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強奪勇者物語  作者: ルスト
テラピア
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テラピア坑道の奥に行きましょう

 目的地のテラピア坑道についたので、魔物の討伐をするために潜ることにしました。……というわけで潜ってみたんですが……。






「つまらんな……。どこにも魔物の姿が無いではないか! 俺を戦わせろ!」


 私たちがいくら坑道の奥に進んでも、魔物の気配どころか影すらありません。……何で魔物が居ないのかな?魔物討伐のために来たのに……。


「入ってからすでに20分は経つのに敵の気配がまったくしないなんて……」


 普通なら魔物はすぐに襲ってくるはずなのに、ここではいつまで経っても魔物が出てきません。……本当にここに魔物が居るのかな?


「くそ! 戦いをするために来たというのに、魔物の影すら無いとはどういう事だ! 出てこい魔物ども! さっさと俺を戦わせろ! 俺を退屈させるな!」


 ……早く魔物と戦わないとグリーダーも何かとんでもないことをしでかしそうだし、さっさと魔物を探さないと。とりあえず最深部に向かおうかな。











「……もおい……で…ね。もっと食べ…ため…奥……行っ………すか」


「何だ……今の声は?」

「何か聞こえたよね……」


 人の声かな? ……もしかして、この坑道に私たち以外に誰か居るのかな?


「まさか……」

「今の声の主……」


 魔物に襲われてるのかな!? だとしたら助けに……!


「今の声の奴が俺のお楽しみを奪っていきやがったのか!?」

「そう言う問題なの!?」


 やっぱりこの人は自分に関係のある事しか考えてないの!? もし魔物にさっきの声の主が襲われてたら大変だよ!


「許せん! ここは俺の狩場だ! 人の獲物を勝手に奪っていく輩は……俺直々にお仕置きするだけだ!」

「そんな自分勝手な理由でお仕置きしたら駄目だからね!? というか助けるよね普通は!?」


 とにかく、さっきの声の主を探さないと! もし魔物に襲われてたら大変な事になるし!






 むしゃむしゃ……バリバリ……


「何……これ? 何かを食べる音?」


 何か硬い物を齧ってるような音がするけど……。


「大方、さっきの声の奴が魔物に食われたんだろうな」

「冷静に言ってる場合!?」


 もし本当に食べられてたら制限が大変なことになっちゃうよ!?


「大丈夫だ。仮に魔物に食われてもリセットすればやり直しがきく」

「リセットって何!? というか、やり直しは出来ないからね!?」


 やり直しがきくなら私絶対こんな旅なんてしてないだろうし!


「強盗団の旅は良い物だろうに。そんなに大変か?」

「そもそも強盗団じゃなくて勇者だからね!?」


 私達は勇者としてこの旅をしているはずなんだよ! 強盗団なんてしてないんだよ!……多分。


「勇者ねえ。最終的に魔王を倒すと言う目的がある以外やっていることはその辺の山賊や盗賊と全く同じだろうに」

「グリーダーがそんなことを実際にしているからそう思えるんじゃないかな!?」


 少なくとも、この人は勇者を名乗ったら駄目だと思う。夜中に突然抜け出して覆面を被って民家を襲いに行こうとしたし。


「分かってないな……俺みたいなのが真の勇者なんだ。力に任せて眼前の敵を叩き潰し、叩き潰した相手は誰であろうと例外なく身ぐるみを剥ぎ、隙あらば民家から支援物資も頂戴する。これが真の勇者だぞ?」

「やっぱり話を聞けば聞くほどグリーダーは盗賊か強盗にしか見えてこないよ!」


 少なくともこんな勇者じゃ世界を平和には出来ないよね!?


「……ふう。俺みたいなやつが世界の平和を守っていると言うのに、それが分からないとはな……」

「盗賊や強盗が平和を守ってる時点でどう考えてもおかしいよねその世界!」


 こういう人が勇者として活動してたら、むしろ悪い方向に進みそうな気がするよ。


「正義を掲げる奴に、勇者など務まるわけが無いわ!」

「むしろ逆だよね!? 正義感が強いから勇者のはずだよね!?」


 正々堂々正面から戦って悪を討つのが本当の勇者だろうし!


「ふっ……それは勇者ではない。ただの愚かな無謀者だ! 真の勇者とはな……いかなる手段をもってしても戦いには勝利し、強力な敵は数の暴力で叩き潰し、民衆の民家からは容赦なく物資を略奪し、落ちている物は何でも自分の物にして勝手に持ち去り、気に入らなければ壺を投げまわして町人に当てる。これくらいフリーダムな行動を取れる者なのだぞ?」

「それはもはやただの酷い人だよね!? 全然正義でもなんでもないよね!?」


 どんどん勇者のイメージ像から離れて行っちゃうよ!


「何かさっきから騒がしいですね~。誰か近くに居るんですか~?」


 グリーダーと話してたら突然左の壁から声が聞こえた。……もしかしてさっきの声の人?


「隣か!? ……俺の獲物を奪ったのは貴様か!?」

「いきなりそんなこと言っても通じないよ!?」


 この人はいきなり何を言ってるんだろ。絶対通じないよね?


「ん~……? さっき食べたおつまみの事でしょうか……?」

「通じてる!? というか、魔物を食べたの!?」


 この壁の奥に居る人も普通じゃ無かったりするの!?


「俺の獲物を横取りしたのは貴様だな!? よくも俺の楽しみを!」

「突っ込むところそこなの!?」


 どう考えても魔物を食べちゃってる事を突っ込むべきだけど!?


「あ~……討伐依頼を受けた人ですか。それは申し訳ありません」

「申し訳ないで済むかこらあ! 魔物の代わりに、貴様を叩き潰してやるわあ!」

「魔物が居なかったのは仕方無いけど、だからって八つ当たりは止めようよ!?」


 無用な争いになる前に止めないと!


「食事の邪魔はされたくないですね。なので相手してあげます」

「上等だ! 魔物の代わりに貴様をぶちのめしてやるわあ!」

「なんですぐに戦う方向に持っていくかなあ!?」


 直後、壁の一部が文字通り消えました。岩壁があった場所の奥には……。


「食事の邪魔はされたくないので、先に叩き潰します」


 右手に30センチくらいの巨大フォークを持ち、身の丈ほどの長さのテーブルナイフを背負っている銀髪の女の子が居ました。

三話続きの第一話。少し長いが、それでも短い?

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