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強奪勇者物語  作者: ルスト
テラスト
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西の村の調査に行きましょう

 ルーチェです。えっと……今日は何をするんだっけ?確か……。


「西の村の調査依頼を受ける予定でしたよ」

「あ、そうだったよね」


 体も万全の状態になったし、順次クエストを受けて行こうか。まずは食事に行こう。




ーーーー




「あれ? 何か避けられてる?」


 食堂に入ったけど、何故か周囲の冒険者は軒並み私から距離を取ってる。あれ、どうしてこうなったんだっけ? 昨日のお爺さん? 何の事を言ってるのかわからないよ……?


「阿修羅ですしね……」

「って、ちゃっかり距離を取らないでよ!」


 何でジルまで距離を取ろうとするのかな!?


「昨日あれから帰ってきた爺さんの惨状を見たからだろうな」

「ええ……酷い有様でした……」

「ちょっとお話ししただけだってば!」


 本当だよ!? 別に攻撃を当てたわけじゃ……なんなのその目は!?


「老人があの後廃人のように成り果ててうわ言のように「魔法怖い女の子怖いごめんなさい二度としません余計なことは言いません許してくださいお願いします」と言っている姿を見れば誰もあなたに近づかなくなるのはある意味自然な流れですよ?」

「まさか俺まで威圧されるとは思わなかった」

「あ……あはは……」


 本当に何もしてないよ……? お話以外何もしてないよ……?


「まあそれはともかく、今日行く場所がどんなところか確認しないと!」

「無理矢理話をそらしましたね」

「何の事かな……?」


 べ、別に捻じ曲げたわけじゃないよね!? 今日の予定の確認はしないといけないし!


「しかし、昨日の暴虐はまさに切れる若者そのものですね」

「酷い話だ。まさに「老人虐めて……酷い奴じゃのお」だろうな」

「だからそんな酷い事していないってば!」


 ……ちょっとお話しするために魔法を使ったけど、それだけだよ? 酷い事はしてないはずだよ……?


「確信犯ですよね」

「酷い話だ」

「少なくともグリーダーに私を責める資格は無いよね!? というか絶対無いよ!?」


 だっていきなり首をへし折ってるし! 命があるだけ私の方がマシだよね!?


「まあ、ルーチェさんで遊ぶのは面白いですけど話が進まないので切り上げましょう」

「そうだな」

「ちょっと!?」


 二人だって私に十分酷い事を言っている気がするんだけど!? というか人で遊ばないでよ!


「まあ、気にしたら負けですよ。食事も済みましたし、行きましょう」

「気にするよ普通!」


 出て行こうとしたとき、昨日の一行とちょうど出くわした。


「あ……」

「ひいいいい! お許しを! お許しくだされ!」


 昨日のお爺さんは私を見るなり即座に土下座してきた。……昨日の尊大な態度はどこに行ったの!?


「ス、スロウリーさん!?」

「昨日の態度がここまで変貌したわけですから、相当酷い事をしたんでしょうね」

「だろうな」


 だから本人には何もしていないってば! 大したことはしてないよ!?


「ちょっ、スロウリー! しっかりするんだ!」

「お許しを! お許しを! もうしません! 余計なことは言いません! だからその雷や炎の弾幕を私にぶつけることだけは! それだけはやめてくだされ!」


 ……何もしていないからね? 本当だよ……?


「嘘だな」

「嘘ですね」

「本当に何もしてないよ!」


 していない……はずだよ。……多分。


「やった側は何をしたのか覚えていないですしね」

「被害者が言っていることが真実だ」

「何でそうなるの!?」


 仮にそうだとしても、私よりもっと酷い事してる人にだけは言われたくないよ!


「何を言うんだ。俺の行為は慈悲深き勇者が行う救済行為だぞ?」

「違うよね!? 立派な強盗殺人だよね!?」


 何で勇者の強奪は許されてお話は許されないんだろ。色々理不尽だよ……。


「グリーダーさんは勇者ですから」

「勇者だったら何やっても許されるの!? それもおかしいよ!?」


 というか、勇者って言うなら、一応私たち全員勇者のはずなんだけど……。


「勇者歴の長さの違いですよ」

「一年にもならないひよっこと半生を勇者で過ごした人間の違いだ」

「そういう物なのかな……」


 二人に勝手に丸め込まれてる気がするけど……。まあいいか、さっさと依頼を受けに行かないと。




ーーーー




 テラストギルドにやってきました。予定通り西の村の調査依頼を受けよう。


「西の村の調査依頼を受けたいんですけど」

「分かりました。では、説明をしますね」


 受付の説明を聞かないと。どんな場所なのかな?


「場所は、テラストの西門を出てから徒歩10分の場所です。そこの盆地に突如村が現れたそうで……」


 いくらなんでも、突如現れるって……。


「その村の中は静かその物。人は誰一人おらず、魔物すら徘徊していないと言う状態です」

「無人の廃村にしては妙ですよね。普通なら魔物が我が物顔でうろつくんですが」

「はい。なので、調査を募ったのですが、妙な噂のせいで誰一人受けないんですよ」

「噂?」


 妙な噂って何かな?


「ええ。その村が夜中に動くとか、昨日訪れたときと今日訪れたときで村の形自体が変わるとか……そんな噂が流れて以降、この依頼を受ける人間が居なくなってしまって……」

「確かに、妙な村だな」


 ……うん。一種の怪奇現象みたいだけど……。


「まあ、それも実際に調査すればいいだけだよね」

「調べれば原因もはっきりするでしょう」


 元から受けるつもりだし、現地で村を調べることにしよう。


「分かりました。では、お気をつけて」


 さて、西の村を目指そう。




ーーーー




 テラストの西に歩くこと10分、確かに村がそこにありました。でも、村の中に人が住んでいる気配がありません。……本当に無人の村なのかな?


「来ましたが、本当に静かですね」

「ああ。人の気配はおろか、魔物の気配も無い」


 私たちが到着した村は、赤い屋根の民家が立ち並ぶ至って普通の村だった。……人の気配が一切しないところを除けばだけど。


「この村、お前はどう感じる?」

「うーん……」


 村の入り口まで来たけど、どの建物も廃村ってイメージの建物じゃなくて綺麗な外観だよね。井戸もあるし、人が居たら普通の村なんだろうけど……。


「人の気配がしないのは妙ですよね。これで家の中にお宝があったらどうしましょうか」

「その場合は、逃さず頂いていくまでだな!」

「調査目的で来たのに泥棒は駄目でしょ!?」


 さっそく何を考えてるんだろ。


「しかし、本当にそんな村だったら、まさに宝の山ですよね」

「そんなことないと思うけどな……入るよ……」


 さあ、村の中を調べよう。


「思ったより広いな。外壁の中は割と広いようだな」

「本当だね……」


 正門らしき場所を通って無人の村の中に入りました。……何か、凄く不気味なんだけど……。


「大丈夫ですよ。亡霊は強酸性の水をかければどうにでもなります」

「亡霊は幽体だから効かないよね!?」

「鳥の尾羽でも一撃だ」

「そんな効果の尾羽どこにあるの!?」


 ……そんな物あるわけないじゃない……。まあ、それはおいといて……。


「とりあえず……手分けして調べる?」

「そうですね。一旦調べて、それからこの広場に戻ってきましょう」

「了解だ」


 手分けして村の中を調べることに。……さて、何か出てくるかな?




ーーーー




「ここは……一番立派な家だったけど……村長の屋敷かな?」


 私たちは手分けして村を調べることにしたので、私はとりあえず一番立派な屋敷に乗り込んでみることにしました。……鍵もかかってないし、中は普通の屋敷みたいだね。壺や花瓶が置いてある。花瓶がたくさん並んでるけど、特に変わったところは無さそうだし……。


「壺も……特に何もないよね?」


 屋敷に置いてある壺の中を覗いてみた。……やっぱり、ただの壺だよね。中には何も入っていないし。


「……あれは、ピアノ?」


 壺の中を見るのを止めて部屋の奥を見ると、何故かピアノが置いてあった。……あれはどうなんだろ?やっぱり普通のピアノかな?


「……あれ? ……重くて動かない……」


 引こうと思って中の鍵盤を出そうとしたけど、重くて動かない。……何だろ、この重たいピアノ。


「……上はどうなってるのかな?」


 屋敷の二階を見てみることに。……でも、やっぱり人が居ないくらいで至って普通なんだけどな……。


「……まあ、ここも変わった所は無いよね……」


 二階にはベッドやクローゼットがあったけど、特に変わったところは無かった。


「……二人はどうだろ。一旦合流しようかな」


 村長の屋敷を調べたけど何もなかったことを告げるため、私は二人と落ち合う予定の村の中央部に行くことにした。




ーーーー




「……そうですか。こちらも何もありませんでした」

「ジルの方も?」

「はい」


 ジルと合流したけど、ジルも何もなかったって言ってるんだ……。だったら、やっぱりここには何もないんじゃ……。そう思っていたら、グリーダーが戻ってきた。


「グリーダー、そっちは?」

「こちらも同じく、だ。何一つおかしなところはなかったな。……ただ……」

「ただ……?」

「この村のどこかに何か居るような……そんな気配がするな……それも、かなりの数だ」

「かなりの数、ですか?」


 一体この村の何処にそんなにいるんだろ?……一旦泊り込んで調べようか?


「そうした方が良いだろうな。幸い、宿があった」

「宿まで完備されてるんですか。ますます不思議な場所ですね……」

「そうだよね……絶対に、何かあるよここ……」


 調べてみないと。……危険かもしれないけど。


「まあ、一旦宿に泊まるぞ」

「うん……」


 私達は様子を見るため一旦ここの宿に泊まることに。……一体この村は何なんだろう?




ーーーー




「普通の宿だけど、ベッドが1つしかないよ……」

「ルーチェさんはベッドで寝てください」

「え、うん……」


 私だけベッドに入るなんて、なんだか申し訳ないような……。まあ、二人が良いって言うなら……。あれ?疲れてるのかな?いつもよりずっと早く意識が遠くなっていくような……。




ーーーー




「……どう思う?」

「村の事ですか?」

「何かあるとは思う。だが、調べた限り普通ではないな」

「ええ。何かありますね。壺も樽も木箱もいたって普通でした、ですけど……」

「ああ。破壊したら不味いことになりそうだな」

「……ルーチェさん、すぐに眠ってますね。頬を突いても起きそうにないです」

「いつもこうか?」

「いえ……普段はもう少し起きているはずなんですが……ルーチェさん?」

「……」

「……完全に寝入っているな」

「まあ、何かあったらすぐに動きましょう」




ーーーー




 ……あれ? 私、いつから寝てるっけ? 全然体が動かないような……でも、何故か体が動かされているような……。ベッドの端から両方持ち上げられて……?


「……! ジル!」

「はい!」


 直後、私の身体は何かに引っ張られるように引き寄せられ、ベッドから出されました。……え? 一体何が起きてるの? ……体が動かない……!?


「不味いです! 異常に睡眠が深い! 起きません!」

「ジル! お前はルーチェをなるべく早く起こせ! 俺がこれをなんとかする!」


 え!? 一体何が起きたの!? というか、どうして私の身体が動かないの!? 床に置かれたのは分かるんだけど、力が入らないし、全く意識が通る感覚が無いよ!


「どうしてベッドがいきなり動き出すんですか!? ルーチェさん、早く起きてください!」

「ベッド自体が魔物だっただと!? 今まで気配などまったくなかったが……!」


 何かが肩を叩いてくる。その感覚が近くなってきてる……? 早く起きないと!


「うっ……」

「大丈夫ですか!? ルーチェさん!」

「え……ジル……?」


 あれ……。何で私床に……。そう思って背中を起こすと、私が寝ていたと思われるベッドから謎の顔と手足が生え、立ち上がってグリーダーに襲いかかっていました。……えええええ!? 一体何が起きたの!?


「くたばれ!」


 ベッドはそのままグリーダーが斧で破壊したけど、一体何が起きたの!?


「ちっ! 階段が塞がってやがる! ジル! カーテンは!?」

「異常に重く……! 閉めたときは簡単に動いたんですが……!」

「どいて!」


 動かないならこんなカーテン破壊するだけだよ! 魔力を集中して……ファイアー!


「燃えた! 一体外はどうなってるの!」


 窓を破壊して外をサンダーで照らし出す。


「な……何ですか、これは……」

「おい……これは一体どういう事だ……」


 グリーダーやジルが珍しく驚いてる。でも、そうなるのも無理がない。……だって……。


「何で、村だった場所の家全てに手足が生えて自発的に動いてるの!? というか、私達が気づかなかっただけで、この村自体が全部魔物の集まりだったの!?」


 私たちの目に飛び込んできたのは、村の家だった物が手足と顔を生やして自発的に移動し、村の形自体を変えているところでした。……なんなの、これ……。

ギャグどころか不気味……かもです。……まあ、昼間は何もなかったベッドや家から突然顔や手足が生え、自発的に動きだすんですからね……。


どこにも居ないからなんとなく作ったベッドのモンスター、ただ宿と思ってうっかり寝てしまい、寝ている間に催眠ガスで深く眠らされ、そのままプレスされて不気味な顔に捕食されるのは十分恐怖ですよね。これぞ「にげられない!」状態です。

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