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強奪勇者物語  作者: ルスト
テラピア
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無念の紳士討伐に行きましょう

 昨日はグリーダーの世界の話を聞きました。……やっぱり滅茶苦茶な世界だったよ。さまをつけないと町人の首をへし折って殺すことが当たり前だったりするんだもん……。


「おはようございます、ルーチェさん」

「あ、おはよう、ジル」

「昨日の話は面白かったですね。異世界と言うのがいかに楽しい世界か知ることが出来ました」

「楽しいを通り越してると思うけど!?」


 強盗が当たり前の時点で楽しい世界には感じられないよ!


「むしろそんな世界だからグリーダーさんのような凄い勇者が生まれるんでしょうね」

「グリーダーは勇者じゃなくて強盗だよ!?」


 放っておいたら間違いなく民家を荒らすだろうし!


「勇者と強盗を同じにするか。まあ、民家を荒らすことは勇者に課せられた止められぬ宿命だから仕方ないだろうが」

「それは宿命でもなんでも無いよね!?」


 そんな妙な宿命を背負うくらいなら素直に魔王を倒す方に動いてよ!


「それは出来ない相談だな。勇者たる者、好き放題強奪や追剥に精を出して、初めて魔王を倒すと言う行動に目を向けられるからな」

「そっち方面に精を出したら駄目だよ!」


 そっちに行ったらただの犯罪者だよ!


「それはおいといて、今日はどうする気だ?」

「今日中にテラピアの難易度5のクエストを終わらせて次の町に向かうよ」


 いつまでもこの場所の周辺にとどまるわけにはいかないし。


「今俺たちがやっているような旅を進める勇者というのも魔王討伐と言う名目で追剥や強奪が出来て良いが、あえて自宅に引きこもって旅立たない勇者になるのも一つの手だな」

「魔王討伐が名目になってたら駄目だから! というか、自宅に引きこもって外に出ないのにどうやって世界を救うの!?」


 自宅に引きこもっても何の解決にもならないよ!?


「何、自宅の平和を守る勇者と言うのも面白いぞ? 自宅の安全のために居座り、同居している住人から自宅の安全を守ると言う名目で食事や給金を頂き、自宅に魔物が襲来しない限りは好きな事をして過ごせるのだからな」

「それただの駄目な人だよね!? 一番駄目な人の見本だよそれ!」


 それは勇者と言うよりただの堕落者だよ! 勇者なら世界平和のために動かないとだめなのに!


「自宅の安全を守る勇者の場合、肉体的な強さの代わりに同居している住民が旅立てと言おうが王が魔王を倒せと命令しようが完全にスルーできる高潔な精神が得られるぞ」

「自宅に引きこもる勇者……ただで生活できるのなら案外よさそうですね……副産物も魅力的ですし」

「そっちになったら駄目だからね!?」


 引きこもり勇者なんて最悪だよ! ……それはともかくクエストを受けに行こう。






ーーーー






 テラピアギルドにやってきました。今日クエストを達成できればここの難易度5の依頼はお仕舞だよね。最後の1つは……無念の紳士討伐だね。


「クエスト:無念の紳士討伐を受注します」

「おう! それで難易度5のクエストは最後だ。行って来い!」

「場所はどこですか?」


 無念の紳士なんてどこにいるんだろ?


「奴は……ここから北にある荒れ地に生息してやがる。見た目は……とにかくピンク色の妙な人型だ」

「分かりました」


 ……とにかくピンク色の人型生物? どんな生命体なんだろ?


「ルーチェ。ここから北にある荒れ地とはどんな場所だ?」

「簡単に説明すると、小さな荒野みたいな場所だよ。周囲は普通に平原になってるのにその場所一帯だけが荒野になってるの」


 何故かその場所だけ草が生えないみたい。いくら植物を植えてもすぐに枯れるって噂もあるし。


「じゃあ、その場所まで行ってみましょうか」

「うん。行こう」


 紳士を討伐できれば、今日中にテラピアを出ることになるかな?さあ、町を出て北に向かおう。






ーーーー






 町を出て10分。荒野が見えてきました。


「随分近いな」

「まあ、テラピアのクエストで行く場所は大抵テラピア周辺だからね」


 だってテラピアから徒歩で20分以上かかる場所に行く依頼なんか出したって誰も受けないよ。この世界には勇者が使うような移動魔法は無いし、遠くに行ったら中々帰れないから遠くに行く類の依頼はめったに受注されないしね。


「人に頼るな己の足で歩け、と言う事だな」

「そもそもクエストなんて出す時点でその人には問題解決能力が無いですしね」

「そういう事を言ったら駄目だよ! クエストが無いとギルドは成り立たないし冒険者も生活できないんだから!」


 だってギルドに登録して生計を立てる人が国民全体の四割は占めてるって話だし……。


「はあ……この世界の人間は自分でものを作り出して生活することも出来ない奴が全体の四割を占めているのか?」

「情けないですね」

「私達もその四割に含まれてるんだけどね!?」


 特に強奪で生計を立ててるグリーダーとか。


「何を言う。俺ほど消費を生み出す人間はそうは居ないぞ」

「……本当?」


 食事を見てても絶対ジルの方がたくさん食べるし、グリーダーが他の人より大量に物資を消費するようなことは無さそうだけど……。


「俺はこう見えて収集家だ。だから、店に置いてあるものはずべて買い占めたくなる」

「勇者にはアイテム収集家が多いです。なので1つしか無い物を店側が作り続ければ大抵利益が出る計算になるんですよ」

「収集家って……でもまあ、それだと1つしか無いと言われ続ければ買い続けるんだよね」


 収集家なら限定品は逃さないだろうし。というか同じ品でも昔に買って倉庫に入れたことを忘れてたらこの手の人は買っていきそうだし。


「そう言う輩が居るから、武器屋が利益を出せるんだぞ?武器屋は俺たち収集家に感謝するべきだ」

「ですね。それと、少数で旅していて使い切れもしないのに99個買い占めていく人間にもですね」

「なんで使い切れないのに99個買い占めていくの!? というか、消耗品でもないのにそんなに使えないよね!?」


 消耗品なら必要だしそれだけ持って行っても役立つけど、同じ装備品を99個も買い占めるなんて軍隊でもないとまずやらないよね……。それをわざわざ少数で旅していてやるなんて……。


「世の中には、人よりも武器な人がたくさんいるんですよ」

「武器もこれまた特定の奴が持っている武器を奪い取ることで集める輩が居るな。無論目標は99個らしい」

「奪い取って99個も集めるなんて……昔話に伝わる橋に立って、通せん坊をし、自分が勝った相手の武器を奪って集めた大男じゃないんだし……」

「あの男がこのコレクションの先駆者だな。もっとも、あいつは98個で空気を読めない通りすがりに倒されてしまったが」

「……頭が痛くなるよ……」


 あの大男もそうだけど、そんなことして99個も集めるくらいなら、もっと他の事に時間を割こうよ……。


「気楽にいきましょう」

「気楽すぎるよね!?」


 だって、使命感がこれっぽっちも感じられないよ……。強奪に精を出したり無駄に買い占めたり……。


「まあ、その代りに魔王を倒してやるから良いじゃないか」

「……そうなんだけど……」


 もっと死地に赴くって感じの勇者の方が多いと思ってたし……。


「ところで、あの地面に刺さったピンク色の棒は何なんでしょうか?」

「……え?」


 ジルが荒野の一角を指さしたからそっちの方向を見たら、確かに遠くにピンク色の棒のような物があって、それが左右に分かれて揺れて……って、あれがもしかして討伐対象!?確かにピンク一色だけど……。


「満たされない……満たされない……」

「え?」


 ……相手は遠くに居るのに今の声は何故かすごく近くから聞こえ……下!? 地面を掘り進むような音も聞こえるし……危ない!


「飛びのいて!」


 私達が飛びのいた直後、私達が立っていた場所からピンク色の手のような物が生え、さっきまで遠くにあった棒のような物が地面に吸い込まれていき、私たちの目の前にピンク色の人型のような物……としか形容できない妙な物体が現れました。グリーダーより大きいけど……身の丈約3メートルかな。


「満たされない……満たされない……」

「な、何なのこれ……」


 ピンク色の物体が人で言う顔に当たる部分をこっちに向けて妙な事を言ってくる。……何が満たされないのかな?


「私の愛を受け取って! 200回も私を捨てないで~!」

「意味分からないよ! というか、襲ってきた!」


 突然両腕らしき部分を広げて抱きかかえようとしてきました。……その掌らしき場所にある回転している丸いカッターは一体何!? 抱きしめて後ろから切断する気!? そんなの食らうわけにはいかないよ!


「ああ……また捨てられた……これで201回……201回捨てられた~!」


 避けられたことが分かった途端、ピンク色の物体が泣き崩れるような動作をして意味不明な事を叫び始めました。何か恋人に捨てられた女の子みたいなことを言ってるけど……でもさ!


「そんな物掌につけてる時点で大人しく抱きしめられる相手は絶対居ないよ!? 切断されちゃうもん!」

「魔物に突っ込んでる場合ですか? 一旦離れましょう」

「……そうだね! あんなのに抱き着かれるわけにはいかないし!」


 一旦離れて、私はとりあえず距離を取ろう! ……こんな危険な魔物は早く排除しないと!

期限でお蔵入りになった没ネタが書いているうちに変な方面に進化。可愛い女の子ならまだしも、ピンク色の人型物体に泣き崩れられてもねえ……な状態になっちゃったよ!でもまあ、お面がないんじゃしょうがないよね!(お面があっても全く変わらないとかいうのは(ry)

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