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強奪勇者物語  作者: ルスト
テラスト
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遺跡の奥を目指しましょう

 天井の宝箱まで強引に開けたグリーダーと合流したので、そのまま遺跡の奥に進みます。……遺跡調査がここまで大変だったなんて思わなかったよ……。


「ルーチェさんは何もしていないじゃないですか」

「タライの生贄になったり、ジルに投げられたり突き飛ばされて罠にかかったりしてるんだけど!?」

「気のせいでしょう」

「気のせいじゃないから!」


 どう考えても私も大変な目に遭ってるよね!?


「その程度で大変だと言うのか。ルーチェ、貴様はどれだけ甘ったれているんだ」

「ですよね。グリーダーさんの言うとおりです」

「甘ったれてないから!」


 その程度ってレベルじゃないよこれ! 飛ばされる床と壁だらけの部屋にも放り込まれたし!


「そんなの生贄なんですから当たり前じゃないですか」

「だから何で私が生贄なの!?」


 私が生贄にならないといけない時点でおかしいよ!


「おかしくないですよ? もしトラップに引っかかっても、あなたなら確実に生き残りますし」

「いくらなんでもその理屈はおかしいからね!? そもそも限度があるから!」

「おかしくないな。お前ほどの変異体ならば4トンの重りに上から潰されても生き残っているだろう」

「そんなのに潰されたら死んじゃうからね! どう考えても死んじゃうから!」


 4トンって……。私の何倍重いのそれ……。


「良いですか? 勇者の中には、4トンの重りを頭上から食らっても平然としている方などいくらでもいるんですよ?」

「そうだ。未だに4トンの重りの重量に耐えられない俺たちの方が異常なだけだからな」

「その常識はどこから来てるの!? むしろ耐える方がおかしいよね!?」


 むしろそんな物を食らって耐えている方がおかしいからね!?


「何を言うんだ。たかが4トンの重りに耐えられない方が未熟だろう?」

「ですよね。グリーダーさん」

「ああ。俺たちの修業が足らんだけだ。ジル」

「どんな修行をしたら4トンの重りに押しつぶされないようになるの!?」


 そんな修行そもそも無いよね!?


「何を言う。2トンはある重りを首からぶら下げて数年間過ごせばいずれ耐えられるようになるぞ」

「耐えられるようになる前に死ぬから! そんなことしたら首や肩の骨が重さに耐えられずに砕けちゃうから!」


 何でいきなり2トンもある重りを首にぶら下げるの!? というか、そんな重すぎる物体首からぶら下げちゃ駄目だから!


「……しかし、この辺にはそんな重りないですよね……」

「ああ。1トンクラスすら落ちていないだろうな」

「そんなの落ちてたらそもそも大問題だから!?」


 というか、何で重りがこんな遺跡の中に落ちてると考えてるの!?


「至ってシンプルな罠じゃないですか、ルーチェさん」

「そんな罠ありえないから! 何で重りを上から落とすような罠を作る必要があるの!? そんなの作るくらいなら鉄球を落とすよね!?」

「全く、つまらん人間だな、貴様は」

「何で!? 今のでどうしてそうなるの!?」

「夢と常識がありませんよ、ルーチェさん」

「夢はともかく、何で常識が無いなんて言われなきゃならないの!?」


 少なくとも二人よりは私の方が常識はあると思うよ!?


「決まっている。勇者とは愚民どもの妄想の世界の住人なのだ。だから、常に何かしらの夢を持たなければならんのだ。故に、夢を持たない貴様は常識が無いと言う事だ」

「勇者だから夢を持たないといけないなんてそんなルール初耳なんだけど!? というか、愚民呼ばわりは止めてあげようよ!?」


 いくら何もしない町中の人でも、愚民呼ばわりは酷いと思うよ!?


「そんなことはありませんよルーチェさん。町民たちは勇者と言う名の妄想に縋りついて魔王の討伐を一方的に押し付ける世界の害悪なんですから愚民呼ばわりされて当然です。いきなり家の中に上がり込まれて家の中にあるアイテムを強奪されても何も言ってはいけない立場なんですよ」

「町民が勇者に魔王討伐を押し付ける事を世界の害悪呼ばわりしたら駄目だよ! それが害悪だったら、勇者を召喚していきなり魔王討伐を押し付ける王様はどうなるの!?」

「決まっている。並行世界規模の害悪だ。故に、早急に始末するべきだな」

「もっとスケールが大きいよ! 並行世界規模ってどこまで疫病神扱いしてるの!?」


 勇者を召喚した王族は見たことも無い並行世界の人にまで害悪認識されるの!?


「当然ですよ。並行世界の住人を拉致してくるわけですから」

「そうだ。本来なら、俺は並行世界で強奪と殺人に精を出す毎日だった物を……」

「グリーダーはむしろ召喚された方が元居た世界のためだよね!? 元の世界でやってたことが勇者じゃなくて犯罪者のやることだもん!」


 強奪と殺人って……。当然泥棒や空き巣もしてるんだろうし……。


「当たり前だ。貴様さえ居なければこの世界でも同じことが出来た物を」

「ですよね。ルーチェさんが邪魔をするせいで満足に強盗も出来ないですし」

「普通強盗や空き巣はしたら駄目だからね!? むしろやろうとする方がおかしいんだよ!?」


 どう考えても常識が欠けてるのはこの二人の方だよ!


「勇者としての常識なら完璧ですよね、グリーダーさん?」

「当たり前だ。現状俺より勇者にふさわしい勇者など居ない」

「その常識が盗賊の常識じゃ無かったら……」


 だって、シーフ・ジャスティスってどう聞いても勇者じゃなくて盗賊だもん……。


「何を言うんですか。素晴らしい勇者じゃないですか。「強奪は己が身を支える大事な収入源。おろそかにすることなかれ」「宝箱とは奪うためにある物だ」「愚民どもの民家は宝物庫と思え」など、名言をたくさん残していますよ?」

「それ名言じゃなくて迷言だよね!? というか愚民どもの民家は宝物庫と思えって明らかに盗賊の思考じゃない!」

「そんなことは無い。普通の勇者の思考だろ」

「ええ。私もその辺の民家は宝物庫のような物としてみていますしね」

「絶対違うよね!? というか、その勇者が盗賊なんだから勇者の思考になってるんだよ!?」


 だって勇者と盗賊が同じ様な状態になってるし……。


「勇者と盗賊は違いますよルーチェさん。盗賊は、村を襲撃して一瞬にして廃墟に変える破壊の達人です」

「それどんな盗賊!? 村を一瞬で廃墟に変えるってどんな暴れ方をしたらそうなるの!?」


 そんな恐ろしい盗賊まで居るの……?


「ああ。村の中の財宝には目もくれず、村壊しのみを生きがいとする根っからの狂人だ」

「別名は村壊しの達人ですしね。恐ろしい存在です。財宝には目もくれずに村を破壊するんですから」

「それもうただの破壊者だよね……」


 盗むどころか財宝には目もくれずに村を破壊するって……。


「雑談してたら目的地に着いたみたいだな」

「階段? 上に行けるのかな?」


 グリーダーと合流してから遺跡の奥に進んだ私たちの前には大きな上り階段が。……この遺跡、やっぱりかなり広いのかな? 地下にあるから詳しい大きさは分からないけど。


「お宝がこういうレア物ですから、かなり広い遺跡でないとすぐに奪われてしまうでしょうね」

「まあ、一本道の場合はすぐに見つけられるだろうな」

「広かったら罠も作れるし、グリーダーやジルが取ったような物を隠すためにも便利だろうしね」


 まあ、おかげで調べるのは一苦労なんだけど。


「さて、二階には何があるでしょうか? 行ってみます?」

「行くしかないよ。そのためにこの遺跡に来たんだしね」


 階段を上って二階に向かおう。





ーーーー






「……あれ? いつまで経っても上に着かないような気がする」


 上りはじめてから数分経つけど、未だに上の階につかない。というか、先が見えない。どうなってるんだろ?


「おかしいですね。階段の終わりはともかく、確かに上っているのに何故かつきません」

「……後ろを見ながら登るか?」


 私達もグリーダーと同じように後ろを見ながら階段を上ってみることに。……上っているはずなのに、何故か入口から全く離れないような……。


「まさか、この階段も罠ですか!?」

「ええ!? これも戻されるタイプの仕掛けだったの!?」

「どういう事だ?」


 グリーダーはあの場に居なかったよね。説明しておこう。


「えっと、遺跡の中に廊下が伸縮自在に動く場所があって、気づかないうちに入口に戻されてたの。その時はジルが走り抜けて無理矢理突破したんだけど、その時とここの状況がよく似てるの」

「つまり、この階段も勝手に動いて戻されていると言う事か?」

「参りましたね。レビテーションなんて高度な支援魔法は私達には使えませんよ」


 浮遊できないとさすがに渡れないよね……。


「ぬう……。背中幅跳び連発でも出来れば……」

「……グリーダー、何それ?」


 そもそも背中幅跳びって何なの……。


「背中幅跳びとはな、前に飛ぶはずの幅跳びを階段を背にした状態で後ろに飛ぶことにより、後ろに進む推進力を無限に得ることができる悪魔の技だ」

「なるほど……そんな技があればこの戻される階段でも一気に抜けてしまえますね」


 明らかに原理がおかしくないかな!? ……そんな事よりも、まじめに突破する方法を考えないと。


「ただ、使えるのは伝説の赤い帽子と髭の男のみ。しかもこの男は勇者の世界でも伝説の存在だ」

「確かに……姿しか聞いていないのに普通の勇者とは違う何かを感じますね」

「最強のジャンプ力、圧倒的な攻撃力を持つ割に踏み付けしかしない伝説の男でもある」


 ……どんなに上っても戻されるし、戻ろうとしたらあっさりと戻れるんだよね? ……一列に並んでも駄目かな?


「グリーダーさん、その人には他にどんな伝説があるのか聞いても良いですか?」

「そうだな。毎回のように拉致される桃姫を亀の手から助けだしたり、とにかく跳ね回ることだな」

「跳ね回るんですか?」

「ああ。跳ね回るな。なんでも、空中に隠された宝箱を見つけるため……らしい」

「空中に隠された宝箱……ですか」

「そうだ。何故か空中に見えない宝箱が設置されているらしく、その男はそれを求めて世界を駆け回っていると言う話だ」

「誰が好き好んで見えない宝箱を空中に配置するんでしょうねえ。見えないんですから地面に埋めても分からないでしょうに」


 空を飛べない、階段も上れない……うーん……。


「ところで、ルーチェさんは先ほどから何を悩んでいるんでしょうね?」

「大方、この先にある宝を奪い取るための算段だろう。まあ、この仕掛けを突破する方法は思いついたから安心しろ」

「本当ですか? グリーダーさん」

「ああ、ルーチェを掴んで投げ飛ばして階段の上まで放り込む」

「なるほど、名案ですね。すぐにやりましょう」


 どうすれば……って、え? 浮いてる?


「さて、投げるか」

「お願いします、グリーダーさん」

「え? ちょっと!?」

「ルーチェ! お前の犠牲は無駄にはしない! さあ、行け!」

「え!? 何が起きて……!?」


 気が付いたときにはすでに私の身体は空中に浮いていて、そのまま階段の上を通って……って、また私が投げられたの!?


「完璧ですね。このままいけば届くかもしれませんよ」

「ああ、後は階段の上から仕掛けを壊してくれれば」

「何で私ばっかりこういう役割なの!?」


 でも、このまま行ったら階段を抜けられるかも……え? 階段の上から何か飛んできた? 丸くて、紐の先に火がついて……って、これ爆弾!?


「あれ? ルーチェさんの方に何か飛んできてません?」

「罠がまだあったのか?」

「でしょうね。まあ、私たちが行ったら大変なことになってましたよね」

「だろうな。ルーチェが生贄になるからこそ、安全なルートを探せるんだ」

「捨てようとした爆弾に別の爆弾の火が引火して……」


 直後、飛んできた爆弾がものすごい爆音を響かせながら次々に爆発していく光景が一瞬だけ見え、そのまま私は階段の入り口の方に吹き飛ばされていきました。


「ルーチェさん、失敗しましたね」

「まあ、あんなトラップがさらに仕掛けてあることが分かっただけでも上出来だろう」

「あれは想定外ですよね。まさか階段の上から爆弾が飛んでくるとは……」


 想定外どころじゃないよ……。死ぬかと思った……。


「まあ、ルーチェさんですからこんなトラップを受けて吹き飛ばされても余裕で生きてますよね。大丈夫です、分かってますよ」

「こっちは全然大丈夫じゃないから! 腕や足は痛いし髪だって焼けたんだよ!?」


 ジルが特効薬をかけてくれるけど、本当に大丈夫じゃないよ!


「などと言いつつ、こうして特効薬を使ってみれば全然大丈夫そうですよね。さすがです。体力の半分を回復する自己再生の特技でも使えるんですか?」

「使えないから! その特効薬の効果がおかしすぎるだけだからね!?」


 何で爆発で焼けただれた髪や腕が一瞬で元に戻るの!? 普通ありえないよね!?


「さすが特効薬だな。生贄に使った奴の体と心もすぐに元通りだ」

「少なくとも心の方は元に戻らないからね!? 体は薬で治せても、心は治せないんだよ!?」

 ルーチェ、あえなく撃墜。まあ、同じ方法は通用しないと言う事です。もし通用してしまったら、どの仕掛けもルーチェを投げるだけで突破できてしまいます。


「何で私ばっかりこんな目に遭うの!?」

「爆弾を食らっても無事だったからでしょう?」

「だからそれはジルがすぐに使ってくれた特効薬のおかげだよ!?」


 持ち上げて投げることで投擲アイテムにもなるヒロイン、便利ですよね。天津、手槍、手斧の代わりに間接攻撃への反撃にも使えます。


「私の意思はどうなるの!? というか、ヒロインを投擲アイテムや直間両用武器扱いしないでよ!?」

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