テラストを回りましょう
「う、うーん……」
あれ、ここってどこだっけ?昨日あれからどうしたっけ……。
「大丈夫ですか、ルーチェさん」
「あれ、ジル? 私達って……確か……」
「ええ。金属製のモンスターを磁力棒と雷魔法で破壊して、こっちに来て、宿を取って部屋に入るや否や倒れるように寝てしまいましたね」
そうだったっけ。テラストについたのが昨日あのモンスターを倒してからだったから……。
「たどり着いたときが夕方の5時だそうです。今は翌日の11時ですよ」
「半日以上寝てたんだ……」
でも、今日はもうクエストを受ける気力が出ないよ……。腕が……。
「まあ、私もまさか知らない間にクエストの討伐対象を葬り去っていたとは思いませんでしたが」
「え?」
それってどういう事?
「私達が昨日退治したあのモンスター、テラストの討伐依頼に入っていました。難易度5のクエストで、あまりに危険だから岩を置いて誰も奴の居る場所に入らないように仕向けたんだとか」
「嘘……」
あのモンスターも討伐対象だったんだ……。岩をどけた結果、戦うことになったなんて……。
「なので、知らなかったとはいえ、私達はクエストを達成したことになっています」
「あ、ほんとだ。カードの依頼達成数が5に増えてる……」
見ると、ギルドカードの難易度5の依頼達成数が5に増えていた。
「まあ、今日は休みましょう。彼も流石に動けないようですしね」
「彼って……グリーダー?」
「ああ……俺もさすがに今はまともに動けん。斧もボロボロだしな」
って、グリーダーもこの部屋に居たの!? 同室だったの!?
「開いている部屋が無かったらしいです。まあ、互いに同じ部屋だと気付かないまますぐに寝てしまっていたようですが」
本当に昨日は滅茶苦茶なことしてたもんね……。身体もそうだけど、精神的な疲労が……。
「じゃあ、三人とも起きたところで食事に行きましょうか」
「完全に昼ごはんだよね。でもまあ……」
「やむを得ないだろうな。激戦の結果だ」
二人はあのモンスターの腕を破壊するために途中までずっと武器で攻撃してたし、まだ疲れてるよね。今日はゆっくりしようか。まずは食堂に行こう。
ーーーー
「食事ですね。生き返ります」
「そうだね」
「ようやく食事ができたか」
まあ、昨日はあれから町にたどり着いてすぐに眠っちゃったみたいだしね。一日ぶりの食事になるよね。
「さて、まずは何を食べましょうか……」
「メニューを見る限り、肉料理メインなのかな?」
「そのようだな。まあ、森の中には獣が居るだろう」
「注文決まりました。頼んでいいですか?」
「うん、頼もう」
昨日の昼ごはん以降何も食べてないし、獣一匹の丸焼きでもそのまま食べきれそうな気がするよ。
「すいません。ウルフの丸焼き3つお願いしますね」
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注文してから少し時間がたち、料理が運ばれてきた。……あちこちカットされて食べやすいように部位ごとに切り分けられてるけど、本当に獣一匹分の丸焼きなんだね。
「ウルフの丸焼き、美味しそうですよね」
「森の中だからこそ、この魔物か?」
まあ、テラスト自体が森の中だしね。
「ルーチェさんにしては珍しく、黙々と食べてますよ」
「まあ、相当腹が減ったんだろうな。俺も食べるとするか」
「私も、食べだしたら止められそうにないですね」
普通なら魔物なんて……って思ってるかもしれないけど、美味しいしね。それに、一日食べてなかったからどうしても……。二人も食べ始めた途端に口を開かなくなったし。私も食べ終わるまで口を開けそうにないよ。
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「ふう。お腹いっぱいになりました」
「食事って大事だよね」
「ああ、食事はありがたい物だな」
食事が終わってからようやく口を開いた気がする。でも本当に、食事って大事だよね。さて、お腹もいっぱいになったし、行こう。
「代金は?」
「1800ゴールドです」
「分かりました」
「確かに、またのご来店を」
ずいぶん安く感じるよ。まあ、数万単位で稼げてるせいかもしれないけど。
「この後はどうする?」
「そうだね、必要な物を揃えた方が良いと思う」
武器とか特に。もうボロボロになったんじゃないかな?
「ナイフが刃こぼれしましたしね。何とかしたいです」
「斧の刃が欠けやがったな。こっちも修理に出したい」
「じゃあ、お金渡すから二人は鍛冶屋に行ってきて直してもらってきたら?」
「そうさせてもらいますね」
「お前はその間何をする?」
「そうだね……町を見て回ってくる。合流するのは宿で良いよね?」
「構いませんよ」
「ああ」
「分かった。じゃあ後でね」
この町を見て回るついでに勇者の事を調べても良いかも。どんな人間なのか知らないけど。
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「さあ、勇者様! 今日こそは例のクエストを攻略しますぞ!」
「分かっているよスロウリー。今度こそ、しくじりはしないさ」
勇者様? あれがその一行なのかな?
「奴等の攻略法として、まず私が突っ込んで敵の動きを止めます。そこを勇者様とスロウリーの攻撃で一網打尽にしましょう」
勇者様って言われてるし、あの金髪の男の人が昨日テラピアで聞いた勇者かな? ……うん、どす黒いオーラも一切出てないし、見た目的にグリーダーよりずっと勇者っぽいよ。グリーダーが勇者っぽくないだけだろうけど。
「ああ、任せてくれ。スロウリー、君もそれでいいな?」
「はっ。このスロウリー・スペラー、勇者様の指示なら何なりと」
スロウリーって言う人は……三角帽子のお爺ちゃん? ううん、違うよね。たまたま老け顔だっただけなんだよ。というか、あの人見た目は確かに魔術師っぽいのに何か魔術が苦手そうに見えるけど……。
「さて、あなたはどうしますか? 攻撃魔法を使っての援護か、回復に専念するのか……」
「わ、私は、回復に専念します……」
「頼むぞ、レミッタ。君の回復が頼りだ」
「は、はい……」
レミッタって呼ばれた子は……なんでだろ。あの子に後方支援を任せるのが一番危険そうだよ……。戦いの勘みたいなものが何故かそう告げてるよ……。
「さて、フォーメーションは決めました。次は、実際に決めた通りに動くだけです。クエストを受注しに行きましょうか」
「ああ。今度こそ勝たなければ」
「このスロウリー、同じ相手に二度も負けるつもりはありませんぞ……」
「……」
あっ、移動していった。どんなクエストを受けるのか気になるし、私もここで受ける予定のクエストを確認したいからついていこう。
ーーーー
テラストギルドに来ました。さっきの勇者達が見ているのは……難易度1? え? 何で難易度1なの?
「あの訓練を依頼している相手に返り討ちに遭うのでは、僕たちは先に進めない」
「分かっています。なので、今度こそ勝ちましょう」
「ああ。すまない。このクエストを受注するよ」
そう言って勇者が受けたのは……戦闘訓練?それも町の人の?……え?
「じゃあ、町の広場に行ってくださいね」
「分かった。すぐに向かう」
そう言って出て行った勇者たち。……戦闘訓練の相手って町の人? え? ……どういう事なのかな?
「どうかしましたか? ……って、あなたは!」
「はい?」
「昨日あの化け物を討伐していただいたグループの方ですね! こちらがあの依頼の報酬になります!」
「え? あ……はい。偶然ですけど、被害が出る前に倒せてよかったです……」
まあ、戦うことになったのは私たちが岩をどけてしまったからだけど。依頼を受けたわけでもないのにちゃんと報酬をくれるなんて、律儀なんだなあ……。70000ゴールドってかなり高いよ。
「今日はゆっくりしていってくださいね」
「あ、はい。ありがとうございます。今日は明日以降に受ける予定の依頼を見るだけですけど構わないですか」
「はい。もちろんですよ。こちらが難易度5のクエストの一覧になります」
渡された難易度5のクエスト一覧に目を通してみる。……えっと……。
マシンインセクト討伐(解決済)
西の村の調査
畑荒らしの討伐
魔物討伐
東の遺跡調査
素材調達(納品)
……うん。一見普通だけど、どうして畑荒らしの討伐が難易度5なのか不思議だよ。素材調達かあ……。何を調達すればいいんだろ?
「素材調達の「素材」って、何を調達するんですか?」
「えっとですね、たしか、ピンク色の粘土だったような気がします。薬にするんですって」
「ピンク色の粘土……」
待って。何かものすごく覚えがあるような……。と言うか、ジルが言っていたような。そして、その粘土は私も持っていた……というか、私が持っている気が……。あんなもの何の薬に使うんだろ……。
「どうですか?」
「明日、仲間と一緒に来たときに受けますね」
「はい、分かりました」
まあ、依頼の内容は二人と話せばいいとして、広場に行ってみようかな? さっきの勇者たちの実力ってどんなものか見たいし。
ーーーー
テラストの広場は上と下に分かれており、私が居るのは上の方。下の方ではさっきのクエストを受けるための準備がされてるらしく、入れなかった。
「あ、ルーチェさん。良いところに来ましたね」
「ジル? どうしてここに居るの?」
「今から面白い見世物があるらしいですからね。来てみたんです。勇者を名乗っているのですから、実力があると思いたいですね」
……多分負けると思うけどね……。何か役割分担が一見完璧そうで、実際はものすごく不適合な事をしてる気がするもん……。
「まあ、大方、ルーチェさんの予想通りになるでしょうね」
「ほう、町の住民が何か言っていたから来てみたら、なかなか面白い物をやるみたいだな」
「グリーダー。武器は直ったの?」
「いや、まだだ。……武器の強化の話が出てな、昨日倒した奴の身体を使えないかと言う話になった」
「そっか。じゃあ、試しに使ってもらったら? 凄く威力が上がると思うよ」
「そうしてもらうか」
「私のナイフも同じ強化をしてもらうつもりです」
マシンインセクトだっけ? あのモンスターの身体は二人の武器より硬い素材だったから、あれを武器の刃先に使えばずっと強くなりそうだね。あの鎌や関節の硬さは凄かったもん。
「勇者様だ! 勇者様が来たぞ!」
下の広場に目をやると、勇者……さっきの4人組が広場の中央に入ってくる。金髪の青年、黒っぽい髪の戦士、三角帽子をかぶって杖を持ったお爺さん、杖を持った少女……つまり、勇者、戦士、魔法使い、僧侶のパーティみたい。見た目だけはまさにおとぎ話に出てくる勇者一行だよ。私たちのパーティは一見絶対に勇者とは見えないしね。
「ほう、まさに着飾った勇者だな。実力があれば素晴らしいだろうが……」
「確かに、ルーチェさんの言っていた通りの勇者ですね。あれは見ていると少し圧倒されます」
うん。物語に出てくる勇者だよ。……まあ、実力があればかっこいいんだけど、さっきのアレを見るとどう考えても無理だよね……?
「……勇者は間違いなく前衛の身体だが、何故か中、後衛。戦士は唯一間違っていないが、魔術師がどう考えても術使いに向いていない。最後の女は……パニックを起こすな。あれは間違いなく実戦慣れしていない奴の目だ」
勇者一行を見てグリーダーが彼らを批評した。……本当にそう見えるよね。勇者はともかく、あのお爺さんは絶対魔法使いには向いていないし、女の子は震えてる。……恐怖か緊張に負けて固まってるよ。
「……まあ、のんびり見物しましょう。あれが私達に影響を与えることは無いでしょうし」
「そうだな」
……対戦相手はこの町の人だよね? ……どんな戦いになるんだろ?
スロウリー・スペラー……やっと出せた。次話こそは、彼の力でカオスギャグ路線に戻すのだ!某テイルズの攻略サイトのオリキャラ投稿のスレで考えたオリキャラですけど、そんなこと言っても分かる人は誰一人居ないでしょうね。
……二話続けてギャグが無い……だと?状態です。不味い。ネタキャラが飛び出してこないせいもあるけど、何とか考えて入れないと。