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強奪勇者物語  作者: ルスト
ヒローズ
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バグリャに向かいましょう

「貴方たち……悪魔を倒せたのね!」

「はい。……何とか、倒すことが出来ました」


 ルーチェです。魔族を倒した後丸一日休息に使っちゃってバグリャに出発できなかったけど、今日はグリーダーも私も問題なく戦えそうなので出発する事にしました。

 ……と言う事で、出発前にヒローズギルドに魔族討伐の成功を報告しています。


「ああ……本当に貴方たちは頼りになるわね。この町の難易度5の依頼、片付けたのはほとんど貴方たちよ」

「恐縮です」


 まあ、それでもまだ実力不足は明らかだから、これから行く先でもまた同じことを繰り返して修業旅を続けることになるだろうけど。


「これが……今回の報酬よ」

「……報酬の180000ゴールド、確かに受け取りました」


 これでもうここには用は無いね。

 さ、バグリャに向かおう。




ーーーー




 依頼の報酬を受け取った私たちはヒローズを出て、バグリャに向かう事に。

 東門を出てから魔物が出ない街道を歩いているだけだから随分楽な道のりだけど……。


「バグリャってヒローズの東にあるんだよね、ジル?」

「ええ。ですから、私たちが今出たヒローズの東門を抜けて真っ直ぐ街道を進めば到着するはずですよ」

「歩いてどれくらいの時間がかかる?」

「そうですね……こちらの道ならそれほど時間はかからないはずですよ。変な障害が無ければ、ですが」


 変な障害?


「ねえ、ジル。変な障害って」

「何だね! この建築センスの欠片も無いような建物は! この私が建てなおしてやらねばならないな!」


 変な障害って何? って聞こうとしたら、突然街道の外れから大きな声が聞こえてきた。

 ……建築センス? 一体何の事?


「……今は無視しましょう。関わっても良い事が無いでしょうし、依頼以外で関わるとロクなことになりません」

「え? ……うん……。だけど……何か嫌な感じが……」


 街道の外れで大きな声を出していたのは頭部が爆弾になっている何かを大量に引き連れ、背中に「株式会社  空間の匠」と書かれた大きな旗を背負った眼鏡の男性だった。

 その男性の足元にはどうやって収納したのか、ものすごい熱を発している赤い液状の物体……多分マグマ? を入れたバケツが置いてあります。


「でも、依頼を請け負っていない状態で倒したら駄目なんだよ?」

「マディス。……分かってるよ。分かってるけど……。どう見てもアレは……」


 絶対厄介ごとを巻き起こしていそうな人だよ……。

 だって、建てなおすって言葉のわりに建築資材を一つも持っていないもん……。

 かわりにあんな物騒な物ばっかり持ち運んでいるわけだし……。


「人は見かけで判断してはいけないのは俺でよく分かっているだろう?」

「それはそうだよ。でも……アレを放っておいたら不味いような気がするのは私だけなのかな……?」


 結局特に関わることはせずに私たちは素通りすることにしたけど、やっぱり不安が拭えないよ……。






「……街道のど真ん中に誰か立ってるよ?」

「男女二人組でしょうか?」


 さっきの怪しい人を素通りしてからしばらく街道を歩いていると、街道のど真ん中で指輪を渡している男の人と女の人の姿が。

 ……何で街道のど真ん中なんだろ……。


「他人に見せつけたいのかな?」

「くだらんな」


 ……確かに街道のど真ん中でやるのはくだらないけど……って、なにこれ!? 殺気!?


「皆さん! 街道の端に!」


 ジルが叫んだと同時に私たちは街道の端に。

 直後、何かが凄い勢いで私たちの間を通りすぎ、カップルの所に向かって行った。


「あれって……何? ……人!?」


 カップルの所に走って行ったのはグリーダーと同じくらい筋骨隆々とした赤い髪の男性だった。

 男性はカップルに接近すると突然斧を振り上げ、声を上げた。


「リア充爆殺! 爆殺のエクスプロード!」


 私たちの所にもはっきりと聞こえるそれは魔術の、それも、炎系の上級魔術のエクスプロード発動の叫び。

 その直後、赤い閃光が地面に落ち、カップルの周囲の地面が赤く染まる。……まさか!


「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!?」

「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


 カップルは突然現れた大男が放ったエクスプロードの大爆発に飲み込まれてしまった。

 そのまま文字通り空の上まで吹っ飛ばされてしまい、エクスプロードの威力でどこかへと飛んで行ってしまった。


「ふん……邪悪で醜悪なるリア充よ……。貴様らの蛮行、この俺が見逃すわけにはいかんなあ」


 何やってるのあの人!? カップルが文字通りお星さまになっちゃったよ!?


「凄い人ですね。私たちにできないことを平然とやってのけましたよ。そこに痺れますし憧れます」

「そんなこと言ってる場合!? 今明らかにエクスプロードで爆殺されたよねあのカップル!」


 街道の真ん中でいちゃついてたのは事実だけど、だからって爆殺するなんて!


「今日もまた一組、邪悪なるリア充を抹殺することができた。リア充抹殺のためにも、俺は前に進むだけよ……! ぬ!? またしても邪悪なるリア充か!? 生かして帰さん!」


 何か斧を構えてポーズをとってたと思ったらまた凄い勢いで走って行っちゃったけど……。

 何なのアレ!? バグリャには変な人しか住んでないの!?


「これがバグリャの住人か。狂ったモブしか居ないようだな」

「バグリャの人が変わってるって聞いたけど、本当に変わってたよね~」

「これはもうそう言う次元じゃないよね……?」


 最初に見かけた爆弾に囲まれてた男の人も、さっき私たちの目の前でカップルを爆殺した男の人も、明らかにおかしいよね!?


「……まあ、あんなのがうろついていたら、間違いなく討伐依頼に入っているでしょうね」

「あんなのが野放しになってる事の方が問題だよ……」


 初っ端からとんでもない物を見ることになっちゃったよ……。


「まあ、旅の醍醐味ですよね。ここの名物でしょう」

「今のはどう考えてもそう言う次元じゃないよ!」


 というか、さっきの男の人にカップルが爆殺される光景がバグリャの名物なんて嫌だよ!


「まあ、討伐依頼を受けるためにも、バグリャに向かおうよ」

「……そうだね」


 ……いきなりジルやグリーダー以上にぶっ飛んだ人が出てくるなんて聞いてないけど。

 …………えっと、バグリャの町はどっちだっけ?


「街道をずっと真っ直ぐ行けば付きますよ」

「分かった。行こう」


 ……まあ、あんな人ばっかりじゃないよね……。

 うん、あれはただの討伐対象なんだよ。






ーーーー






「大変だ! 空間の匠がまた家を爆破して、辺り一面溶岩の海に変えてしまいやがった!」

「またイナテモの犠牲になった奴が出たらしい! あれほど家の中以外でいちゃつくのは厳禁だって言われてるたのに!」

「こっちもやばい! バグッタから今度は自分で動き回るプリンが襲撃してきやがった! 勇者様に頼らなければ!」


 バグリャの西門に無事にたどり着いて町に入った直後、聞こえてきたのは物騒な会話だった。

 ……空間の匠? それってまさか街道で見かけた……。


「気にしてはいけませんよ。私達はまだ未関係の人間です」

「それよりも、この町の騒がしさは何だ? 祭りでもやってるのか?」

「……本当だよね」


 言われてみると、グリーダーが呟いたようにバグリャの町は何故か騒がしい感じがする。

 ……祭りをやってるようには見えないけど……。


「こんなときだってのに、勇者様は何やってるんだ!」

「何でも、王宮にてヒローズの勇者たちの歓迎パーティをやっているらしい。……まあ、俺たちには関係ない話だがな」

「この国の人間でその歓迎パーティに参加できるのは女だけ……何考えてやがるんだ勇者様は……」


 ……当事者以外は女の人しか参加できないパーティって……。

 まあ、ヒローズ勇者の歓迎会だっていうなら変なことは無さそうだけど。

 …………でもなんで女の人だけなんだろ?


「どうします? ルーチェさん」

「……王宮にはなるべく近づかない方が良いと思う。勇者に関わったらロクなことになりそうにないよ」

「賢明だな。じゃあ、町で情報でも集めるか?」

「そのつもりだよ」


 依頼についても調べたいしね。


「じゃあ、宿だけ探して一度解散します?」

「そうだね……そうしよっか」


 集合場所だけでも覚えておかないと。


「じゃあ、宿を探しに行こうか」

「うん。行こう」


 まずは宿を探すことに。

 ……初めて来た場所だから、迷わずに済めばいいけど……。






ーーーー






「じゃあ、宿も取ったし、ここに集まろう」

「ええ」

「分かった」

「了解した」


 バグリャにいくつかある宿のうち、王宮から一番遠いところ……北門の近くにある宿を探して泊まることに。

 ……王宮から離れた方が、勇者との遭遇率も下がるかな?


「ところで、ルーチェさんは何処に行くんです?」

「ギルドを探すよ。依頼の事もあるしね」

「分かりました」

「じゃあ、気を付けてね~」

「可能な限り、調べてはおく」

「そっちも迷ったり、問題起こさないようにね」

「ルーチェもね」


 まあ、よほどのことが無ければ大丈夫だと思うけど。

 ……それはともかく、ギルドに行かないとね。


「確か、町の中央の広場にあったよね……」


 宿を探す過程で町の中を歩き回った際に一度見かけた建物の事を思い出す。

 ……酒場のようにしか見えなかったけど、バグリャギルドって書いてあったような気がするし。


「……まあ、違ってたら別の場所を探すだけだしね。とりあえず行ってみようかな」


 私はそこで考えることを中断し、バグリャの中央にあるギルドを目指して歩き出した。






ーーーー






「……やっぱり酒場にしか見えないけどな……」


 バグリャの中央広場にあるバグリャギルドの建物は、やっぱり酒場か何かにしか見えないような風貌だった。

 ……まあ、中に入ってみないと始まらないよね。

 私は意を決して扉を開け、中に入る。


「……ガラガラなんだけどどういう事なのかな?」


 バグリャギルドの建物の中には人は全くと言って良いほどおらず、受付に一人金髪の女の人が座っているだけだった。

 ……話を聞いてみるしかないよね。


「すいません」

「あら。もしかして、メンバー登録かしら?」

「……メンバー登録? ここってギルドじゃないの?」


 いきなり聞いたことも無い言葉が出てきたよ。

 ……メンバー登録って何なの?


「メンバー登録って言うのはね、ここのギルドに登録しておくと、勇者様が気に入った子は直接勇者様がスカウトしてくれる制度の事よ。このバグリャの勇者様が直接スカウトしてくれるかもしれない、って事で、この国の女の子のほぼすべてが登録しているわ」

「……それは良いです。私すでにパーティ組んでる冒険者なので」

「あら。バグリャの勇者様に興味が無いの? 皆は「美しくてかっこいい勇者様にスカウトされたいです!」って言うのに」

「…………依頼を見せてもらえませんか?」


 ……私は真面目に依頼を探しに来ただけなんだけど……。


「な~んだ。また勇者様のハーレムが増えるのかと思ったけど、違うのね。はい、依頼のリスト」

「ありがとうございます」

「……あなたみたいな可愛い子、バグリャでもなかなか居ないから勇者様に求婚するために来たのかと早とちりしちゃったわ。ごめんなさいね」

「……可愛い?」


 別に意識したことも無いんだけど……。


「ええ。勇者様一行の僧侶や魔術師よりもよっぽど、ね。……ああ、戦士はただの筋肉雌ゴリラだから魅力自体ないわ。あんな雌ゴリラ、前衛でなければすぐに捨てられてるでしょうに」

「は、はあ……」


 筋肉雌ゴリラって……。


「大体、ここに来る女の子なんて皆勇者様のハーレムに入りたいがためだけにやってくるんだもの。正直、付き合ってらんないわ」

「……勇者様ってそんなに、えっと……」

「美しくてかっこいい、のかって聞きたそうね? ……あんなの、ちょっと強いだけのエロ猿よ。一度見たら分かると思うけど、若い女の子に「しか」興味も関心も無いわ。私みたいな中年には見向きもしない」

「……まともな人間じゃなさそう……」


 今の言葉で、どんな人間か大体わかったような……。


「おまけに、まともに働くと言ってもなかなか依頼を受けないから依頼はどんどん溜まりっぱなしよ。……それにね……」

「……?」

「何なのよあのエロ猿! 私も一度話しかけたことがあったけど、去り際に「垂れた胸と弛んだ尻……やっぱり中年は論外だ」とかボソッと言いやがって! 聞こえてるっつーの!」

「え? あの……?」


 ……もしかして、愚痴られてる?

 でも、その勇者……最低なのは言うまでもない、かな……?


「大体、国王も国王よ! あんな腐った小娘に擦り寄られて「王様~。○○買ってください~」とか「○○が欲しいんです……。手に入れて……くれませんか~?」とか言われて鼻の下伸ばして平気で町人の物奪っていきやがって! 幾つだと思ってるんだあの色ボケ爺! 一回死ね!」

「うわあ……」


 この国のどうしようもない実態が見えてくる気がする……。

 ヒローズの勇者教会よりも酷いよ……。

 呆れた私が口を開こうとしたとき、外に人の気配を感じた。


「あの……誰か入ってきそうですけど」

「!? ……今言ったことは他言無用よ」

「は、はい……」


 まあ、言えるわけないけど……。

 そう心の中で呟いた直後、実際に人が入ってきた。

 どんな人か見るために振り返った私の顔は思わず固まってしまった。


「勇者様~。今日は、どのクエストにします~?」


 勇者の左腕に抱き着き、ひたすら頬ずりしたり甘えまくる青い髪の僧侶は全身からとにかく相手の男に媚びまくる、という雰囲気が漂っていてとても僧侶のイメージとは似ても似つかないものだったし、


「あのブス……いつも勇者様に擦り寄りやがって……。魔物討伐の際に魔物と一緒に焼き殺してやろうか……」


 物騒な事をのたまう三角帽子を被った緑色の髪の女性は「勇者様に近づく雌豚は全員焼き殺してやる!」というオーラ全開であからさまに僧侶と横の戦士を敵視していたし、


「はっ、役に立たない雌豚が! あんたらみたいなブスより、私の方がよっぽど勇者様にふさわしいんだよ!」


 筋骨隆々とした鎧兜の茶髪の女戦士は自分の魔獣みたいに醜く歪んだ顔を棚に上げ、堂々と僧侶や魔術師を罵倒し、


「まあまあ。皆仲良くやろうよ。皆酒場で仲間にした大事な僕の仲間なんだからさ」


 彼女たちを纏める勇者も勇者で終始顔が緩みっぱなしでいかにも軽薄そうな男だった。

 ……よく見るとあの勇者や僧侶は同年代っぽいけど、あんなのが同年代なんて認めたくないよ。


「……あれがここの勇者一行? ……最悪だよ」


 思わずそう呟いた私は悪くない、はずだよ……。

僧侶の口調、予定では媚女全開! と言った感じのかなり酷い物でした。

実際に書いて「さすがにこれは不味いな」と思ったので没案は活動報告にちょこっと書くだけにしますけど。

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