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強奪勇者物語  作者: ルスト
テラスト
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調査を完了しましょう

「本当にごめんなさい!」

「全く……死んでいるのにもう一度死ぬかと思いました……」


 まさか重りにくっついていたなんて……。重りを階段まで持っていかないと気付かなかったよ……。


「まあ、自業自得ですけどね」

「言い返せないのが何とも言えないですよ……」

「勇者の活動を妨害した者の報いだ」

「それが使命なんですよ。私にとっては何よりも大事な……」


 でも、何ですっきりした気分になってるんだろ……。


「そりゃあ、爆弾で爆死させられかけましたからね」

「リベンジしたと言う事だろ?」

「グリーダーが私を投げなかったらそんな事にはならなかったよね!?」


 そもそもそこがおかしいよ!


「おかしくないですよね? 仕掛けを解除するときに長いフックを天井に撃ちこんだり、人間大砲で目的地まで飛ぶのはお約束ですし」

「ああ、間違っていないな。ただ、ここには大砲が無いからな」

「そりゃこんな場所に大砲は無いよね!?」


 そもそも大砲って、屋外での戦闘のために使うんだよね!?


「何を言ってるんだ。羽の生えた帽子と組み合わせてより遠くへ飛ぶためだろ」

「そうですよ。大砲を武器に使うなど、すでに時代遅れです。今の時代の大砲は、自由自在に目的地まで移動するために存在するアイテムです」

「武器に使うのは時代遅れなの!? そんなことないよ!」


 大砲に魔力を込めた玉を詰め込んで発射すれば目的地でその魔法を発動させて大きな被害を与える事だって出来るのに!


「未だにそんな古臭い事をしているんですか?」

「それならば、まだ魔法を使える人間を人間大砲で飛ばした方が手っ取り早いな」

「それもまたおかしくないかな!?」


 人間大砲なんて、失敗したら大変なことになっちゃうよ!


「大丈夫です。大抵は頭から落ちるので落下してもダメージを受けることはありません」

「ああ、途中で壁にぶつからない限り背中や足から落ちるわけではないからな」

「むしろ頭から落ちた方が危険じゃないかな!?」


 背中や足から落ちるのも危険だけど、頭から落ちたらもっと危険だと思うよ!?


「大丈夫ですよ。頭から落ちても自動的にお腹から地面に滑るように落ちるのでダメージは受けません」

「普通に落ちればライフが半分になるくらいのダメージを受けるが、頭から落ちればダメージ0で凌げるしな」

「色々おかしいよその大砲!」


 頭と背中や足のどっちから落ちるのが危険なのかは言うまでもないと思うのに……。


「顔を焼かれたはずなのに何故か尻を焼かれる世界だからな」

「打ちこんでいない杭の周りを亀の甲羅に乗って回るとお金が飛び出してくる世界ですしね」

「世界そのものがおかしくない!? 何でお金が杭から飛び出してくるの!?」


 杭からお金が飛び出してくるなんてありえないよ!


「何を言うんですか。杭だってお金を貯めておきたいでしょう」

「そもそも杭は生き物じゃないと思うよ!」

「何を言う。杭だって生きているだろう?」

「さすがに生きてはいないと思うよ!」


 だって杭はすでに切り倒された木だし……。


「地面に埋めてしまっても外に出て戻ってくるとまた生えているんですよ? 成長していると考えるのが自然でしょう?」

「それこそ掃除のおばちゃんとか言う人に戻されてるような気がするよ! 地面から引っこ抜いて元の長さに埋めなおすだけだもん!」

「何寝ぼけたこと言っているんですか。そんな人どこ探しても居ないですよ、ルーチェさん」

「ジルが最初にこの人の事を言ったと思うんだけど!?」


 首を吹き飛ばして倒した敵を放置して部屋の外に出ると敵を撤去してくれる存在が居るって……。


「何を言っているんでしょうかね? この人は?」

「そんな恐ろしい存在、居るはずないだろうが」

「二人が居るって言ったんだよ!?」


 ちょっと前に言った事なのに何で忘れてるの!?


「それは並行世界の私でしょう? この私は何も関係ありません」

「話が進む度に並行世界の別人と入れ替わっているのだ。分かるはずがないだろう」

「何そのありえない設定!?」


 話が進む度に並行世界の別人と入れ替わっているなんてそれこそありえないんだけど!?


「ありえないことほど現実になる、と言う事ですルーチェさん。話と話の間で楽屋に入って新しい私と入れ替わっているんですよ」

「ありえないから! そもそも、楽屋なんてどこにあるの!?」

「そこの魔王の手先が知っていますよ」

「え!? 私は何も知らな……」

「楽屋の場所と一緒にお宝の隠し場所も教えてもらいますよ。ルーチェさん」

「楽屋の場所はどうでもよくないかな!?」


 ここに来て仕掛けを破壊したのはそんな目的じゃなかったし!


ーーーー


「つまり、罠に使われているアイテムの方がレアだと言うんですか? 何寝ぼけたこと言っているんですか? そんなはずが……」

「ピコピコハンマーは絵の具で色を塗っただけでハンマー本体はクリスタル製ですし、罠の殺傷力を上げるために罠の方が良い素材を使ってますよ? タライも、実はプラチナで出来ていますし」

「何で罠にそんな豪華な素材つぎ込んでるの!? 宝箱の中身が1ゴールドだったりするのに!」


 仕掛け人をジルが問い詰めて宝の事を聞きだしてるけど……何で罠の方にばっかり無駄に豪華な素材使ってるの!? クリスタル製ピコピコハンマーなんてそれもうピコピコハンマーじゃないよ!


「何言ってるんですか。罠なんて誰も回収しないでしょう? そこを突くんです」

「確かに……と言いたいところですが、一応持ってきましたよ」


 老化液体は無理だけど、タライもピコピコハンマーも重りも回収してたよね……。


「馬鹿な!? とはいえ、びっくり箱のパンチグローブや剣山はさすがに取らなかったようですね」

「ああ、ルーチェさんが余計な事をするから……」

「私別に悪くないよね!?」


 ジルがいきなり仕掛けの方に私を投げたせいだよ! というか、両方ジルが取って行かなかっただけじゃない!


「人のせいにするんですか? 教育がなっていないですねルーチェさん」

「人のせいにするって言葉は間違いなくジルに当てはまると思うよ! 何があっても私のせいにされてる気がするもん!」


 絶対ジルの方が当てはまるよ!


「責任転嫁ですよ。酷いですね」

「全くだな」

「責任転嫁でもなんでもないから!」

「まあ、こんな人は置いておいて、今から残った宝箱を回収しに……」

「残念ですけど、すでに消えてしまっていますよ? 何せ、ネタバレさせられた後に盗まれると困るので」

「何ですって!? 私のお宝が!」


 自業自得と言うかなんというか……。


「まあ、そういう事なので諦めてください。どのみち手に入れる機会はありませんから」

「くうっ! 何と言う事ですか! リセットさえできれば! 時間を巻き戻せるアイテムさえあれば!」

「まさかアイテムコンプリートがこんなところで失敗するとは……!」

「そもそもあんなの要らないよね!?」


 パンチグローブなんか何に使うの!?


「何を言うんですか! パンチグローブに花火を括り付けて敵目がけて飛ばすんですよ!」

「お前は本当に物の価値が分かっていないな。的確にターゲット目がけて飛んでいくパンチグローブは存在1つで戦局をひっくり返せるほどの威力を誇る戦略兵器としての需要もあるのだぞ?」

「いくらなんでも言いすぎだよ!」


 パンチグローブにそんな価値無いから!


「まあ、諦めてこれでも持って帰ってください」


 青白い人がいきなり箱を渡してきた。……あれ? この箱見覚えがあるような……。


「良いですか? こういう遺跡に踏み込む際は、宝箱は絶対に逃してはいけません。たとえゴミやガラクタであったとしても、自分たちが取らなければ誰かが奪っていってしまうのですからね。その箱は、この事をあなた方が忘れないための戒めです」


 そう言って青白い人は消えてしまった。


「最後に重要な話を聞きましたよね、グリーダーさん」

「ああ。俺たちが取らないでいると別の誰かが持っていく、これは重要なセリフだったな」

「何でこう最後まで墓荒らしを肯定するような話ばっかり……」


 勇者の心得って言っても盗賊の心得だし……。


「良いじゃないですか。まあ、もう取れないのであれば仕方ありません。帰りましょう、ルーチェさん」

「調査は!?」

「もう行ける範囲はすべて回っただろう。宝の気配も無い」

「同じく」


 行ける範囲は全部回ったってホントかな……。でも、もうこれ以上行く場所が無いなら帰ってもいいかな? 確かにギルドカードの地図も埋まってるみたいだし。


「さあ、帰りましょう。早くテラストの残りのクエストを受けてしまいますよ」

「そうだ。早くしなければシナリオの逆鱗に触れてやられる」

「シナリオって誰!?」


 そんな人居ないよね!?


「何言ってるんですか。この世界の設定と展開を管理している偉大なお方ですよ。万が一彼の逆鱗に触れれば、凄まじいまでのご都合主義で消し炭にされてしまうんです」

「魔王が回復魔法で簡単に沈むのも、主人公の側が何故かご都合主義で助かることが多いのも、全てシナリオが管理しているせいだからな」

「本当ならシナリオと呼び捨てにすることもおこがましいんですよ。シナリオ様です」

「何その滅茶苦茶な人!? 文字通り反則の塊じゃない!」


 と言うか、設定と展開を管理しているってどういう事なの!?


「例えばですよ、ある地点で同行者Bが加入するとします。この時、主人公Aが同行者Bをスルーして先に進もうとした場合、何らかの形でご都合主義が働いて必ず同行者Bを加入させる方向に話が進みます」

「加入させずに進もうとすると「この先は一人で進ませるわけにはいきません!」とか言われて止められたり、どこかで必ず通行止めの被害に遭う」

「そこまでして加入させようとする意味不明な努力にも驚かされるけど、そもそも仲間なら加入させようよ!」


 加入させた方が役に立つし得すると思うよ!


「何言ってるんですかルーチェさん。一人旅に仲間など要らないんですよ?」

「ああ。だから熟練の冒険者はディスク抜きを行って仲間フラグをすっ飛ばして先に進む」

「一人旅とか誰がするの!?」


 そんな危険な旅、普通好き好んでやらないよ!


「一人旅をしないなど、それこそありえないことです。頼れるのは己の力だけ。極限の状態に追い込まれた勇者にこそ、真の勇者としての力は身に付きます」

「引きこもって出てこない勇者が社会復帰するための有効な手段だ。勇者を一人野に放り出す親が多いのはこのためだな」

「いきなり危険な旅に放り込むの!? 社会復帰以前に最悪死んじゃうよ!?」


 だって外には魔物が……!


「実際にそういう事をした親にそんな質問をしたときの答えは「何、気にすることはない」でしたよ」

「要するに、この試練を越えられない奴にはもはや子供としての価値は無い。空気になって消えるがいい、と言う事だな」

「親も酷いよ! ニートになって過ごしている子供も子供だけど、親も酷いよね!?」


 空気になって消えるがいいなんてあんまりだよ!


「そんなことはありませんよ。空気になれば、存在が認知されなくなりますからね」

「それに、伝説の空気剣は存在がことごとく薄くなった者にその力を貸すと言うしな」

「ええ、空気剣「樹法・蹴憫」はこうでもしないと手に入りませんよ」

「何なのその妙な名前の剣!?」


 そもそもなんて読めばいいの!? 読めないし、意味がまったく分からないよ!


「読めないんですか? 学が足りていないですよルーチェさん」

「そもそもこれは学が足りているとかいないって言う問題じゃないよ! 解読不能の暗号にしか見えないよ!」

「情けない奴め。貴様には「伝説神書軍愚煮屡」も読めないのか」

「明らかに痛々しい名前だとは分かるけど、そんな滅茶苦茶な言語読めないよ!」


 こんなの読める人どこの世界を探しても居ないよ!


「私達、いえ、勇者なら恐らく皆普通に読めますよ。まあ、学の足りないルーチェさんには無理でしょうけど」

「これはもう学の問題じゃないよ!」


 だってこの世界の言語じゃないもん!


「はあ、肝心なことに使えん奴だな」

「ええ。ルーチェさんはやっぱり常識が足りていないです」

「こんな滅茶苦茶な言語を理解するのが当たり前だと思ってる方がむしろおかしいんだけどね!」

「まあ、付き合うのも馬鹿らしくなってきたので、華得李魔書宇かえりましょう、グリーダーさん」

「わざわざ帰りましょうを滅茶苦茶な言い方にしなくても良いよね!?」

「何だルーチェ? 貴様読めているのに読めないふりでもしていたのか? 呆れたな……」

「ええ、全くですよ。読めないふりでもすれば人気が取れるとでも勘違いしたんでしょうか……」

「そんな事してないってば! 本当に読めないよこんなの!」


 帰りましょうは話の流れで分かったけど、最初に出てきた物や二つ目は本当に読めないよ!


「まあ、こんなに学の足りないルーチェさんは放っておいて帰りましょう」

「さて、行くか。依頼自体はこれで達成しただろう」

「だから平然と置いてかないでよ! 待ってってば!」

秘技!ディスク抜き!しかし、仲間の加入場所をすっ飛ばして進んでも何故かシナリオフラグが立たない!結局全員加入させないと進まないんです。ある物除き。


「仲間はちゃんと加えようよ!?」


意味不明な漢字文。昔やってました。ただの当て字ですけど。二つ目はともかく、最初の「樹法・蹴憫」を正しく解読する猛者は居るのか?まあ、前は英語に、後ろはそのままでちゃんと読めますけど。学の足りないルーチェには読めません。


「だから学の問題じゃないよ!こんなの読める人居ないってば!」

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