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強奪勇者物語  作者: ルスト
バグリャ
129/168

地下道の奥を調べましょう

この話の二話手前に24日に投稿した話が割り込み投稿されてます。

投稿したのに最新話の投稿判定されてなかったので念のため。

 新しい防具を受け取り、私達は再び土管の中に。

 これまで探索を後回しにしてきた石の壁をいよいよ調べることになる。


「ここだね、石の壁。色も材質も明らかに違うよ」

「この奥に何かあるんでしょうか? また魔物が湧いたら困りますし、調べてみましょう」

「そうだな。マディス、頼む」

「分かったよ。じゃあ、吹き飛ばしちゃうからちょっと下がっててね~」


 そう言いながら石壁の前に立ち、緑色の光を放つ結晶を二つ取り出したマディス。

 ……あれ? 爆発で吹き飛ばすんじゃないの?


「まあ、火薬でもあったら調合で爆弾だって作れるんだろうけどね~。残念ながら持ってないんだよ。だから……突風で無理やり削り取るよ」


 そう言うなり二つの結晶をマディスが重ねる。

 直後、マディスの手から二つの風の渦が発生し、石の壁を強引に削り取っていく。

 こういうのを見てると、調合も魔術の一種で良いんじゃないかなって思えてくるよ……。


「ですよね。まあ、本人がそう認めない限り魔術じゃないんでしょうけど」

「まあ、色々あるんだろ」


 まあ、魔術が使えない、って自分で言ってたりしてるしね……。

 その辺のことは今考える事じゃないから後回しにするけど。


「さて、壊れたよ。やっぱり奥に何かあるね。この壁の所だけ通路になってるよ」

「本当に何かあるなんてね。まあ、魔物の気配がしてたしある意味当然なのかな?」


 というか、壁の奥から魔物の気配がするって時点で隠し通路を疑うよね。

 レンガの中にいかにもな石の壁が紛れている時点で確信できるし。


「ここからは未知の領域だね。気を付けて進もう」


 各々装備を確認し、私達は石の壁で塞がれていた場所に踏み込み始めた。

 マディスが取り出した棒に私がファイアボールで火を点け、簡単な松明を作って灯りを確保して進む。

 ……ホーリー・カノンで良いような気もするんだけど……。


「駄目ですよ、ルーチェさん。何処に敵が居るか分からないんです。あの魔術を撃ったらそこに光の柱がしばらく残ってしまう以上、そこに何かあるって確信されちゃうじゃないですか」

「まあ、松明も正直かなり危ない気がするんだが、最低限自分たちの位置だけは知っておきたいからな」


 ……まあ、二人の言う事も尤もなんだけどさ。


「それはそうと、特に何も無いですね。一直線の通路があるだけじゃないですか」

「そうだね。奥には大きな迷宮でもあるかと思ったけど、今の所一本道の通路しかないよね」


 ジルが呟いた通り、本当に真っ直ぐな通路しかないんだよね。

 床がちゃんとした道になっている辺り、さっきのマディスの薬で作った通路ってわけじゃなさそうだけど。


「そうなんだよね~。だけど、何もないからちょっと拍子抜け……ッ!?」


 魔物一匹出ないから少し気が抜けそうになっていた時、前を歩いていたマディスが突然立ち止まった。

 直後、マディスの目の前を連結したまま回転する複数の火球が通過し、また上へと消える。

 その後、少し距離を取って立ち止まり、様子を見ているとまた火球が私たちの前を横切り、上へと消えていく。

 ……連結したまま回転する火球、か……。この場所の仕掛けかな?


「ああ、びっくりした~……。いきなり目の前に炎が飛び込んでくるなんて思わなかったよ」


 間一髪避けられたマディスが口を開く。

 ……あと一歩前に進んでたらあのトラップに燃やされてたね。

 本当にいきなり出てきたから……。


「大丈夫ですか、マディスさん?」

「うん、なんとかね~。まあ、本当に偶然避けられた、って感じだけど」


 ……危なかったよね。

 さて、どうする、あの仕掛け?


「まあ、とりあえず調べてみるか? どこからあの火球が出てきているのか、無力化できるのかくらいは調べておいていいだろ」

「そうだね。他にもこんな仕掛けがあるかもしれないしね。少し調べよう」


 ここで対処法さえ分かっておいたら後々楽になるだろうしね。

 じゃあ、とりあえず当たらないぎりぎりまで近づいて覗き込んでみる?


「そうですね。その際確認する人はこの前作った炎を吸収する盾を持っておきましょう。それを持っておけばあの火球の棒による攻撃は防げるはずですよ」

「いや、あれは攻撃っていうより罠か仕掛けじゃないかな、ジル?」


 あれが魔物って事はないだろうしね。

 ……まあ、仕掛けに引っかかって被害を受けるのも魔物の攻撃で被害を受けるのも「被害が出る」って意味だと全く同じなんだけど。


「まあ、その辺の事はともかく、あの火球の棒をどうにかするなら盾に吸ってもらえばいいのではないか? と思っただけですよ。どうします? 保険にはなると思いますけど」

「持って行くのが一番かな。で、誰が見てみる?」

「私が行くよ。盾を貸して」



 マディスから炎を吸収する盾を受け取って、私は火球の棒の仕掛けの範囲内に踏み込んだ。

 直後、私の方に向かってきた火球の棒の一部が盾に吸い込まれて消滅し、仕掛けの射程が短くなる。

 その位置から棒の根元を見上げると、棒が天井に吸い込まれるように消えてから再び現れているのが確認できた。

 どうやら棒は天井の中を通り抜けて回転しているらしく、天井の少し下に支点となっているブロックが設置されており、そこから火球の棒が出現している。

 ……もっとも、盾に吸い込まれた部分が完全に消滅して再生しない辺り、そこまで厄介な仕掛けじゃなさそうだけど。


「どうなってますか、ルーチェさん?」

「……何故か天井を貫通して回転してるみたいだけど、盾が吸い込んだ火球が補充されてないから、これで全部吸ってしまえば特に問題は無いと思う。今から全部この盾で無効化しておくよ」


 盾を構えて更に踏み込み、火球の仕掛けを全部盾に吸わせて処理する。

 ――――仕掛けは完全に無力化され、復活する様子も無い。

 これで安全かな?


「仕掛けは何の影響も無く回転できる天井……何なんでしょうね、本当に」

「人間だけを阻む壁とか?」

「この辺はバグッタらしいな。まあ、本来ならこういう奇妙な面ばかりが目立つはずなんだろうが」

「というか、バグッタって魔境のはずだったのにね……」


 確かに妙な物もいっぱい見たけど、でも、なんだかんだで普通の町だったよね?

 というか、バグリャから来た人はどれくらい居るんだろ?


「まあ、人の手が入ったら多少はまともになるんだろうな。さ、先に進むぞ」




 仕掛けを無力化した私達は、その後も見かけた同じ仕掛けを盾に吸い込ませて先に進む。

 一本道をしばらく進むと、だんだん通路の天井が高くなり、天井が視認できないほどの高さになる。

 そして、通路の出口には半開きの扉があり、奥には広間らしき場所が見えている。広間の奥が気になるので、一旦足を止めて覗き込んだ。そこには――――






「グルルルル……」

「カー! カー! カー! カー!」

「キキキキキ……」

「キーキー!」

「ワンワン! ワンワン!」




 ――――骨付き肉に手足が生えて自由自在に歩き回る物体、口の部分が砕けた骸骨から赤く光り輝く翼が生えた何か、一見甘くておいしそうな食べ物にも見える黄色と黒色のプルプルした物体、何故か椅子に座っている顔だけ猫化した筋肉ムキムキな謎生物、全身に顔が浮き出ており、すべての顔が常に喋り続けている謎の人型がうろついており、その後方には開かれた大きな扉が。

 ……正直、魔物の能力よりも姿で戦力を削がれそうな気がしてくる。

 というか、やっぱりこんなのが居るんだよね……。


「バグッタ故仕方なし、って奴か? さて、誰が殲滅する?」

「私がやるよ」


 多分ルシファーの剣ならあっさり片が付くんだろうけど、試し打ちしたい魔術もあるし、ここは任せてくれる?


「まあ、ルーチェがやると言うならそれで構わないが。じゃあ、任せるぞ」

「うん。……一応、下がっててね」


 まず無いと思うけど、後ろに降ってきたら危ないからね。

 用心はしておかないと。


「マディスみたいに新しい攻撃方法でも作ったのか?」

「一応、ね。まあ、作ったばっかりで実戦で使えるかはまだ分からないけど」


 ルシファーの言葉にそう返し、詠唱を始める。

 新しい魔術の試し打ちだけあり、若干緊張してくる。

 扉の影から詠唱してるし多分大丈夫だろうけど、一応気を付けないと。


「――――光の槍、仇名す者に制裁の一撃を。シャイニングスピア!」


 広間の中に居る魔物の集団目がけて魔術を放つ。

 直後、魔物のうろつく広間全体が光によって照らし出された。

 そして、突然の光に驚いた魔物の集団は一匹残らず光の方を向く。

 魔物が光を見た瞬間、広間に無数の光の槍が豪雨のように降り注いだ。

 無数の光――――シャイニングスピアが無抵抗の魔物の集団を貫いていき、一匹残らず串刺しにして地面に縫い付け、その動きを止める。


「なんとなくデモンスピアに似ているような気がしますけど、気のせいですか、ルーチェさん?」

「実際に参考にしてるし、ジルの気のせいじゃないよ。まあ、私なりに工夫を加えてみたんだけど」

「工夫? 何ですか?」

「すぐ分かるよ。――――シャイニングスピア、爆破!」


 私が叫んだ瞬間、魔物の身体や広間に突き刺さっていたシャイニングスピアが次々に爆発していく。

 いくらバグッタの魔物と言えど、爆発の追撃には耐えられず、次々に吹き飛んで粉々になる。

 爆音が収まるころには魔物たちは影も形も無くなっていた。

 ……破壊力は問題なさそうだね。これなら新しい主力魔術に使えるかな?


「凄い威力だな。魔物が跡形も無く消し飛んだぞ」

「爆発する槍の雨ですか。……私にも出来るでしょうか?」

「まあ、片付いたみたいだし先に進もうよ」


 魔物が片付いたことで安心したマディスが広間の入り口に入った直後、地面に散らばっている槍の残骸が光った。

 ……まだ爆発するの!?


「……マディス、今すぐ戻って!」

「え!?」


 私の声を聞いたマディスが反射的に広間から通路に戻るのと広間の中に散らばったシャイニングスピアの残骸が爆発するのはほぼ同時だった。

 後少し遅れてたら、マディスも爆発に巻き込まれてたのかも……。


「って、まだ爆発するんですか? ……残骸まで爆発するなんて、物騒な魔術ですね」

「なるほどな。最初の爆発で油断させて、時間差で奇襲するのか」

「驚いた~。時間差で攻撃するなら先に言ってくれないと……」


 時間差での爆発を見た三人が各々感想を口にした直後、また広間から爆発音が響き渡った。

 また爆発……? ……最初の一度しか爆発しないように作ったはずなのに……。


「また爆発しましたね。規模は小さくなっていますけど」

「なるほど。何度も時間差攻撃を繰り返す魔術か。考えたな、ルーチェ」

「こんな攻撃方法もあるんだね~。参考になるよ」


 直後、再び爆音。

 なんだか嫌な予感が……。


「あ、あれ? 止まらない……?」


 皆は感心してるみたいだけど、そんなこと言ってる場合じゃないような気がしてくる。

 とっくに爆発は止まっていないとおかしいはずなのに……。


「え? 何度も時間差で攻撃して敵を仕留める新しい魔術じゃないんですか?」

「そんなわけないでしょ!? 爆発は最初の一回だけのはずだよ!」


 というか、何度も爆発して攻撃する時間差攻撃なんて思いつかなかったし!


「ルーチェさん、魔術の作り方間違えました?」

「そんなはずないと思うんだけど……」


 ちゃんと爆発するようにイメージして作ったし、槍が降る範囲も……。


「それにしては爆発の回数が多くない? もう止まったみたいだけど」

「って、まだ爆発してない槍が壁に刺さってるぞ?」


 ええ!?

 いくらなんでも壁に爆発してない槍なんて……。

 と思ったけど、扉の奥を覗いてみると本当に槍が数本壁に突き刺さってるし、この槍からは爆発する気配が全く感じられない。

 ……失敗かな? どうしてこんなことに……。


「まあ、長い時間をかけて調整したんじゃなく、数日で一気に作ったんじゃそうなってしまいますよ。魔術書を使って魔術を放ったわけじゃない以上、いきなり完璧には使えませんしね」

「まあ、細かい調整は手伝うから気を落とすな」

「うん……お願い」


 このままじゃ不安定すぎて使えないしね……。

 数日で一気に新しい魔術を完成させて皆を驚かせてみようとか考えて作ってみたのに……。


「まあ、僕の薬もそうだけど、そう言う事を考えると大抵ロクな事にはならないからね? 驚かせるつもりで使った薬で大惨事を招いたことなんてしょっちゅうあったし」

「……覚えておくよ」


 大惨事になったら目も当てられないし。

 ……気を取り直して、先に進もうか。

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