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強奪勇者物語  作者: ルスト
テラスト
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遺跡の通路を調べましょう

 テラストを出発してから東に歩くこと10分。私たちは遺跡に到着しました。遺跡と言っても地上部分には小さな洞窟しかなくて、その奥に遺跡があるみたいですけど。


「遺跡といえば仕掛けですよね?」


 ジルが不意にそう言ってきた。確かに、遺跡には仕掛けがあることが多いみたいだけど……。


「そんな危険な物は無いと思うよ」


 だって、そんな危険な仕掛けがあるなら魔物もいるだろうし。


「魔物が仕掛けで全滅した、と言う事は考えられないか?」

「ありえますね。強酸性の毒の溜まった場所に落ちてみるも無残なことになっていそうです」


 二人とも怖いこと言わないでよ……。でも、どのみちこの奥にある遺跡を踏破しないといけないから、やることは変わらないんだけどね。


「墓荒らしに行くんですよね?」

「違うから!?」


 私たちはあくまで調べに行くだけだよ!? 決して墓荒らし目的じゃないからね!?


「ああ、単なる調査目的だな」

「じゃあグリーダーが持ってるその針金2本は一体何に使うつもりなの!?」


 グリーダーが針金を力任せに捻じ曲げて何かしてるけど……盗掘は絶対駄目だからね!?


「何を言うんですか。この針金は護身用ですよ」

「ジルはナイフ背負ってるから要らないよね!?」


 というか、護身用に持つなら普通は小型のナイフを使うよね!?何で針金を使う必要があるの!?


「決まっている。針金で武器を作るのが一番手っ取り早いからだ」

「どう考えてもナイフを買った方が早いよね!?」


 針金の棒なんかじゃすぐに曲がっちゃうし、ナイフなら普通に使えるし、どう考えてもおかしいから!


「まあ、一々気にしたら負けです」

「気にするよね!?」


 この二人は……。


「それにしても、洞窟は随分深く掘られてますよね」

「あちこちに窪みがあるが、一体なんだ?」


 ジルが言った通り、この洞窟、随分深い場所まで続いてるし、あちこちにグリーダーが言っているような窪み(人一人入れるような大きさ)があるけど、どうしてだろ?


「きっと、この辺りで何か出てくるのでは?」

「な、何も出ないよね……」


 こんな場所で出て来たら逃げる場所が……。


「所で、さっきから変な音が聞こえないか?」

「変な音?」


 耳を澄ますと、何かが転がるような音が聞こえる。……どこから?


「後ろですね……」


 ジルが言うとおり、後ろから何かが転がってくるような音が聞こえる。……まさか……。


「念のために窪みに入りますか?」

「そうした方が良いかな……?」


 もし魔物だったら厄介だし、そうでなくても……。


「けひゃひゃひゃひゃ」


 そんな声が聞こえたから後ろを見ると、巨大な顔がこちらの方に坂を転がり落ちてきた。……って、何で顔がこんなところを転がってるの!?


「……逃げよう!」

「何ですかあれは! 不気味な笑みを浮かべた巨大な顔が転がり落ちてきてますよ!?」


 ジルが言うとおり、不気味な笑みを浮かべた巨大な顔だけの物体が私たちの方に転がり落ちてきています。一体いつこんなものが出てきたの!?


「ちっ! 一気に坂を駆け下りるしかないな!」

「急いでください! ルーチェさん!」


 あんな化け物が転がり落ちてくるなんて聞いてないよ!




ーーーー




「どこまで深いんですかここは! まだ先が見えませんよ!」

「とにかく脇道まで逃げるしかないよ! 何でさっきの場所まであった窪みが無いの!?」


 私たちはあれからずっと巨大な顔に追いかけられてます。……どうしてこうなったの!? 先の方にも窪みがあるかと思ったけど全くないし、後ろから転がってくる顔は……


「生首が一匹……生首が二匹……生首が三匹……」


 何か知らないけど物騒な歌歌いながら転がってくるし! 生首なんか数えても絶対眠れないよ! と言うか間違いなく悪夢を見るから! それに生首は匹じゃないよね!?


「あっち側に窪みが!」

「本当! あそこに逃げ込もう!」

「了解した!」


 ジルが見つけた窪みに逃げ込み、巨大な顔を凌ぎます。これで一安心……


「能面能面能面能面能面能面能面能面能面能面能面能面能面能面能面能面能面……」


 さっきまで私達を追いかけて来ていた顔が通り過ぎると、その後ろから不気味な笑みを浮かべた空飛ぶお面の大群が奇声をあげながら先ほどの顔を追いかけるように流れて行った。……何なのここ。ものすごく怖いよ……。


「さすがに、一筋縄ではいきませんね」

「こんなの想定外だよ!」


 いきなり巨大な生首が転がってきたり、無数の不気味なお面が飛んでいくなんて!


「楽しい探索になりそうですね」

「むしろ恐ろしい探索になりそうだからね!?」


 私たちが逃げ込んだ先に通路があるけど、さっきの仕掛けだけで終わるとは思えないし……。


「進むぞ。地図を埋める」

「……行くしかないよね」


 覚悟を決めて、進むしかないか。




ーーーー




「なにこれ、行き止まり?」


 私たちが巨大な顔から逃げ込んだ通路の先には壁があるだけで、先には進めませんでした。……無駄足だった?


「いえ、こういう行き止まりは隠し通路のフラグですよ。この辺りを爆弾で爆破すれば通路ができるはずです」

「出来ないよ!? それどころか最悪私たちが天井に潰されちゃうからね!?」


 こんなところで爆弾なんか使ったら、きっと大変なことになるよ……。


「まあ、爆弾を使わないなら先ほどの顔の転がって行った場所を下って行くことになるな」

「ですね」

「そっちしかないよ、多分……」


 この辺りは行き止まりだし、あっちの先にはまだ通路があったし……。


「能面が戻ってきて鉢合わせしたら楽しいですね」

「嫌なこと言わないでよ!」


 あんな恐ろしい物と鉢合わせなんて嫌だよ……。


「さあ、とっとと戻るぞ」


 行き止まりに来ちゃったから戻らないと……。




ーーーー




「あの顔は戻ってきて……ないね。早く下に向かおう」

「何処に遺跡本体はあるんでしょうか?」


 分からないよ……。さっきの顔の山が通り抜けた場所だと思うんだけど……。


「まあ、ルーチェさんならあの顔に押しつぶされても生きているでしょうね」

「普通に死んじゃうからね!?」


 ジル、いきなり何言い出すの!?


「いえ、万が一あの顔が追いかけてきたときは真っ先に囮になってもらおうかと」

「何で!?」


 少なくとも私よりグリーダーやジルの方が生き残る可能性が高いと思うんだけど!?


「何を言うんだ。俺みたいな華奢な人間に囮など無理だ」

「どう考えても筋肉質なグリーダーが華奢なはずないよね!?」


 私よりずっと身長も体の幅も大きいじゃない! というか、そんな大きな斧を振り回したりする時点で華奢とは言わないよ!


「私みたいなか弱い少女に囮は無理ですよ」

「そんな巨大なテーブルナイフを振り回したりなんでも食べる人が言えないと思うんだけど!?」


 少なくとも、ジルは私より色々な意味でタフだと思うよ!


「まあ、いざとなったら捨て石にしますから安心してください」

「安心できないから!」


 捨て石にされるなんて絶対嫌だよ!


「まあ、その話も置いておいていいでしょう」

「だから置いておくべき話題じゃないよこれは!」


 今度は私の命がかかってるし!


「復活くらい簡単に出来るだろうが……」

「ですよねえ……死人だって水をぶっかければ立ち上がります」

「死人は復活しないから!それはただ戦闘不能になってるだけだから!」


 戦闘不能と死亡は違うんだよ!?


「違いましたっけ?」

「同じだな」

「だから違うんだってば!?」


 勇者にとっては同じかもしれないけど、私たちにとっては違うんだよ!?


「勇者じゃないですか」

「それとこれとは別だから!」


 勇者なんて言ってもこの世界じゃ魔王討伐人みたいなものだもん!


「そうだな。さて、魔王討伐のために依頼を続けるか」

「うん」


 何か更に疲れそうだよ……。まあ、あの顔はモンスターじゃなさそうだし、大丈夫……かな?




ーーーー




「……」

「先ほど転がっていた顔が穴に落ちて通路になっていますね」

「それは見たらわかるけど、何でこんなことになってるの!?」


 あれから顔が転がって行った方に進んでみたら、私たちの後ろから転がってきた顔が巨大な穴に入って動かなくなっています。……でもこれの上を通るとか嫌だよ! ジル、まさか本気でこれの上を通るの!?


「当たり前じゃないですか」

「当然だな」

「グリーダーまで!?」


 顔の上を通るなんて……。


「他に通路もありませんし」

「越えるしかないだろうな」

「うう……」


 いくら巨大でどう考えても人じゃないとはいえ、顔を踏んづけていくのはなんだか嫌だよ……。


「行きますよ」

「ぐずぐずするな」

「って、強引に進まないでよ!」


 ジルもグリーダーも何で躊躇しないのかな……。顔を踏んづけていくなんて……祟られるかも……。


「ルーチェさんは子供ですか? そんなこと起きるわけないでしょう」

「呪いの装備でもなければ祟られるなどありえんな」

「何で二人ともそこまで平然としてるの!? 顔を踏んづけるのは駄目だって言われてない!?」


 こんなことしたら祟られて……。祟られなくても道徳的に……。


「いいですか。道徳なんて勇者にはありません。勇者には己の好きな事だけしても良いというルールしかないんですよ。嫌いな事や道徳は無視しても良いんです」

「それもうただの自己中だよ!?」

「物が欲しければ他者の家を襲って物を持ち出し、魔物を気がすむまで殺戮して勇者に選ばれたストレスを解消するんですから、そう言われても仕方ありませんね」

「自己中通り越して犯罪者になってるよ!?」


 ……勇者の現実って……。


「素晴らしいでしょう?」

「全然素晴らしくないよね!? 完全に犯罪者だよね!?」


 そりゃそんなことしてたら王様に支援物資貰えないよ! そんな物渡すよりもその辺で集めて来いって言われるのも無理ないよね!?


「勇者と犯罪者は紙一重ですよ」

「だから全然違うって……」


 ジルも本気でそう思ってるし……。どうして勇者の方が悪者になってるんだろ……。


「勇者だって反抗期になるだろ」

「何で反抗期!? いい年した大人だっているよね!? グリーダーとかさ!?」


 何で中年男性まで反抗期に入るの!?


「自分一人に押し付けられた。と言う事だ」

「……」


 押し付けられたって事なら私も入っているような……。


「まあ、ルーチェさんはきっと死ぬまで勇者の道には入らないんでしょうね」

「何で自分から犯罪に手を染める必要があるの!?」


 私は絶対やらないよ!


「まあ、私たちがあなたの代わりにやるので安心してください」

「それが一番安心できないよ! ジルもグリーダーも滅茶苦茶な事するでしょ!」


 どう考えても面倒なことになりそうだよ!


「大丈夫だ。役人に追われても俺は負けん!」

「私だって逃げ切る自信はありますよ」

「そう言う問題じゃないから! そもそも犯罪に手を出したら駄目だよ!」


 何で正義のはずの勇者が自ら犯罪行為に手を染めるの!


「勇者が正義と誰が決めましたっけ?グリーダーさん」

「世界だな」

「つまり……私は別に正義だと決めていませんよね」

「俺もだ」

「なので私たちは悪の勇者になりますよ」

「屁理屈じゃない! というか悪の勇者って何!?」


 悪の勇者なんてそもそも存在しないよね!?


「ルーチェさん、今存在しないからそれになれないと言うわけではありませんよ。転職してなってしまえばいいんです」

「それに、ギルドのチーム名を変更すればいいしな」

「そこまでして名乗りたくないから!それならまだ今の名前の方がマシだよ!」


 少なくとも悪の勇者なんて魔王の手先みたいに思われそうだよ!


「それはともかく、もう少しでこの長い通路を抜けられますね」

「ジル、本当?」


 ようやく遺跡の中に入れるの?


「案外、入口からさっそくあちこちに先ほどのお面の軍団が飛び回っていたりしてな」

「そんな遺跡嫌だよ……」


 飛び回るお面の大群なんてそれこそ不気味すぎるよ……。


「ようやく、中に入れますね。ここが遺跡の入り口で間違いないみたいです」

「やっと着いたの……?」


 まあ、到着出来たら話は速いよ。この遺跡の中を一気に攻略してしまおう。


「そして中に入った瞬間トラップで死んでしまうと言うわけですね」

「不吉なこと言わないでよ!?」

巨大生首も当然能面です。岩だと思った?誰がそんなテンプレトラップ転がすねん!それこそありえん!


「生首転がす方がもっとありえないよね!? というか一本道だったのにどこから転がって来たの!? というかあの空飛ぶお面は一体何なの!?」


次話から遺跡の本体に突入。入り口までですでにこれですけど、本体はどこまでカオスに出来るのやら……。


「話聞いてよ!?」

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