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強奪勇者物語  作者: ルスト
プロローグ
3/168

町に寄りましょう

「うーん……あれ? 今何時だっけ!?」

「昨日貴様が就寝してから11時間と14分36秒だ」

「そんな細かい説明はしなくていいからね!?」


 ルーチェです。昨日襲撃してそのまま占領した盗賊のアジトで休みました。

 盗賊を押し込めた部屋の入り口にはタンスで蓋をしたので大丈夫です。

 ……一応出発前に盗賊を閉じ込めた場所の入り口に立てかけたタンスはどけておいた。閉じ込めっぱなしもアレだし。


「さて、それじゃここから南東にある町を目指そう」

「任せろ。町中にある物全て奪い取って来てやる」

「それはしなくていいからね! というか、しちゃ駄目!」

「ちっ……」

「なんで舌打ちするの!?」


 ……本当にこの大男、大丈夫なのかな?

 やっぱり町の入り口で待たせた方が良いような……。


「大丈夫だ。必要な物を安く手に入れる方法くらい知っている」

「……店員を脅したりしないよね?」

「多分な」

「そこは「しない」って言ってほしかったよ!」


 まあ、この大男には多分言っても無駄だろうけど。

 えっと……次の目的地は南東の……。


「貴様の持っている地図を見ると、テラピアとかいう町が南東にあるらしいな」

「そうだよ、そこで今まで集めた物を一旦売って必要な物を買っておくから」


 食べる物とか、必要最低限の道具とか。


「強力な磁力で敵の金品を強奪する効果の付いた釣竿か?」

「何処の武器屋でそんな物が売ってるの!? というか、釣竿は武器じゃないよね!?」


 武器屋にどうして釣竿が売ってるの!?

 普通は剣や槍みたいな武器を置いているよね!?


「何、釣竿だって武器になるぞ」

「普通はならないよ!?」


 一体どうすればただの釣竿を武器に使えるんだろ。

 ……武器になる釣竿なんて、想像できないよ。


「何を言う。釣竿の先に餌をくっつけて垂らせば、魚が釣れるぞ」

「釣竿だもんね!」

「竿の先に爆弾をつけて垂らせば、引っかかった間抜けが飛びついて自爆するぞ」

「爆弾に飛びつく人なんて居ないよ!?」


 ……やっぱり滅茶苦茶言ってるだけだったよ。

 でも、この人戦闘能力だけは高いんだから役に立つこともまた事実なんだよね……。


「あの鉄壁の中から、アイテムの臭いがするぜぇぇぇ! 待っていろお宝ぁぁぁ!」

「だから町中で強奪するのは駄目だって言ったでしょ!」


 ……本当に、縄で縛って木に括り付けた方が良いかなこの人!?

 ……というか、無事に町に入れるかな?




 ~テラピア入口~




「と、止まれ! 貴様何者だ!」


 さっそく町の入り口で衛兵に止められた。

 でもまあ、こんな人連れてたら当然だよね。


「俺はグリーダー。逆らう者を叩き潰し、全てのアイテムを俺の物にするため戦う勇者よ!」

「それは勇者って言わないよ!」


 というか、そもそもそんなどす黒いオーラ纏ってたら勇者と名乗っても説得力無いよ!

 それに元々怖いんだから睨んだら駄目だよ!

 今だって睨んだから衛兵が怯えてるもん!


「……さあ、通行の許可を出せ! 出さなければ……!」

「ひいい! 命だけはお助けを!」

「ちょっと! 脅しちゃ駄目だよ!」


 町に入る前にさっそく問題を起こしちゃったよ!

 うう……どうやってこの人止めよう。

 ここに入らないと買い物ができないし……。


「これが最後通告だ。大人しく町に入れるか、強引に侵入されるか、どちらか選べい!」

「何その滅茶苦茶な最後通告!」

「ひいい……町中で武器を振るわないと約束していただければ……」

「よかろう!」


 町には入れたけど、滅茶苦茶だよこの人……。

 でもまあ、無事に入れたんだからまずは必要な物を買わないと!

 とりあえずこれまでに拾った物全部売って必要な物を買おう!

 放り出されたような物だから食料の準備すらろくに出来なかったし!


「献上した物は全て世界を救うための物資になるのだ。これらを献上した奴らも喜ぶだろう」

「献上じゃなくて強奪したんだよね!? 野盗の身ぐるみ剥いで捨てたよね!?」


 あれを献上って言うなら、物語で勇者が魔物や盗賊を倒して集めた物は全部相手からの献上品になっちゃうよ!?

 どう考えても奪った物なのに!


「献上品で間違っていない。敗者が勝者に差し出すのだからな」

「献上の意味と実際にやってることが違うよね!?」


 だって、献上って差し出すって意味なのに、思いっきり強奪してるんだもん!

 戦利品って言うなら分からなくもないけど、それでもおかしいし!


「男がそういう小さなことを気にするな!」

「私女だけど!? というか気にしようよ!」


 ……本当に大丈夫なのかな?

 雑貨屋は……あっちだね。行こう。


「さあ、献上品を売りさばいて装備を充実させるのだ!」

「その前に食材と薬品買わないと駄目でしょ!」


 ……本当にこの大男、マイペースだよね。

 アイテムに対する物欲と言い、実際に強奪しちゃうその考えと言い……。


「……貴様も、旅立つ身ならこれくらいの物欲が必要だ」

「そこまでの物欲は要らないと思うよ!」


 それくらいの戦闘力はあっても困らないけどね。

 というか、戦闘面では頼もしすぎるよこの人。でも……。


「あちこちにお宝の気配が……奪って俺の物にしたいのだが……」

「駄目だってば! 強盗禁止!」

「ちっ……!」


 物語に出てくる勇者みたいなこの物騒な思考、どうにかならないかな……。

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