグマの海で、足の踏み場もほとんどないんだもん!


「焼け死ぬなどありえん! 何なら、私が入ってみせよう!」


 あくまで「マグマで焼け死ぬことはない」と言いたいのか、匠は自ら煮えたぎるマグマの中に足を踏み入れた。

 ……そして案の定足からマグマの中に沈んで行ってしまった。

 しばらく待っても戻ってくる気配はない。


「だから言ったのに……」


 マグマに住めるわけないじゃない……。


「そんな事より、あの匠がどこから来るのか確かめた方がよくないですか?」

「……町の外に隠れての待ち伏せか?」


 ジルとグリーダーが匠を待ち伏せる方向で話をしている。

 ……さっき確かにマグマに沈んだから心配いらないはずなんだけど……。


「そういう事です」


 ……でも、匠は確かああやって死んでもまたやってくるんだったよね?

 本当に、一体どういう仕掛けなんだろ……。

 町の外に移動して様子を見ようか。









「……匠です!」

「一体どうやって生き延びたの!?」


 バグリャの町の外に出て匠除けの家の陰に隠れていたら、さっきマグマの中に自ら足を踏み入れたはずの匠がまたバグリャを目指してやって来ていた。


「全く、どうして誰も私の家の素晴らしさが理解できないのだ。私の素晴らしいリフォームによって住みよい家が出来たではないか」

「……どこから出てきたんでしょうね」

「奴が歩いてきた方向に向かってみるか?」


 ……そうだね。匠がどこから出てきたのか気になるし。

 見つからないように注意して行こう。





「む? ……気のせいか? 私の家を目指す輩の気配を感じたが……まあいい。次はこの家をリフォームするとしようか!」


 ……気づかれなかったみたいだね。

 早く匠がどこから出てくるのか調べないと!




ーーーー




「……おかしいですね。辺り一帯調べてみましたけど、それらしい家などどこにも見つかりませんよ?」

「そうだね~。普通ならこの辺のどこかに家があると思うんだけど……」


 匠とすれ違ってから匠が歩いてきた方に向かって行き、匠の家を探してみた。

 だけど、匠の家らしきものはいつまでたっても見つからない。

 ……地上にそれらしい建物が見当たらないって事は……地面の中? そんなはずないか。


「地面の中……ですか? そんなはずないですよ。仮にそうだとしたら、どこかに穴が開いていないと入れませんし」

「だけど、それしか思いつかないよね? この辺、どこを見渡しても家の影すらないよ?」


 マディスが言うとおり、匠が歩いてきた方をどれだけ見渡しても家の影すら見当たらない。

 ……やっぱり、地面の中にあるのかな……?


「……此処の地面だけ草が生えていないがどういう事だ?」

「グリーダーさん、そんな物調べてる余裕があったら匠の家を探しましょうよ……」


 グリーダーの声がした方を見ると、確かにグリーダーが立っている場所だけ草が生えていないけど……。

 まあ、グリーダーが今立っている場所「だけ」草が生えてないのは不自然だよね……。


「試しに掘り返してみる? まあ、何もないだろうけど」

「そうだな。少し掘り返してみるか」


 マディスとグリーダーが草の無い地面を掘り返し始めたけど……。

 ……そんなことやってる場合なのかな……。


「私たちはこの辺をもう一回歩いています?」

「……そうだね。この辺りにあるだろうからもう一度歩こうかな」


 ……この辺りのどこかにあるはずなんだけど、どこにあるんだろ?




ーーーー




「さっきの小娘! こんな場所で何をしているのだね!?」

「……! 匠……!」


 あの後、辺りを一人で歩き回ってたら戻ってきた匠と出くわした。

 ……どうしよう……。


「さっきのリフォームでよく分かったろう!? 私のリフォームは素晴らしい物だとね!」

「それは絶対にないから! そもそも、あんなマグマの海に住めないよ!」


 …………というか、あの家の家主何処にやったの!?


「ああ……夢で懇願してきたあの男かい? 彼は今頃マグマのベッドで眠っているだろう……」

「マグマに突き落としたの!?」

「何を言う! あの男が自ら私がまき散らしたマグマに当たりに来たんだよ! 結果、あの男はマグマの中に沈んでいったが、別にどうと言う事はない!」

「住人殺してる時点で大問題だよね!?」


 住む人殺してどうするの!?


「何を言うんだ! 私がそうであるように、彼だってその内復活する! 復活すると決まっているんだよ!」

「復活しないから! というか、マグマに沈んだはずなのにどうやって蘇ったの!?」


 あの時確かにマグマに沈んだよね!?


「私は死んでなどいないのだ! マグマに落ちて死のうと、私は何度でも蘇る! 家で再び再生するのだ!」

「……復活するなんて……一体どんなからくりが……!」


 ギルドの人が、匠は何度倒しても出てくるって言ってたけど……本当に復活してたの!?


「ふふふ……教えるわけにはいかんな! 家の場所もろとも、教えるわけにはいかんのだよ!」

「……その入れ物ってマグマの……!? 何をするつもり!?」

「こうするのだよ!」


 話は終わりだとばかりにマグマが入った入れ物を取り出した匠。

 直後、匠はいきなり自分の身体に頭から水をかけるようにマグマをぶっかけ、跡形も残さずマグマの中に消えてしまった。


「……また、消えた!? というか、マグマを自分にかけて消えるって……!」


 そう言う体質なのか、それとも……。

 ……そんなことより、早くジルやグリーダーの所に戻らないと!

スランプか、最近あんまり執筆が進んでません。

遅れて本当に申し訳ない。

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