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強奪勇者物語  作者: ルスト
バグリャ
114/168

魔法陣を作りましょう

お待たせしました。

 一通り装飾品を買った私達はそのままバグッタの土管を抜け、この前魔法陣を作成した空き地に戻ってきた。

 相変わらず誰も居ないけど、本当にこの土管人が通るのかな?


「通らないとおかしいですよ。だって、この土管以外に道はないですよ?」

「まあ、それもそうだよね」


 って、今はそんなこと考えてる場合じゃないよね。加護をつける前に、魔法陣を作っていかないと。


「ええ。そしてあの砂糖水を飲みましょう。飲めば倒れないでしょうし」

「……うん」


 だけど、マディスのあの薬は甘すぎて飲めたものじゃないんだよね……。


「良い薬ほど飲みにくいものだって言うよ、ルーチェ?」

「あれはただ単にマディスが余計な物を入れただけだと思うんだけど……」


 濃縮した果汁と砂糖水と樹液の混ぜ合わせにポーションの調合だっけ?

 ……あれを飲みすぎたら絶対身体に悪いよ……。


「まあ、薬としての効果は確かですし、今回はあれを飲みましょう。倒れるよりはマシですから」

「……まあ、そうだよね」


 ジルの言うとおり、倒れるよりはマシなんだよね……。

 飲まなかったら二日も倒れてしまうくらいなんだから、あの薬は必要だと分かってはいるけど……。

 でも、すごく身体に悪そう……。


「それで、どの魔法陣から作るの? ここなんかお勧めだと思うけど」


 広げた本を持ってマディスが尋ねてきた。

 ……呪いの頁を見せて来たけど、さすがにそのページはやらないよ?

 その装備を着けた瞬間に目が飛び出てしまい、以後永久に目が上下左右に激しく動き回る呪いのかかった装備なんて、恐ろしくて使えないよ。


「なら、こっちはどうだ?」


 マディスの横からルシファーが本をめくり、とある頁を私に見せてきた。

 胃の健康……? なんで胃なの?


「日常的に何か叫んでいる気がしますし、必要ですよね、ルーチェさんには」

「あれだけ常識とか良心とか言ってたら、胃に穴が開いていてもおかしくないよね」

「やらせてるのジルとマディスでしょ!? というか、私別に加護に縋るほど追い詰められてないからね!?」


 そもそも戦いの方に意識向けてたら、冗談だけで済んでるうちは割とどうでもよくなるんだよね……。

 結構長い間一緒に旅していてるし、そのせいかもしれないけど。


「……胃の健康の加護が要らないルーチェさんなんて……私は悪夢でも見てるんでしょうか」

「ジルは私を何だと思ってるの!?」


 というか、さすがに連日似たようなことやってたらさすがに慣れるしそこまで気にしなくなるよ!

 割と長い間一緒に旅していて未だに最初と変わらない関係ってその方が問題だと思うし!


「何かの間違いですよこれは。ルーチェさんにこの話を振れば、まず間違いなく「お願い! 最近朝起きたらなんだか胃が痛くて、こっそり薬飲んでたんだけど……」とか言われると思っていたんですが……」

「それ完全に病気だよ!? 私別に病気持ちじゃないから!」


 頭を抱えて妙な事を口走るジル。

 ジルの中の私は一体どんな人間なの!?


「ひたすら常識を訴えることにそろそろ苦痛を感じていて、少し前から胃に穴が開きかけてしまっていて、最近はこっそり胃薬をマディスさんに処方してもらっていそうなイメージですよ?」

「何で毎日一緒に居るのにそう言うイメージが浮かぶの……」


 いくらなんでも、そこまで繊細な人間じゃないと思うよ……多分。


「ジル、ルーチェは胃薬なんて貰いに来たこと一度も無いよ? 一応作ってあるけど」

「作ってたの!?」


 いきなり小瓶に入った丸い薬を取り出すマディス。

 小瓶に貼られた紙には「胃薬」の文字が。


「ルーチェが縋りに来るかもしれないから必要になると思って」

「そんなに精神が弱かったら旅の途中でとっくに倒れてるよ……」


 まあ、それ以外の原因で倒れたり意識が飛んだことならあるけど……。


「魔法陣の本をなんとなく見ていて胃の健康の加護の文字を見つけたとき「これだ!」と思った私の期待を返してください、ルーチェさん」

「そんなの知らないよ! ……というか、そもそも何でこんなピンポイントなの?」


 胃だけって……。

 それなら、他の部分の健康もまとめてつけるよ……。


「身体の健康を祈る加護は……材料が無かったんですよ」

「材料が見つからなかったんじゃ作れないよね」

「……まあ、それもそうだね」


 魔方陣を刻んでも中央に触媒を置かないと意味が無いし……。


「じゃあ、これはどうだ? 今度は冗談で提案してるつもりはないが」

「幸運強化……?」


 というか、やっぱり胃の健康は冗談だったんじゃない……。


「そんなことで胃に穴が開くような奴が、何の躊躇も無く味方に魔術をぶち込むはずがないだろ。仮の身体とはいえ本気で殺されるかと思ったんだぞ?」

「それは私の方に平気で流れ弾放ってきたり強盗目的で出かけてたからでしょ!?」


 公園だった物や岩が私の方目がけて何発も飛んできたときは本当に死ぬかと思ったんだよ!?

 まあ、あんな酷い事になったのはあの時だけだったけど。


「そんな話あるの? 聞いたことないけど」

「私も知らないですよ? いつの話ですか?」


 そういえば、あの時はまだ私とグリーダーの二人だったよね。


「俺が召喚されて二日後だったかな。記念すべき最初のクエストで蛇を倒すことになったんだが、蛇と俺の一騎打ちで戦場となっていた公園が跡形もなくなったんだ。で、公園を破壊するほどの激戦を繰り広げた俺と蛇にルーチェが怒って俺ごと魔術で攻撃してきた」

「その激戦の際に公園だった物の残骸や攻撃の流れ弾が全部私の方に飛んできたんだよ!? 凄い速さで鉄骨が飛んで来たり氷の刃が迫って来て、本当に怖かったんだから!」


 というか、一発でも当たったら間違いなく死んじゃってたよ!


「一騎打ち? ルーチェさんは何もしなかったんですか?」

「完全に置き去りにされてたんだよ! グリーダーの足が非常に速くて全く追いつけなくて……」


 敵を見つけたグリーダーが突撃して行って私はあっという間に離されて、追いかけて援護しようとしたときにはグリーダーとドラゴンの攻撃の流れ弾や公園の残骸が次々に私の方に……。


「あまりに空気だったからその時のルーチェは戦力としても数えていなかったな。道案内だけしてくれればいい、と思っていた」

「ルーチェはその時何もしてなかったの?」

「だって、グリーダー一人でそこまでの道中の敵全部なぎ倒していて、私の出番全くなかったから……」


 虐殺って言葉がぴったりなくらいに敵を殲滅してたもん……。

 盗賊のアジトを一人で潰すとは思わなかったよ……。

 それに、確かにグリーダーは怖かったけど、同時にこの人に全部任せて後ろからついていけば私何もしなくていいよね?

 って、あの蛇退治の時まで思ってたし……。


「まあ、実際はこの世界の強敵には歯が立たなかったわけだが」

「そうなんだよね……。丸投げ状態でやってたら、途中で間違いなく倒されてたよね」


 って、話が脱線してるよね。

 幸運強化ってそもそも何?


「幸運強化は文字通りの意味ですよ。良い事が起こりやすくなるとか」

「良い事? ……なんだろ?」


 良い事って言われても、色々あるよね?


「まあ、そうなんですけどね。ただ、こういう効果は絶対損はしないと思いますよ」

「そうなの……? じゃあ、試しに羽飾りにつけてみようかな……」


 まあ、悪い効果じゃないなら何でも試してみるべきだよね。


「ええ。ただ……」

「ただ? 何?」

「材料の触媒が1つしかないから、その羽飾り以外に使えないんだよね。四葉の黄金クローバーなんて滅茶苦茶な物要求されてるからね」


 四葉の黄金クローバーって……。

 確かに幸運は招きそうだけど、そもそもそんなの何処にあるの……?


「ルーチェ。見つからないから幸運の象徴だったりするんだよ? ちなみに、これもいつの間にか手元にあったけど、僕が見つけたってわけじゃなくて家にあった標本に入ってたんだよ」


 マディスが取り出したのは仕切りで仕切られた巨大な箱のような物に様々な素材が入っている物だった。

 その材料の名前も書いてあるし、確かにこれは標本だよね。

 図鑑と違って現物が入っているし。


「これから出せば使えるんだよ。だけど、これしかないから文字通り最後の一個だよ」

「さ、さすがにこんな状態の物を使うのは……」


 せっかくの標本を使うのってちょっと躊躇っちゃうよ……。

 というか、誰が標本にしたのか分からないんだよね?


「うん。誰が作ったのかなんて分からないけど、僕の物じゃないから構わないんじゃないかな? 気づいたら僕の家にあったけど」

「ルーチェさん。どんなに強力な物も使わなければ持ち腐れになりますよ」

「まあ、ジルの言う事も尤もだけどさ……」


 いくら味方を窮地から救う特効薬でも、貴重品だから使えません! じゃ意味が無いからね……。

 もちろん、その標本の黄金クローバーも……。


「そう言う事。だから使おう、ルーチェ」

「……分かった。って、皆は別に欲しくないの?」


 特にジルは絶対欲しがりそうなんだけど……。

 幸運強化が何に影響するのかは知らないけど、間違いなく勝負事には強くなりそうだし……。


「ルーチェさんが使ってくれていいですよ。別に必要ないですし(……ルーチェさんがちゃんと身につけてれば、ですけどね。後はその羽飾りをつけたルーチェさんにちょっと賭け事に付き合ってもらえば……)」

「……ジル?」


 何でだろ。何かありそうな気がする……。

 ……まあ、考えても仕方がないか。

 呪いの装備品を私に持たせて悪戯しよう! とか考えているわけじゃなさそうだし。


「じゃあ、最初に作る魔法陣も決めた事ですし、さっそく作っていきましょうか」

「うん」


 幸運強化……一体どんなことがあるのかな?

 幸運強化の魔方陣の作成の作業の間、私はそんな事を考えていた。




「いよいよ魔力を流し込む作業ですね。どれに加護をつけるか決めました? ルーチェさん」

「こっちの白い羽飾りにするよ」


 この前作った炎の加護を与える魔法陣の時と同様、向かい合って立つ私とジルの間には幸運強化の魔法陣が刻み込まれた焼いた土の塊が置かれている。黄金クローバーももちろん使った後だ。

 後は魔法陣の中央に羽飾りを置いて、魔力を注ぎ続けて魔法陣を動かすだけなんだけど……。


「薬の用意は出来てるよ。魔力を流し込み終わったらすぐに飲んでね」

「すぐに飲ませられるように薬を持って傍で立っているから安心しろ」


 ルシファーとマディスが薬を持って私たちの傍に立ち、魔力を流し終えたらすぐにでも薬を飲ませられるように準備している。

 ……これなら、きっと大丈夫だよね?


「ええ、おそらく……いえ、確実に大丈夫なはずです」


 そうだよね。マディスの薬でちゃんと魔力も回復したし。

 終わったら二人がその場で飲ませてくれるだろうから、今度は大丈夫だよね。


「じゃあ、始めようか、ジル」

「ええ。やりましょう、ルーチェさん」


 そんな短い会話を交わし、私とジルは互いに魔法陣に魔力を注ぎ込み始めた。

 注ぎ込まれた魔力が魔法陣を起動させ、刻まれた魔法陣が白い光を放ち始める。


「後先考えなくていい。薬をすぐに飲ませるからきっと大丈夫だ」


 私の横に立っているルシファーがそう言って安心させてくれる。

 ……信じてるからね、ルシファー。




 ルシファーの声が聞こえた直後、魔法陣から放たれた光が中央に置かれた羽飾りに纏わりつき始めた。

 後は光が纏わりつかなくなるまで魔力を流せば終わるよね。

 もう少しで完成するね。


「……私が魔力を流し終わったら、すぐに薬飲ませてね」


 無意識に口から出たその言葉に、ルシファーが頷きを返すのが見えた。

 魔法陣から出てきた光が羽飾りを包み込んでいき、加護の魔力を与えていく。

 光が羽飾りを完全に覆いつくすと、魔法陣の光が徐々に弱くなっていく。

 加護が無事についたのか、魔法陣の光は完全に消えてしまった。


「ルーチェ」

「んっ……」


 魔方陣の光が消えた直後、横に立っていたルシファーがマディスの薬が入った瓶を私の口元に。

 口を少し開けて瓶に口をつけると、口の中がおかしくなりそうなほどに甘い液体が流れ込んでくる。

 その液体を喉に通すと、身体中に感じ始めた急激な脱力感が少しずつ無くなっていく。

 ……これで倒れずにすむかな?


「ジル、どう? 大丈夫?」

「ええ。何とか、倒れる事は避けられました」


 どうやらジルも倒れずに済んだみたい。

 私もジルも大丈夫だったし、少し休めばまた魔法陣の作成に戻れるかな?


「その前にこれの効果の確認だろ。ほら、つけてみろ」

「あ、そうだね」


 私の様子を見て大丈夫だと判断したルシファーが魔法陣の中央に置いた羽飾りを取って来てくれた。

 羽飾りは店で買った時とは異なり、優しい白いオーラを纏っている。

 その羽飾りを頭に着けると、私の身体にも羽飾りを覆っている白いオーラが纏わりついてくる。

 ……このオーラが加護の魔力だよね。幸運強化って、何が起きるんだろ?


「どうだ? 何か変わった感じがするか?」

「うっすらとだけど、自分の身体が白いオーラに包まれているような感じがするよ。でも、特に身体に変化はない、かな」


 暖かいような気がする……だけで、実際は特に何も変わってないんだよね。


「幸運強化の加護ですからね。身体を強化するような加護と違って、目に見えて効果が出るような物ではないですよ」

「その白いオーラも、僕たちには全く見えないからね」


 皆には見えないんだよね。

 ……本当にどうしてなのかな?


「まあ、そんなことはどうでもいいじゃないですか。そんな事より実験ですよ実験。今すぐやりましょう、ルーチェさん」

「……まあ、私も効果が気になると言えば気になるけど……」


 ジルが異常にやるきなのはどうしてなのかな……?

 確かに、私も加護の効果は知りたいけど……。

雑談で話がずれたりすることが多い。というか、確実に話がずれる。

しかしタイトルや本題からずれるので修正せざるを得ない。

なら一度くらいは雑談「だけ」でどこまで書けるのかやってみたいが、さすがにそれは出来ない。

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