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強奪勇者物語  作者: ルスト
ヒローズ
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番外編 ゲームで遊んでみましょう(後編)

ややスランプも入ってたのかなかなか筆が進まず、仕事ばかりで時間も無く。

お待たせしました。

「潰れたらどうするつもりだったの? 万が一潰れたら責任とってよ?」

「ジルのマシンをあっさり叩き壊したマディスが言えるセリフじゃないよね!?」


 町中で行われた熾烈なデスマッチはマディスが無理やり時間を無限にするチートを切ったから何とか終わらせられた。……じゃあ、次はスタジアムだったよね?


「そうですよ。デスマッチが来ると嬉しいですよね」

「どこまで戦う事に拘ってるの!? 無難にレースとかで良いじゃない!」

「ええ~。バトルが醍醐味なのになんでレースなんかしなきゃいけないの?」

「レースなどつまらん。戦いしかあるまい」


 何で皆戦いに拘るの!? これそういうゲームじゃないからね!?


「そう言うゲームだよ? 共闘と言う名目でも同士討ちで体力を削らないとボスを倒せない試合も存在するしね」

「あまりに面倒なので、人数を少なくした方が有利な試合ですよ」

「だからそんなのごく一部だよ!」


 そんな仕様があるのは本当にごく一部のスタジアムだけだよ!


「で、スタジアムの中身は何だ?」

「進めてください、ルーチェさん」

「あ、うん」


 えっと、Aって書いてるボタンを押せばよかったよね?


「バトルロイヤル……? 魔物を倒した数を競うみたいだけど……。戦場は……城?」

「つまらないですね……デスマッチじゃないんですか……」

「いや、これはこれで戦いがいがあるぞ? マディス、時間を無限にしろ」

「……そういう事だね?」


 ……何が「そういう事」なの?


「なるほど。時間が本来一分しかないのに与えるダメージが本来の十分の一まで減るせいで倒せませんでしたが、時間さえ無限にすればどうと言う事はないですね」

「それって倒すことを前提にしてない故の調整だよね!? その状態で相手を倒すことに挑戦する方がおかしいよ!?」


 わざわざプレイヤー同士の同士討ちを避けるための調整としてダメージを大幅に減らす措置を取ってるのに、それを無視してデスマッチを行うなんて!


「ですから、これが正しい遊び方なんです」

「違うよね!? 時間をわざわざ無限にしてまでデスマッチを行う時点で遊び方がおかしいから!」

「いいかルーチェ。多人数で遊ぶときは、多数派の意見が正しいことになるのだ」

「その考え自体おかしいからね!? 少数派でも正しい考えを持ってる場合だってあるから!」


 それに、大多数の人の意見に流されない事も必要だと思うよ!?


「世間の目が間違っている! 私の考えが正しいのだ! と主張するためですよね。分かります」

「違うよ!?」

「雑談も良いけど、雑談してる間に皆殺しにしちゃうよ~?」

「おのれ、卑怯者が!」

「マディスさん、生かして帰しませんよ!」

「だから何で戦う必要があるの!」


 話している間にマディスがグリーダーに不意打ちを仕掛け、それに対してジルとグリーダーが手を組んで対抗し始めた。……これはそう言うゲームじゃないんだってば!


「うわっ! 二人がかりで攻撃してくるなんて卑怯すぎないかな!?」

「何言ってるんですかマディスさん。同盟を組んではいけない、というルールはありませんよ?」

「その通りだ。まずは貴様のマシンを破壊して、それから決戦を始めるのだ」

「わざわざ手を組んでまでマディスを倒す必要があるの!?」


 二対一とか卑怯すぎない!?


「だよね。だからルーチェ、手を組もうよ」

「そもそも私そんなのしないってば!」


 デスマッチなんかやらないよ!


「という事です。諦めて私の餌食になってくださいマディスさん」

「こちらで倒してもアイテムが奪えないのは癪だがな」

「はあ……しょうがないな~。これ使うしかないか」


 マディスがそう言うなりマディスのマシンが突然鉄球を装備した……って、何でそんな物装備できるの!? それって町の中でしか出ないじゃない!


「何でもありなんだよ?」

「限度があるってば!」


 そんな物投げられたら、狭い城の中じゃ逃げ場なんて無いよね!?


「簡単には負けないからね~?」

「まさかそんなものまで持ち出してくるとは……強敵ですよ、グリーダーさん」

「ああ、何としてもマディスを倒すぞ」

「マディスより前に魔物を倒そうよ!? これってそう言うゲームだよ!?」


 何故か私が間違ってるような気がしてくるじゃない!


「実際ルーチェさんが間違ってますよね? 集団の意見が正しいですよ?」

「違うから! その考えが間違ってるからね!?」

「間違ってないですってば。皆で同じことをやれば間違っていたとしても正しいことになりますよ」

「皆で同じことをやるから間違いも正しいことになるってそれもどうなの!?」


 そんな変な考え持たないでよ!


「それはここでのデスマッチを止めるのと同じくらい不可能ですよルーチェさん」

「うわっ! ちょっと! 二人で挟んでみじん切りにするなんて反則でしょ!?」

「いや、貴様相手ではこれくらいしなければな」


 マディスのマシンを挟んで剣で滅多切りにしている二人。……でも、本当にHPの減りが悪い。マディスのマシンはすでに100回以上切り付けられているのに、マディスのマシンのHPのゲージはほとんど減ってない。町中での戦いでは普通にかなりのダメージを受けてたと思うのに……。


「これがダメージ補正ですよ、ルーチェさん。敵をよっぽど倒されたくないのか、人間も機械も与えられるダメージが大幅に減りますからね」

「これで一分しか時間が無いのだ。どれだけ困難な状態か分かるだろう?」

「確かに大変な条件だけど、そもそもそれは無駄な努力だって言って良いかな……?」


 本来よりずっと厳しい条件下でのデスマッチに挑むのは良いけど、それはそもそも遊び方が違うんだよ……。


「同じ事ばっかりしつこいですよ、ルーチェさん」

「それこそジルに同じ言葉を返したいよ!」


 というか、雑談ばかりしてないで城中に湧いている敵を倒さないと……。


「一人で寂しく頑張ってください。最高記録が出ても更新できないですけどね」

「普通なら時間制限の中で魔物の討伐数を競い合うんだよ!?」


 ……って、また同じような事ばっかり言いそうになるから考えを切り替えないと。


「死ねマディス! 俺とジルの攻撃の前に無様に沈め!」

「さっきはよくもやってくれましたね? マディスさんのマシンを火炙りにして焼き壊してあげます!」

「うわ! 卑怯だってば! 何で僕だけ一人で応戦しなきゃいけないの!?」


 壁際に追い詰められたマディスのマシンに炎攻撃の能力を搭載したジルのマシンがめり込んで文字通り火炙りにしている光景があった。グリーダーはジルが攻撃している間は静観している。


「ああ! ダメージモーションが長くてまともにマシンが動かないよ……!」

「当たり前ですよ。これがこのゲームの奥義なんですから。さて、グリーダーさん、次の攻撃はあなたに任せます」

「任せろ。マディスのバイクを徹底的に串刺しにしてやる」


 ジルのマシンが離れた直後にグリーダーのマシンがマディスのマシンに近づき、針で刺しまくっている。刺されるたびにマディスのマシンは浮き上がるけど、壁に追い詰められてしまって逃げられない。


「バイクマシンに特効の奥義の威力はどうだ? 逃げたくても逃げられんぞ?」

「跳ね回って逃げられ……ないか。……何かないのかな? このままじゃ二人にリンチされて壊されちゃうよ……!」


 デスマッチばっかりやってるんだし、自業自得だと思うんだけど……。


「そう言わないで助けてよルーチェ。お金なら払うからさ」

「何言ってるんです。マディスさんの倍の金額払うのでこっちについてくださいよ」

「何でお金!? というか、私傭兵扱いになってる!?」


 そもそも何でお金なの!? こんなゲームでお金のやりとりはしなくていいよね!?


「何言ってるんです。ゲームにはお金を賭けるのが一般的でしょう?」

「ギャンブルならともかく、こういうタイプのゲームでお金を賭ける人はさすがに居ないよ!?」

「そんなことはないよ? だって、お金を賭けると本気になる人が多いしね」

「そりゃ自分のお金を取られるかもしれないって思ったら本気になるよね!?」


 誰だって自分のお金は大事だもん!


「何言ってるんですか。世の中には自分の全財産をかけてカジノに勤しむ人間も居ますよ?」

「そんなのほんの一握りだから! 全財産をかけて負けたらその後大変なことになるよ!?」


 そういう生き方をして負けちゃった人なんてそもそも見ないけど……。


「そりゃそうですよルーチェさん。全財産と言いながら実際には一部の金しか賭けないですから」

「それは無いと思うよ……」


 一部のお金を残してる時点でそれは「全財産」じゃないもん……。


「まあその話は良いです。3ゴールド出すので味方してくださいよルーチェさん」

「ねえルーチェ。こっちについてよ。今なら4ゴールド出すからさ」

「お金で味方してくれって言う割に出す額が安すぎない!? そんな少額じゃ何も買えないよ!」

「当たり前じゃないですか。金欠の私の全財産の0、00001%ですよ!?」

「30万ゴールドも持っててどこが金欠なの!?」


 十分お金持ちじゃない!


「何言ってるんですかルーチェさん! 強奪勇者の財産と比べたら明らかに少ないですよ!?」

「そりゃ難易度5のクエストばっかり受けてるもん! 報酬だってかなりの額になってて当然じゃない!」


 命がけで戦ってるわけだし、当然報酬も多いよ!


「俺が100ゴールド出すから俺に味方しろ、ルーチェ」

「なっ! 100ゴールドなんて卑怯ですよグリーダーさん!」

「10ゴールドだって出すのが惜しいのに……!」

「10ゴールドすら出し惜しみするって、どこまでケチなの!?」


 私たちが普段受けている依頼の報酬なら5000ゴールドぐらいなら平然と出せると思うけど!?


「何言ってるんですか! こんなことで5000ゴールドなんて大金を使うなんて勿体ないじゃないですか! ルーチェさん!」

「それはそうだけど……」


 というか、こんなことにお金を出す方がそもそもアレなんだけど……。


「……このままじゃ確実にやられちゃうね。……こうなったら……」

「あ、あれ? 何で操作が効かないんですか? まさか……!」


 ジルのマシンが突然んグリーダーのマシンに突っ込んでいき、同士討ちを始めた。……って、何で勝手に動いてるの!? まさかマディス……。


「案の定マディスさんのマシンと入れ替わってますね……。まさか操作まで奪われるとは思わなかったですよ、マディスさん」

「操作まで奪ってるの!? いくらチートが使えるって言ってもちょっとは自重しようよ!」

「このままじゃやられちゃうし、そんなことは言ってられないよ」

「良いんですか? このままマディスさんのマシンを自害させれば私の勝ちですよ」

「……そうはさせないよ。ただ囲みから逃げられればそれでいいからね。こっちには町限定のはずのアイテムが山ほどあるって事、忘れないでね?」


 チートを解除したのか、ジルのマシンとグリーダーのマシンの同士討ちは収まった。……というか、これってそう言うゲームじゃないってば……。


「城中に鉄球をばらまいて二人とも潰してあげるよ」

「何言ってるんです? マディスさんのマシンはもうお仕舞にしますよ?」


 ジルがそう言いながら何かのスイッチを押すと、城全体が紫色の煙に覆われてしまった。……って、なんだかどんどん体力が減ってきているような……。


「必殺兵器の毒ガスです。HPがどれだけあろうともう関係ないですよ?」

「ちょっと! 敵が出てくるたびに消えちゃって全く倒せないじゃない!」


 ジルが撒いた毒ガスはどうやらモンスターにも作用しているようで、出てきてもあっという間にモンスターが死んでしまって倒すことすらできない。


「マディスさんを倒すためなら、私は手段を選びません!」

「うう……卑怯な。だったらこのまま鉄球で潰れてくれない?」


 マディスのマシンが急に上空に飛び上がったと思ったら上空から巨大な鉄球を手当たり次第にばらまき始めた。……巻き添え食らったらどうするつもりなの!?


「知らないよ。考慮すらしないし」

「自分のマシンが壊れかけたときに文句言ってきたのにあんまりだよ!」

「直接撃ち落とすまでです。覚悟してくださいマディスさん!」


 ジルのマシンもマディスの後を追うように飛び上がり、空中に居るマディスのマシンに剣で斬りかかる。……何で空中戦に発展してるの!?


「俺も援護するぞ、ジル」

「だから二対一とか卑怯だよ!」


 普通なら正論だけど、上空から無差別に鉄球を投げまくったり町中で落とし穴やメテオを使いまくる人が言えるセリフじゃないよ!


「凍って落ちろ!」

「危な……って、勢いが……!」


 グリーダーのマシンが空中で周囲にまき散らした吹雪こそ急反転で避けたけど、マディスのバイクはその直後に勢いを無くし、空中をゆっくりと降りる無防備な状態になってしまった。


「これでもう終了ですね。最後はあなたが愛用する鉄球で止めを刺してあげます」


 空中でほぼ止まってしまったマディスのマシンにジルのマシンが鉄球を投げつけ、とうとうマディスのマシンは壊れてしまった。


「ああ……リタイアか……」

「やりました。さて、グリーダーさん、覚悟してください」

「良いだろ……って、何!?」


 マディスのマシンが壊れた直後にジルはグリーダーのマシンの真上に鉄球を投げつけており、毒ガスや同士討ちでかなり弱っていたグリーダーのマシンは鉄球の下敷きになって壊れてしまった。


「ふふふ……これで残すはルーチェさん一人ですね」

「ここまでしなくても良いじゃない! 毒ガスなんか反則だよ!」


 新しい魔物が出た直後にやられちゃってゲームにならないし!


「これはデスマッチです。覚悟してくださいルーチェさん!」

「……新しい敵! やっと倒せた!」


 目の前にたまたま毒ガスで死んでいない敵が居たので能力を奪えた。……あれ? ジル、何か言った?


「全体攻撃の衝撃波……行け!」

「……え」


 ようやく敵を倒せ「バン!」……え?


「せっかくマディスさんとグリーダーさんを血祭りに上げたと言うのに……ここに来て毒ガスが仇になりましたね……」

「え!? ごめんジル! 悪気は……!」


 というか、まさかそこまでジルのマシンが弱ってたなんて……。それに……。


「試合終わっちゃったよ!」

「ルーチェさん以外全員リタイアしたんですから当然ですよ」

「お疲れ様。離れて見てただけだったけど、凄まじい戦いだったね。本来のゲームの遊び方を逸脱していたよ」


 試合が終わったのを確認したのか、依頼人が話しかけてきた。


「普通に遊んでいても面白くないですからね」

「えっと……これで依頼は終了ですか?」

「そうだね。君たちのおかげでテストプレイも完了したし……これで問題なく出荷できるな。それじゃ、報酬は君たちの拠点に届けておくよ」

「はい。それじゃ、私達はこれで失礼します」


 依頼の目的だったテストプレイは終わったみたいだし、私達も帰ろう。




ーーーー




「しかし、今日やってみて思いましたが、第三者との戦いもしてみたいですよね」

「第三者?」

「ええ。私たち四人でやるのではなく、他の人と戦ってみるのも面白いと思ったんですよ」

「……でも、あのゲームは第三者とやるような物じゃないよね……?」


 少なくとも、人間同士で熾烈な戦いを繰り広げるわけだし。


「ジルの言葉に賛成かな。次は赤の他人と戦ってみたいよね」

「と言っても、そんなに頻繁にこんな依頼来ないと思うよ?」

「来たらの話だろ?」


 まあ、そうだろうけど。


「ルーチェさん。次にこういった依頼が来たときは是非とも第三者を私とグリーダーさんとマディスさんでフルボッコにしたいんですけど」

「そんなことやったら思いっきりリアルファイトに発展しそうなんだけど!?」


 というか、ゲームの多人数プレイでの一人狙いはやっちゃ駄目だよ!


「相手が投げるとゲームの進行に悪影響が出るからですよね、分かります」

「そんな意味で言ったんじゃないってば! 一人狙いはマナー違反だからだよ!」

次のゲーム番外編は一応PV100000を目途にしてます。次のゲーム番外編は第三者と遊んでも違和感が無い物をやります。エアライドじゃインターネット対戦が無いからねえ……。


ちなみに、元ネタのバトルロイヤルのダメージ軽減能力は本気で反則級です。レースやデスマッチなら大体のマシンを確定一発、もしくは数発で破壊できる超威力の至近距離プラズマLV3を十発近く当てないと最低ランクのマシンも壊せません。そして時間はたったの一分。

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