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強奪勇者物語  作者: ルスト
テラピア
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テラピアを出発しましょう

 無念の紳士(とかいうピンク色の妙な人型)を討伐したし、テラピアに戻って報告することに。もう難易度5の依頼は全部達成したよね。


「ギルドカードが凄いことになってますよ」

「え?」


 ジルに言われたので、ギルドカードの中を見てみることに。確かクエストの達成数に応じて中身が魔法で書き込まれるんだろうけど……。




達成クエスト数

難易度1 0

難易度2 0

難易度3 0

難易度4 0

難易度5 3

冒険者レベル ★5




 ……うん。事実とはいえ、いくらなんでも普通はあり得ないよね。難易度5「だけ」を受けた結果だし当然なんだけど。


「この冒険者レベルとは何だ?」

「えっとね、クエストを受けたときの内容や達成できたかどうかによって自動的に判定されるランク何だけど、普通は低レベルクエストから受けていくからかなり活動を長くしないと★5はありえないんだ」

「判定基準は難易度の平均値でしたよ。なのでどんなに頑張っても普通は★4止まりです。★5は文字通り難易度5だけを受け続けないと得られませんしね」

「つまり、優秀さの象徴でもあるのか」

「優秀かどうかは知らないけど、でも間違いなく異常だと思うよ。難易度5は私たちもよく知ってる通り、凄く危険だしね」


 魔王討伐なんて最終目標を掲げてなければ、こんな難易度のクエストを好き好んで受けようとも思ってなかったしね。危険な敵ばっかり相手にすることになるし。


「あえてそこに踏み込む時点で、十分異常ではありますけどね」

「最終目標が魔王討伐だから不安要素は消さないと!」

「それについては同感だな。相手の力量が分からん以上、自らの力は徹底的に研ぎ澄まさなければならないしな」

「攻略本にダンジョン攻略法と一緒にボスの詳細なステータスが載っているわけではありませんしね」

「全くだ。あれが無ければ攻略は大変だ」

「攻略本ってそもそも何!?」


 唐突に意味不明な事を言い出したよ。


「攻略本も知らないのか? 相手のステータスやダンジョンの詳細、世界観が載っている便利な本だぞ?」

「初見殺しの落とし穴や無限ループを抜けるなら必須のアイテムですよ。モンスターの生息地や能力も完全に把握しています」

「そんな反則アイテム何処にあるの!? モンスターの居る場所や能力の詳細まで分かってしまうなんてインチキそのものだよね!?」


 そんなのがあったら相手の弱点も一瞬で把握できるだろうし、すごく有利になるだろうけど。


「そうだ。ここの攻略本はどこに売ってる? あれがあると格段に楽になると思うんだが」

「聞いたことが無いですね。そもそも攻略本はどこの世界であろうと、その攻略本が役立つ世界には絶対に置いていませんし……」

「自分の世界の情報を完全に書き記したものを作ること自体がそもそも不可能に近いから!」


 魔物に関する図鑑を作ろうとしてる人がどこかに居るらしいけど、少なくともその魔物の能力の時点で個体差があるだろうし。


「そもそも生物の強さが変動する時点でデータがあっても役には立たんか」

「一定の能力値の敵だけであれば攻略本や攻略サイトとして分類できますけどね。同じ人であればAとかBとかいう分類をすればいいんですし」

「人間でも分類分けするの!? というか、そもそも同じ能力の人とは二度と戦えないと思うんだけど!?」


 だって、能力って常に変わっていくし……。能力が変わらなくても、学習して動き方が変わるし……。


「そう言う盲点があったか」

「盲点でしたね。これではこの世界で攻略本が出る期待は出来ません」

「変動する能力の前では固定データは嘘同然だからな。出した会社は訴訟を起こされて潰される」

「出してくれる期待は出来ませんね」

「そもそもその世界に通用する攻略本が同じ世界に置いてある時点で問題だよね!? 話を聞く限りその世界の人にとっては完全にインチキみたいな性能の本だし、世界観が載っている=王宮内部の状況とかも完全に載っているとしたら、明らかに発行禁止級の書籍だよ!?」


 でも、ちょっと見てみたい気はするけど。……でも軽い気持ちで自分の世界の攻略本を見て、自分がモンスター側としてAとかBの分類で書かれてたらものすごくショックが大きいだろうけど。


「まあ、無い物ねだりしてもしょうがない。とりあえずテラピアに戻るぞ」

「そうだね。今日中にテラピアを出て次の町に向かうよ」

「ここから東ですか?」

「うん。森の中にテラストっていう町があるから、そこを目指すよ」


 テラストって確かテラントの東の防衛線とか言われてるくらい重要な拠点だったけど。確か森を反対側に抜けたら別の国だったっけ?


「別の国? どこだ?」

「テラントの東と言うと……ヒローズですね」

「どんなところか知ってるの?」

「ええ。ヒローズは勇者信仰が盛んですしね。勇者を名乗って寄付を募ってお金を集めてから魔王討伐名義でテラント側に逃げたことがあります」

「何してるの!?」


 それって詐欺だよ! 詐欺だよね!?


「いえ、その時はそもそも魔王自体居なかったので、騙される方が何とやらですよ」

「余計悪いよ!」


 魔王が居ない時にそういう事を言った時点で立派に犯罪だよ!


「寄付を募ること自体は悪い事ではないな。俺も生活苦に陥った勇者が出まかせを言って寄付を募る姿は見ていた」

「ですよね。別に一般人から毟り取っても問題ないですよね?」

「ああ。奴らは俺たちが生かしてやってるんだから全然問題ない」

「まず二人のその思考がどこから来るのか知りたいよ!」


 とはいっても、王宮に召喚されたその直後に放り出された経験があるグリーダーだとそう思っても無理は無いんだろうなあ……。王宮の人間は自分を召喚して勝手に捨て駒にした人間で、その国民は自分が死地に行くことをさも当然の事のように考えてる輩って思ってそうだし。


「ヒローズに行けばルーチェさんがイメージしているような勇者の光景が見られるかもしれないですよ?といっても、まずは依頼の報告からですけど」

「そうだね。そろそろテラピアに着くし、まずは報告からしないとね」


 依頼達成の報告をしたら、テラピアを出よう。そして次はテラストで難易度5のクエストを受けることにしよう。もっと力をつけないといけないしね。






ーーーー






「おう! 戻って来たか! 奴は倒せたか?」

「はい。完全に体が崩れ落ちてばらばらになったので、大丈夫だと思います」


 その崩れ落ちた体は二人が回収して持って帰ってきちゃったし。


「そうか! あの怪物のせいでまともに調査が進んでなかったからな。感謝するぜ」

「あんなものが居たらとても発掘に集中できませんしね」

「ああ、その通りだ。……さてと、これで依頼達成だな。今回の報酬がこれだ」


 そう言って渡されたのは30000ゴールドと……本?


「その本は凄いぞ。なんでも、魔物の情報が勝手に記録されるらしい」

「図鑑ですか?」


 ええ!? 何その本! 聞いたことも無いよそんな本!


「ほう。つまり、魔物の詳細を確認したければ使えると言う事だな」

「ああ。と言っても、一度倒した魔物相手だけだがな」

「なるほど、ちょっと見てみましょうか」

「う……うん……」


 そんな本あるわけないと思うんだけど……。そう思いつつも、渡された本を開いた。


目次

ミドガルズオルム


 あれ? これだけ? ……他のモンスターにとどめを刺したのがグリーダーやジルだったから? ミドガルズオルムって……まさか……。


ミドガルズオルム……緑色の身体が特徴の、巨大な大蛇型のドラゴン。大きなものでは体長は5メートルを優に超す。その外見がドラゴンと言うより蛇に近いため、蛇と誤解されて蛇退治と言う名目で討伐させられることがある。自動再生する能力があり、一気に致命傷を与えないと倒すことは困難。


「何かおかしいと思ったけど、やっぱりドラゴンだったよあれ! 口の中にびっしり牙が生えてたし、腕や翼がついてたし! というか、こんなに大きな蛇が居るわけないじゃない!」

「この魔物がどうかしましたか?」

「ああ、これが記念すべき最初の討伐対象だ」

「情報は各々が倒したモンスターのデータを共有しなければ手にしている人間がとどめを刺した奴の情報しか載らないからな。情報共有のためにギルドカードを当てておくのを忘れるなよ」

「分かった」

「さ、行きますよ。ルーチェさん」

「あ、うん」


 そうだね、行かないと。もうここには難易度5のクエストは無いし。


「難易度5のクエストを全部同じグループに受けられちまったな。おまけに完遂だ。ここまで規格外なのはめったにないから、誇っても良いぞ?」

「はい。勇者として寄付を募る際のカードが増えましたしね」

「そんなことに悪用したら駄目だから!」

「そういや、どこかで勇者が旅立ったそうだが、そんな連中に負けるなよ?」

「勇者が? どこから?」


 私たち以外に魔王討伐を掲げる人が居るの?


「確か、テラストに入って修行するとか言ってたな。恐らく勇者を名乗って威張ってくるだろうから、難易度5制覇者の圧倒的な力を見せてやりな!」


 それは自信喪失につながるからやめた方が良いような……。


「実力も無いのに勇者を名乗る愚か者が居るのか。早速テラストに向かうぞ」

「まあ、次の目的地だから向かうけど、でも、どんな人なんだろ?」

「やっぱり勇者の地位を使って豪遊する人でしょうかね。いずれにしろ、行ってみてのお楽しみですよ」

「そうだね。行こう。……お世話になりました」

「おう! お前らのおかげで難易度5のクエストは品切れだ! いつになるかは分からんが、また来てくれ!」

「はい、それでは」


 テラピアを出て、テラストに向かおう。……勇者を名乗る人、どんな人なんだろ? やっぱりグリーダーみたいに凄いオーラを放ってるのかな?


「まあ、雑魚でしょう。この人と戦えば、十中八九負けますね」

「それはグリーダーが強すぎるだけだから!? グリーダーを基準にしたら大体の勇者はザコ扱いだよ!」

ポッと出の別の勇者がグリーダーを超えるかって?天地がひっくり返っても無いですそんなこと。まあ、ある一点だけ彼らの方が凄く勇者ですけどね。

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