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強奪勇者物語  作者: ルスト
テラスト
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屋敷を物色しましょう

次話からは遺跡編。遺跡では戦闘予定が無い=シリアスが無い=?

「ジル、大丈夫だった?」

「はい、もう指揮官は討ちました。家が魔物化して暴れ出すことは恐らく無いはずです」

「いずれにしろ、完全に灰にしておいた方が良いだろうな」

「うん。万が一もあるしね」


 ジルが無事に家から戻ってきたので、そのまま燃えている二つの家を完全に焼却しておくことに。まずないかもしれないけど、生き返ってきたりしたら大変だし。


「これで内装は完全に燃え尽きたな。後には板のような何かしか残っていない」

「外壁でしょうね。ルーチェさんの魔法すら弾かれるような強度の外壁なら、家全体が燃えたとしても焼け落ちないでしょう」

「この外壁……持っていく?」


 魔法すら弾く外壁ってやっぱりすごく頑丈だと思うし。


「そうですね。私達が居た宿と反対側の家も全部破壊して外壁を回収していきましょう」

「外壁以外は完全に燃えちゃったし、外壁が特殊だったのかな?」


 この外壁に魔法に対する耐性があるのかもしれないけど、どうなんだろう? まあ、持って行っても損は無いよね。どのみち元魔物の家に住もうなんて考える人は居ないだろうし。


「魔物の気配が完全に消えましたね」

「さっきのタンスが全ての原因か」

「一体何がしたかったんだろ……」


 クローゼットがわざわざこんなことをする理由がわからないよ。


「あのタンスは、色欲の塊です。若い女性を誘い込んでは餌食にする算段だったんでしょう」

「実際にベッドが魔物化して動き出したしな」

「……」


 あのベッドは……うん、今でも身震いするよ。いつの間にか催眠ガスを吸わされて動けなくなって、そのままどこかに連れて行かれるなんて恐ろしすぎるよ……。


「これ以上の被害は出ないでしょう。というか、そもそも被害自体出ていないうちに止められてよかったじゃないですか」

「そうだね」


 ギルドに被害届が出てからじゃ手遅れになるケースも多いし。


「そう言えば、家から生えてた手足はどこに行ったのかな?」


 なんとなく気になったことを呟いた。……家から手足と顔が生えて来たのに、倒すと家の手足は跡形も無く消えちゃうんだもん。


「まあ、さっきの二軒に関しては燃え尽きたと考えるのが自然ですけどね。もしかしたら、家の天井に何かあるのかもしれません」

「天井裏か?」

「梯子を出して登ってみる?」

「そうしましょうか」


 もしかしたら天井に何か居るのかもしれないよね。一度天井も調べた方が良いよね?




ーーーー




「何も無いな……」

「無いですね……」

「天井に家が魔物化する何かがあると思ったのに……」


 宿の天井に入ってみたけど、何もない。……手足はどこから生えたんだろ……。


「もしかしたら亡霊だったのかもしれないですね」

「亡霊!? そんなはずないよね!?」

「聖水で浄化するか?」


 聖水以前に、燃やしちゃった方が良いような……。


「まあ、宿はもうボロボロですし、もう一つの家も半壊していますし、この二つは放置しても大丈夫でしょう」

「流石にこれだと動き出さないだろうな」

「……後一軒残ってるよ?」


 私が最初に調べたあの家、もしかしたらまだ中には魔物が居るかも……。だって燃やしていないし。


「そうですね。一通り物色して、お宝は奪っていきましょうか」

「一番大きな家だ。何かしら宝があると良いがな」

「これまでの家の家具を見るとどう考えても罠しかないと思うんだけど!?」


 もう魔物じゃなくなったけど、モンスターだらけだった場所にそんなお宝ないと思うよ……。


「さて、行きましょう」

「物色するぞ。無人の家だし構わないだろう」

「無人の家でも物色するのは……って、待ってよ!」


 どう考えてもその理屈はおかしいよね!? 無人の家だったら物色しても良いって理屈はおかしいよね!?




ーーーー




「見事に花瓶が並んでいますね」

「壺が多いな」

「タンスもあっちにあるよ。……調べてないけど」

「じゃあ、やりましょうか」

「ああ」

「え? ……やる? 何を?」


 やるって何を? そう思ってたら、ジルとグリーダーは唐突に花瓶を持ち上げては投げつけて破壊し始めました。……って、ええ!?


「えええええ!? ちょっと! 何してるの!?」

「見ての通り、花瓶の中にアイテムが無いのか調べているんですよ」

「まあ、花瓶にアイテムは無いだろうが、念のためだ」

「念のためで花瓶を破壊しないでよ!?」


 花瓶の中に何か入ってないのか調べるなら、普通に覗き込んで調べればいいじゃない!


「何言ってるんですか。この花瓶がモンスターだった場合、手を突っ込んだ瞬間に噛みつかれるじゃないですか」

「それにな、こうすれば家主が帰って来たとしても喜ぶぞ? 部屋の中の物が綺麗に無くなっているからな」

「綺麗になるどころかぐちゃぐちゃになるからね!? 花瓶の破片が飛び散ってるし、あちこちに花の残骸が散乱してるよ!」


 本当に何考えてるのこの二人は!? いくら無人の邸宅でも、壺や花瓶を投げて破壊するなんて滅茶苦茶だよ!


「無人の邸宅なら家主は帰ってこないですし、問題ありませんよ。仮に帰って来たとしても、勇者の正当なアイテム獲得行為だと言えば全く問題ありません」

「その通りだ!」

「これはもうそんな言葉で済まないよ!?」


 二人が花瓶を破壊しつくした頃、床は花瓶の破片と花の残骸であふれかえっていた。


「すっきりしましたね」

「ああ、綺麗に片付いた」

「何処が片付いたの!? 部屋中花瓶と花の残骸で滅茶苦茶に散らかってるけど!?」


 これをどう見たら片付いたと言えるのか教えてくれる!?


「大丈夫です。家を出たら割った花瓶は全部元に戻ります」

「戻らないって!」

「さて、あの部屋の壺も破壊するか!」

「まだ壊すの!?」


 本当に何考えてるんだろ……。


「投げて捨てて投げて捨てて……何もありませんねえ……」

「くそ! 壺の中に何一つ入っていないな……」

「確認したいなら普通は覗き込むよね!? 投げて破壊する必要どこにもないよね!?」


 仮にこれでアイテムが出て来たとしても、絶対滅茶苦茶な状態になってるよ!


「大丈夫ですよ。このツボ投げはそんな事態を引き起こさない投げ方ですから」

「どう見ても引き起こす投げ方だと思うよ!?」


 がむしゃらに投げて捨てて叩き割ってるだけだし……。


「ちっ! 空か! 仕方ない! 今度はあのタンスを物色するか」

「まだ荒らすの!?」


 多分何もないだろうし、さっさと帰ろうよ……。


「何を言うんですか。タンスの中にアイテムをしまっている人は多いですよ。奪いましょう」

「奪っていかなくても良いよね!?」

「支援物資の代わりだ」

「はい。奪われた人々が恨むのは我々では無く、勇者にまともな支援を与えなかった国ですよ」

「その理論どう考えても暴論だよ!?」


 そんな滅茶苦茶な理論通らないから!


「通りますよ? 勇者ですから」

「勇者だからな」

「勇者だからこそ善悪の区別くらいつけようよ!?」


 というか、これはどう考えても勇者がやっていい行動じゃないよね!? あちこちに割りまくった壺や花瓶の破片と花の残骸が散乱してるし……。これじゃ完全に強盗だよ!


「言っただろ? 勇者と強盗は同じだとな」

「同じじゃないよ! 勇者と強盗は絶対違うからね!?」


 勇者は世界のために動く人だもん! 強盗なんかじゃないよね!?


「勇者も強盗ですよね? 敵を倒したら追剥しますし」

「魔物や野盗からの追剥は行うな。要するに勇者も強盗と同じだな」

「違うってば!?」


 ……勇者は正義のために戦う人であって追剥じゃないよ!?


「正義って何ですか?」

「え?」

「ですから、勇者の掲げる正義って何ですか?」


 え?……勇者の掲げる正義……うーん……。


「さあ、ルーチェさんが大人しくなった今のうちにタンスの中を物色しましょう」

「何考えてるの!?」

「見ての通り、タンスの中を物色しようとしているだけですけど?」

「その通りだが?」

「しちゃ駄目!」


 もう! 何でこの二人は……。


「良いじゃないですか。善意の寄付を募るより手っ取り早いですし」

「そもそもその考えが間違ってるよね!?」

「そんなことは無い。魔物を倒して得た給金だけでは到底新しい装備に足りんからな。これは必要な事だ」

「真面目に倒し続けてお金を稼ごうよ!?」


 楽して儲けようなんて考えるから駄目なんだよ……。


「スライム100000匹を頑張って倒すより、その辺の家を物色してお金を集めた方がずっと効率的ですよ?」

「勇者に必要なのは効率だからな。努力なんかいらん」

「努力の方が普通は重要だと思うよ!?というか、例えが極端すぎるよね!?」


 普通そこは30~50体くらいを例に出すよね!?


「何を言うんですか。多くの勇者は最初の町の周辺でスライムを100000匹倒してお金を貯め、必要な装備を買い集めてから次の町に旅立つんですよ?」

「そんなことしてたら旅立つ前に魔王の侵略が終わっちゃうよ!?」


 というか、そんなことする暇があるならとっとと次の町に行こうよ!


「ほら、そう思うでしょう? だからこそ効率のいい強奪の出番ですよ」

「それもまた違う気がするよ!?」


 強奪してお金やアイテムを得るよりも、少しずつ強めの敵を狙って修行していく方が絶対良いってば!


「何を言うんですか。わざわざそんな事をしなくても、その辺の町で強奪して集めたお金やアイテムで装備を整え、旅に出た方がずっと楽ですよ?」

「楽する事を前提にしている時点で間違ってるよ!」


 苦労を乗り越えてこその勇者なのに……。


「わざわざ苦労人になる勇者は勇者ではありません。愚かな苦労人です」

「何で愚かなの!? おかしいよ!」

「強奪によって楽をする道を閉ざすこと、それ即ち縛りだな」

「強奪しないのは縛りじゃなくて常識だと思うんだけど!?」


 何で縛りになるの!? それって普通の事だよね!?


「ルーチェさんの常識も壺と一緒にさっさと投げ捨てたらどうですか?」

「壺も常識も投げ捨てるものじゃないからね!?」


 それ(特に常識)は絶対に投げ捨てたら駄目な物だよ!?


「勇者たる者、常識にとらわれない斬新な行動が生命線となる」

「斬新すぎても問題だよ!」

「テンプレな勇者は世界に必要とされていません」

「必要だから! 絶対そっちの方が必要だと思うよ!?」

「そんなことは無いな。本当に必要なのは世界中を混乱に陥れられるような勇者だ」

「それむしろ駄目な勇者だから!」


 世界中を混乱に陥れたり、悪い意味で斬新すぎる行動を取る時点でそれはもう勇者じゃないよ……。


「大丈夫ですよ。どの勇者もやっていますしね」

「そういう事だ」

「じゃあ他の勇者を反面教師にして私たちはそういう事を止めようよ!?」


 その後、散々二人が家の中を荒らしまわっても結局何も見つからなかったので私達は報告のためにテラストに戻ることにした。ここの天井の中にも何もなかったし、やっぱりあの化け物は幽体だったのかな?


「でしょうね。それはともかく、家の中が綺麗になりましたね」

「どこが!? 本棚の中の本も床に散乱してるし、花瓶やツボの破片が床に落ちてるし、むしろ滅茶苦茶なことになってるよ!?」

「障害物が無くなったじゃないですか」

「全部破壊したんだから当たり前だよね!? 後それは綺麗にしたとは言わないよ!?」

壺や樽、花瓶は投げられるけど、普通ならこれくらい凄惨なことになってもおかしくない。そこの壺や樽を投げ捨てているお方、床を汚さないように壺や樽は人を目がけて投げよう!


「もっと駄目だからね!? 絶対にやっちゃ駄目だよそれは!」


大丈夫だ。君ならできる!というか、当たっても反応ないからどんどん壺や花瓶や樽をモブキャラに当てよう!現代レブ○サックの村長を花瓶まみれにしてやれ!


「変なこと推奨しちゃ駄目!」


しかし、戦闘が真面目になってる。ラタよろしく戦闘もギャグにしたいのに(笑)


「命張ってるんだからふざけたら駄目だよ!? 後(笑)じゃないってば!」


まあ、ラタのクエストみたいに負けても死なない世界なら問題ないんですけどね。これだとモンスターに負けたらそこでゲームオーバーだし(ry

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