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強奪勇者物語  作者: ルスト
テラスト
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雑貨屋を回りましょう

 勇者たちの戦いを見終えた後、私たちは再び自由行動をしていた。ジルとグリーダーはあのモンスターの素材を武器に使ってもらうために鍛冶屋に行ったけど、私は何をしようかな?


「やることが無くなっちゃったよ」


 食料の方はまだ余裕がある……というか、非常食みたいな形で買ったんだから食べればよかったのに食べてないから余ってる。保存も効くから買いなおす必要も無い。薬も別に大けがしたわけじゃないから余ってる。つまり買う必要が無い。となると……。


「珍しい物が無いか、雑貨屋に行って見てみようかな……」


 まあ、特に買う物は無いけど見て回っても良いよね。そんな気持ちで雑貨屋に向かう事にしました。




ーーーー




「ここもまた妙な物が置いてるよね……」


 雑貨屋の品物を見てみたけど、やっぱり変な物がたくさん置いてるよ。名前一切不明で説明文が「波乗りが出来ます!」一言だけの謎の物体、ライバルとかプチキャプテンとか言う妙な名前の人形、貝殻で出来たバッヂや火の玉を模したバッヂ……というか、地下1階、地下2階、5階なんてそれはもう物の名前じゃなくてフロアの名称だよね!? それに、ほとんどの品物の値段が一律999999ゴールドってこれ店の品物を買わせる気が絶対無いよね!?


「あれ……これ何かな?」


 そんな突っ込みどころ満載の商品の中に変わったものを見つけました。一見市販されてる宝石をつけただけの魔法補助杖みたいだけど、その割には何かの力を感じます。……その割に値段が0ゴールドってどういう事なのかな……? この店、ほとんどの品物が一律999999ゴールドなのに、一部の商品はどんなものでも0ゴールドなんだもん。どう考えてもおかしいよこの店。


「すいません。この杖ください」

「その杖は……0ゴールドね。はい、どうぞ」


 早! というか、こんな両極端な値段設定をしていてこの店儲かるのかな……?


「儲かりますよ……ほら、あっちの棚に色々置いているでしょう? あれを買う人が多いんですよ」

「あれってほとんど999999ゴールドの商品ですよね!? 買うだけのお金持ちがこの辺に居るとは思えませんけど!?」


 しかもその異常な値段の割にほとんどがガラクタだし……。


「いえ、その奥ですよ」

「え?」


 言われてみると、さっきのガラクタの奥にまだ別の商品がある。……何だろ?金色のボールや円盤が見えるけど……。


「あれらの商品は適正な価格で売ってるので問題ありませんよ。あの金色のボールは10000ゴールド、使う事で適性のある物に太陽光線を発射できる機能を与える技能ディスク22番は5000ゴールドです」


 確かに適正価格なんだろうけど、でも誰が買うんだろあんなの……。


「まあ、人それぞれですよ」

「は、はあ……」


 まあ、他にめぼしい物は無かったし、もうここには用は無いよね。他の所に行ってみようかな?




ーーーー




「あれ? 雑貨屋がもう一つあるの?」


 さっきの超ぼったくり価格もしくはタダの両極端価格の店以外にも雑貨屋があったんだ。こっちも見てみようかな?


「こっちは……さっきの所に比べたらよっぽど普通だけど……」


 こっちの雑貨屋の品物を見たけど、さっきの雑貨屋よりよっぽど良心的な値段で売ってるよ。中身は……丸太、おたま、木の枝、物干しざお、フライパン、肩たたき……家財道具かな? でもその割に、弦が緩んだ弓や刀身が潰れて斬れないなまくら刀、甘い飲み薬なんて置いてあるし……。


「これ、何だろ? さっきの甘い飲み薬とはまた違うみたいだけど……」


 特効薬? ……エリクシールなのかな? 説明書きは飲んでよし、塗ってよしの万能薬で、致命傷すら一瞬にして治療します……か。本当なら凄い効き目だけど、使えるのかな?


「あの、この特効薬ってエリクシールの事ですか?」

「それはですね……エリクシールの廉価版です!」

「何でただの雑貨屋にそんな凄い物があるの!?」


 廉価版でもエリクシールはエリクシール。飲めば一瞬にして魔力も回復できるし、塗ればいかなる傷口も治せるみたいだろうし……。買おうかな?


「もしかして、疑ってますか? ためしにこれでも飲んでみたらどうです? 嘘を言っていないと証明してやりますよ!」


 突然店員に別の特効薬の瓶を渡され、飲むように勧められました。……渡されたこれとそこにある特効薬が同じもので、これの効果が本当なら間違いなく買いだよね。


「……」


 渡された物を一気に飲み干す。……嘘! さっきまで痛かった腕の痛みが引いていってる!? 魔力の方も回復するような感じがするし、本当に!?


「どうです? これなら本物だと断定できるでしょう? エリクシールは1本10000ゴールドと高いですが、こっちは3本セットで何とお値段たったの900ゴールド!」

「効果のわりにあまりに安すぎる気がするんだけど!?」


 普通なら一本9000ゴールド以上するでしょ!?


「いえ。何せ廉価版。しかもコストがかかる連中を介していないので安上がりなんですよ。暴利なエリクシールよりずっと経済的ですよ?」

「えっと……じゃあ……30個ください」


 一応テラピアで買っておいた薬は置いておくけど、これは少し買いだめしておいても良いかな? 魔力まで回復できるなら、使い勝手良いはずだし!


「まいどあり。じゃあ、また来てくださいね」

「はい」


 エリクシールの廉価版ってどうなんだろ……。って思ったけど、これ本物みたいだし使えるかな?


「えっと、次はどこに行こうかな?」

「ルーチェさん。ちょっといいですか?」

「あ、ジル。丁度いいや」


 雑貨屋を出たところでジルと会った。あ、そうだ。これ……。


「どうしたんですか?」

「身体の痛みが一瞬で引くから、これ、飲んでみたらどうかな?」


 特効薬の瓶をジルに渡して飲むことを勧めてみる。


「ああ……特効薬、ここでも売ってたんですね」

「知ってるの?」


 まあ、エリクシールよりずっと安いしね。


「ええ。エリクシールよりずっと安いのに同じ効果が働く完全上位互換ですしね。エリクシールの製薬会社の暴利獲得を阻止してしまった薬としてヒローズにあるエリクシール製造メーカーでは親の仇のように認識されてますよ」

「そりゃ、1つの値段が33分の1以下だからね……」


 特効薬は3個セットで900ゴールド、エリクシールは1つ10000ゴールドだもん……。普通に考えたら特効薬に人が流れて当然だよね。


「まあ、私達には関係ないですけどね。安くて同じ効果なんですから、誰がどう見てもこちらを選びます」


 そう言って特効薬を一気に飲み干すジル。


「どう?」

「間違いなく本物ですね。エリクシールもそうですけど、飲んだその場で一気に疲れが吹き飛びますし」


 すごくお得な買い物をしたのかな?


「当然じゃないですか。何も知らないとわざわざ1つ10000ゴールドもする同じ効果の薬を買うことになりますしね」


 聞くまでも無かったか。


「それで、どうしたの?」

「ええ。丁度この場で攻略できそうなクエストがあったので」

「え? それって納品の……?」


 もしかして、あの粘土を納品するクエストかな?


「それですよ。納品され次第新しい薬を作るそうなので、見に行きましょうよ」

「あ、うん」


 あの粘土から作る薬……どんなのか想像もつかないけど……。




ーーーー




「納品物の確認をしたいんですが、これで間違ってないですよね?」


 テラストギルドに入るなりそう言ってあの粘土の残骸を見せるジル。確かに、納品の依頼の納品物はあれっぽかったけど……。


「え? あれ? 持ってたんですか?」

「ええ!? 本当にこれだったの!?」


 本当にこれなんだ……。


「あの怪物は別名愛の紳士です。その身体は愛に関係する薬品の素材になりますよ?」

「そ、そうなんだ……」


 愛に関係するって言われても全然分からないけど。


「知らない方が良いですよ?」

「ええ。純粋なままでいた方が幸せだわ」

「……何か納得いかないんだけど……」


 でもまあ、これを納品すれば依頼を達成したことにはなるよね?……多分。


「はい。納品により、依頼を達成したことを確認しました。じゃあ、少し待っていてくださいね?」


 そう言って報酬だけ渡してどこかに行ってしまった受付の人。報酬は40000ゴールド+完成した薬って事らしいけど、その薬本当に大丈夫なのかな……。


「お待たせしました。薬の作成現場を見せてもらえるとのことなので、ついてきてください」

「行きましょう」

「うん」


 まあ、危険かどうかは実際に見たらわかるよね。多分。そう思って、受付の人についていくことに。


「こちらです。連れてきましたよ」

「連れて来たかい? じゃあ、入れておくれ」

「はい、どうぞお入りください」

「ひゃひゃひゃ……いやあ、ご苦労だったねえ」

「あの……この人は?」


 私たちが案内された部屋に居たのは巨大な窯に怪しげな物体を放り込んでいるお婆さんでした。お婆さんの風貌は爪が長くて皺だらけと、物語に出てくる悪い魔女のイメージそのものでした。


「ひっひっ……あたしが今回の依頼主さ。この物体を新しい薬の作成に使うつもりで発注したんだよ」

「その物体……いったいどんな薬になるんですか?」


 なんとなく聞いてみる。危険な薬品が出来そうな予感しかしないし……。


「ああ……新しい魔法だったっけ? を習得できるようになるんだよ。まあ、そこに座って待っときな」

「は、はい……」


 何でだろ。その魔法が凄く危険な物のような気がするよ……。


「安心してください。魔法自体武器と一緒ですからね」

「それもそうなのかな……」


 まあ、魔法と武器はどっちも相手の命を奪う事がある物だからね……。


「さて、始めるとするかね! こいつを入れて、火を最大に強めて、強引に蓋をして……」


 い、一体何が始まるの!? なんかすごく不安なんだけど!


「さあ、あんたに積もり積もった愛を求める怨念を反転させてやろうじゃないか! あんたが愛を求めるんじゃない! 奴らがあんたに愛を求めるのさ! その怨念を、この魔法で、相手にぶつけ、どいつもこいつも忠実な下僕にしてやりな!」


 お婆さんが押さえつけた窯の中に何か叫んでます。……って、ちょっと待って! 奴らがあんたに愛を求める……これってまさか……!


「同席することでチャームの魔法を得られましたね。これさえ効けば相手は仲間割れして自滅しますよ」

「えええ!? ちょっと待って!」


 チャームって使用禁止魔法なんだけど!? その気になったら国のトップすら操って好きに出来るって言うし、昔全世界総出で使用者を根絶したほどの魔法だよ!?


(愛を……愛を……私に向けて……向けさせて……私の意のままに……)


「ひっひっひ……これで十分だろうね。さて、窯から解き放つとするか」


 そう言ってお婆さんが窯の蓋を取った瞬間。私たちが居た部屋はピンク色の妙な煙に包まれました。


「完成だよ! ようやく古の魔法が復活した! チャームさえあれば、若い男を貢がせてポイするのも恋敵を自滅させるのも自由自在さ! あんた達、好みの男が居るなら真っ先にチャームで支配しちまいな!」


 支配するって時点で滅茶苦茶だよ!


「はい。これで家主が抵抗したりしても関係なくなり、強奪がやりやすくなりましたね。グリーダーさんに知らせれば、喜んで強奪に向かってくれるでしょうね」

「駄目だってば!?」


 もしかして、このためにあの粘土を納品したの!?


「当たり前じゃないですか。チャームさえあれば、一般人の家からの強奪も自由自在ですしね。万が一の時は足がつかないようにチャームで操った人間を使えばいいんですよ」

「そっちに使っちゃ駄目だから!」


 大変なことになっちゃった……。ジルは早速これを使って強奪に行きます! って感じのオーラを出してるし。グリーダーがこのことを知ったら本当に強奪に行きそうだよ……。


「チャームを使って強奪に勤しんでも一切問題ありませんよ?」

「十分問題だからね!?」

 ……え?ライバルやプチキャプテン?地下1階?そんな名前のアイテム私の知る限り、どんな世界にも売ってないですよ?


 それはともかく、強奪フラグ成立。やっぱり、善意で譲っていただくのが一番ですよね。善意の寄付を募りましょう。


「善意でもなんでもないよね!? 無理矢理操ってるだけだよね!?」

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