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強奪勇者物語  作者: ルスト
テラピア
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テラストに向かいましょう

 ルーチェです。テラピアの難易度5のクエストが終わったので、テラストに向かう事にしました。テラストは森の中の町で、そこまでは街道でつながっているはず……でした。


「何だこれは?」

「大岩ですね。どうしてこんなところに置かれてるんでしょう?」

「何で街道が岩で塞がってるの!? というか、どこから運んできたのこの岩! 辺りは森で山なんてどこにもないよ!」


 テラストへの街道が見事に巨大な岩で塞がれていました。……誰の仕業なんだろこれ。この辺りには山なんかないから誰かが持ってきてわざわざ置いたとしか思えないよ……。


「まあ、妨害だとしても無駄だがな」

「ですね。破壊するまでも無いです。このフォークで突き刺せばすぐですよ」


 言うなりジルが岩にフォークを突き刺す。直後、岩はフォークに刺さった団子みたいに小さくなってそのままジルに食べられちゃった。……ちょっと!


「普通に食べちゃったけど、そんなの食べて大丈夫なの!?」

「問題ありませんよ。私は毒物でも喜んで食べますし」

「普通そんなもの食べたら体調を崩して死ぬよ!?」

「問題ありませんよ。毒物を食べたら少し舌や胃の奥がビリビリしますが、命に別状はありません」

「それ十分影響でてるから! 死なない方が凄いだけで普通死んじゃってるよ!」


 この子は本当にどうなってるんだろ。グリーダーみたいに異世界の勇者ってわけじゃなさそうだし……。


「グルメイーターたる者、毒物ごときで死にませんよ。強靭な胃袋は刃物……剣や斧を食べても全然大丈夫でしたし」

「その時点で普通じゃないよね!」


 規格外にもほどがあるよ。……まあ、そのおかげで今岩を処分してもらったんだけど。誰がこんなところに岩を置いたんだろ。こんなもの置いても邪魔になるだけだろうけど……。


「決まっている。勇者が動くと困る生物だ」

「そんな生物居るかな……モンスター?」

「いや、貴族や他の勇者だな。自分の功績のためには妨害活動を辞さないだろう」

「それは生物じゃなくて人間って言った方がずっと分かりやすいから!」


 でも、そうだとしたらこんなことができる相手と戦うことになるのかな?


「手強いだろうな」

「そうですね。早く力をつけなければ」

「うん……」


 魔王討伐以前に倒れるわけにはいかないし。もっと強くならないとね。






ーーーーー






「ギシャアアアアア!」

「なにこれ! 魔物!?」


 あれから真っ直ぐ奥に進んでたら、突然妙な魔物が出てきた。腕に鎌をつけた巨大な虫のような、虫の形をした機械のような……。頭部には目のような部分が2つ付いている。


「思考にふけっている場合ですか?あれはちょっと危険では?」

「不味いな。あれの先をよく見ると岩で塞がれた行き止まりがある、俺たちが通ってきた側にあった岩はジルが食った。つまりあの岩は……」

「この怪物を封じ込めるために置いた物、だったんでしょうか?」

「だとしても、もう遅いよね……あの怪物もこっちに気づいちゃったし、もう戦うしかないよ」


 だって両手の鎌を振り回して、戦意むき出しでこっちを見てるもん……。


「来ます!」

「ファイアウォール!」


 まずは炎で足止めできないか試す。これで駄目なら次は電気だよ。


「ギシャアアアアア!」

「!! ……炎を突破しました! グリーダーさん!」

「くたばれ怪物!」


 グリーダーが電撃を斧から放つ。電撃が直撃したモンスターは少しだけ動きが止まったけど、すぐに動き出した。……電撃は普通に効くのかな?


「なら私が……! 氷の槍、貫け!」


 ジルが氷の槍を作り出して怪物に投げつけた。これが効かなかったら一旦距離を取った方が良いよね。あの怪物、おそらくかなり手強いよ。


 ガキン


「氷は通用しません! ……一旦距離を取りましょう!」

「そうだね!」

「分かった!」

「ギシャアアアアア!」


 後ろから化け物が追ってくる。……もしかして、あの岩をどけたのって最悪だった?


「かもしれないですね。ですけど、奴さえ壊せば問題ないでしょう!」

「……そうだね! ……ある程度距離も取ったし、雷で攻めよう!」

「ギシャアアアアア! シャア!」

「!? ……真空波ですか! させません!」


 追いかけてきた妙なモンスターが鎌を振って風の刃を飛ばしてきた。それをジルがフォークで強引に防ぎ、その間に私とグリーダーが攻撃の準備を整える。


「ギシャアアアアア!」

「攻撃を防がれたことを怒ってるのか、こっちに来ますね……今です!」


 十分に近づけてから……今だ!


「食らうがいい!」

「当たれ! サンダー!」

「ガガ……ギシャアア……!」


 至近距離からならさすがに避けられないよね! 案の定直撃して痙攣してるし! 動けないうちに叩き壊さないと!


「壊れろ! 怪物!」

「ルーチェさんは距離を取ってもう一度雷魔法の待機を!」

「分かった!」


 グリーダーとジルがそれぞれ武器を構え、妙なモンスターの鎌の付け根を狙って斬りつけた。


「……! 関節を狙ったのに、異常に硬いです!」

「なんて硬さだ! ええい! ぶっ壊れろ!」


 二人の攻撃が当たったのにモンスターはびくともしていない。……動き出したらすぐにでも雷魔法を当てないと! というか、これは明らかにこの辺りの魔物じゃないよね!?


「魔物に生息地があっても、機械には生息地はありません!」

「ええい! どこの誰だ! こんなモンスターをここに置いたのは!」


 さっきの攻撃でまだ怯んでいたらしく動かないので、二人は鎌を使えなくするために関節を斬りつける。でも全くと言って良いほど傷がついていないよ……。私の炎魔法もほとんど効果が無かったし……。


「くっ! 駄目です! 硬すぎます! 何度攻撃しても、少し傷をつけるのがやっとです! こっちの武器が駄目になります!」

「壊せなくてもせめて機能停止だけでもさせないと! こんなのが動き出したら大変だよ!」

「ちっ! 関節が硬すぎる! かといって無理矢理鎌を引きちぎろうにも……!」

「駄目です! 鎌自体も重すぎます!」


 あの二人でも攻撃で破壊できないなんて……って、待って? 無理矢理引きちぎる? あの鎌が重くて、金属製、金属って言ったら……。


「ギシャアアアアア!」

「ジル! 危ない!」

「くっ!」


 電撃で動けなくなっていたのが解けたのか、ジルを斬りつけてきたモンスター。間一髪避けたみたいだけど、刺さった地面が抉れてるし、鎌が深々と刺さってるよ……。


「ちっ! 不味いな!」

「でも、逃がすわけにもいきません!」

「二人とも、一旦こっちに来て!」


 ……金属ならほとんどの場合磁力で引き寄せられる。もしかしたらあのモンスターも!

「何か策が……あるんですね?」

「うん。これなら……もしかしたら」

「店で買った磁力棒か……!」


 私が出したのはテラピアで買った磁力棒。効くかは知らないけど、やってみる価値はあるよね!


「向こうは少し警戒してるみたいですね。さっきまでのように一気に近づいては来ません」

「さすがにもう一度あっさりとショートするつもりはないか」


 モンスターは常に一定の距離を保ってこっちへと向かってくる。さすがに電撃を至近距離で浴びて関節を壊されそうになったらプログラムも慎重になるよね?


「二人とも、金属は外した?」

「はい」

「問題ない!」


 じゃあ、使えるかどうか試すよ。この磁力棒! もし本当にそんな力があるんだったらきっと上手くいく!


 カチッ


 私が棒のスイッチを入れた直後、周囲の空間が歪んだ。辺りの地面から砂鉄が一気に飛び出して次々と掲げた棒に張り付き、私たちの前に居るあのモンスターも様子が変わった。


「キ……ギ……ギ……」


 何かに耐えるように両腕の鎌を下ろそうとし、両足を地面に食い込ませて踏ん張ろうとする。


「凄いですね……」

「まだだよ。まだアレを破壊できたわけじゃない……」


 砂鉄は次々と飛び出してくるけど、あのモンスターの鎌はまだ取れていない。あれを破壊しないと!


 ブチ……ブチ……


「何の音でしょうか?」

「奴の鎌か?」

「ギギギ……ギ……!」


 モンスターの左腕の鎌が少しづつ磁力棒の方に向いていき……直後、鎌が外れて磁力棒の方を目がけて飛んできた。……って、ちょっと! あんなもの飛んできたら……!


 ガチッ!


「う! 重……!」


 砂鉄の塊が盾になったので私は無事だけど、鎌がくっついて突然重くなったそれを掲げ続けられなくなり、地面に落としてしまう。


「グリーダーさん! 鎌を入れてしまいましょう! ルーチェさん! 磁力を一旦止めてください!」

「了解だ!」

「……うん! 止めるよ!」


 一旦磁力棒を止め、モンスターから外れた鎌を収納用のボールに三人で放り込む。モンスターは地面深くに足を突っ込んだため、しばらく動けない。


「ギ……シャアア……!」


 モンスターが地面から出て来たけど、その左腕に当たる部分から液体がどんどん流れ落ちていた。右腕の鎌も今にも外れそうになっており、何とか討伐出来るくらいに弱らせられたかもしれない。


「シャアアア!」


 もう一度こっちに向かってくるモンスター。でも、最初に向かってきたときのスピードは無く、目と思われる部分も光を失いかけていた。


「雷で攻めよう! グリーダー! 液体が漏れだしてる部分を狙って! ジルはさっきの真空波に備えて!」

「はい!」

「食らうがいい!」


 グリーダーと二人で電撃を液体が漏れだしている部分にぶつける。直後、モンスターの身体全体が電流に包まれ、モンスターの目の光が消え、崩れ落ちた。……終わった?


「何とか、勝てましたね」

「うん……これで、あの岩をどけても大丈夫かな?」

「問題ないだろう……」


 私たちの目の前にはさっきまで戦っていたモンスターの残骸が。右腕は最後に崩れ落ちた際に身体の重みで外れたのかな。


「……こういう敵と出くわすと、自分たちがまだまだだと思い知りますね」

「……うん。もっと、強くならないとね」

「俺もまだまだ、と言う事か」


 とりあえず、このモンスターの身体を解体……出来ないから、できるだけ壊して磁力棒で収納していく。砂鉄の山も手に入ったけど、このモンスターの身体の方が集めるのも大変だったよ……。


「さあ、あの岩をのけて、町に入りましょうか……」

「うん。……ジル、お願い」

「……はい」


 向こう側を塞いでいた岩をどけて進むとその先にテラストが見えてきた。……文字通りの死闘になっちゃった……。こんなに苦戦する敵がすぐ近くに居たなんて……。

終始ギャグのつもりが戦闘シーン大半で大真面目に。まあ、超強敵との戦闘でふざける余裕は彼らにはありませんし仕方ないかな?


戦闘時以外は通常運転に戻る……はず。

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