表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
強奪勇者物語  作者: ルスト
バグリャ
113/168

素材を買いましょう

随分遅れてしまいました。申し訳ありません。

「ねえ。この後どうする?」


 鍛冶屋で防具をもらった私達。

 ただ、服はまだ完成すらしていないから、やることが無くなっちゃった。


「そうですね……。魔法陣でも作ります? 装備品が必要になりますけど」

「地下道の魔物討伐……は防具が揃っていない時点でまだ早いな。この町の行っていない場所でも探索するか?」

「鉱山なら鉱石くらい取れるよね? 行ってみない?」


 ……見事にばらばらだね。


「まあ、良くある事でしょう? それはともかく、どうします? ルーチェさん」

「そうだね……」


 探索も良いんだけど、装備が出来た後のことを考えると加護をつけるために魔法陣を作るのがいいんじゃないかな?

 幸い、マディスが魔力回復用の薬も作ってくれてるし。


「魔法陣ですね。じゃあ、その前に装備品も買っておきましょうよ。加護をつけるにしろ、呪いをかけるにしろ、実験に使う装備が必要になるでしょう?」

「そうだね。……じゃあ、その辺で装備を買っておく?」


 武器と防具なら一応持ってるけど、実験に使えるほどたくさんは持っていないからね。


「そうですね……。首飾りとか腕輪が売ってると良いんですけど……」

「ねえ、ジル。どうして装飾品なの?」

「え? だって、贈り物に武器や防具は似合わないでしょう? まあ、そう言うのを送られて喜ぶ人が居るかもしれませんが」


 ……贈り物? 何考えてるのか知らないけど、あんまり変な物作らないでよ?


「大丈夫ですよ。変な事には使いませんから」


 ……一体何に使うつもりなんだろ?

 贈り物って言ってるけど……。誰にあげるの?


「まあ、気にしないでまずは材料にする装備を探しましょうよ、ルーチェさん」

「……分かった。行こうか」


 気になるけど、多分聞いても教えてくれないよね……。

 まあ、ジルの事だから変な事には使わないと思うけど。


「それで、どこの店に入るんだ? 町のあちこちに店があるぞ」

「装飾品を売っている店を探しましょう」


 装飾品……でも、何を買うのかな?

 とりあえず、手当たり次第に探し回ろうか?


ーーーー











「へいらっしゃい! うちの腕輪は一級品だよ!」

「どうだいこの装飾! この店の指輪は最高級品だ!」

「リボンにするか、バンダナにするか! それは自由だ! だがな、頭の飾りも必要だ! というわけで、どうだいこのリボン!」


 装飾品を売っている店を探して町を歩いていたら、呼び込みの声が聞こえてきた。

 声のした方を見てみると、装飾品専門店と書かれた看板を掲げた店が。

 店の外で呼び込みもやってるみたいだけど、三人の男性が別々の商品を掲げて宣伝している。


「頭から足まで装飾品を揃えています……ちょうど良さそうですよ。ここで色々見ていきましょう」

「何が売ってるのかな? 楽しみだね~」


 そんな会話を交わしつつジルとマディスが店の中に入って行く。

 二人を追うように私とルシファーも店の中に足を踏み入れた。


「うわあ……様々な物が売ってるね」

「腕輪にネックレス、モノクル、リボン、羽飾り……本当に着飾るための物ばかりだな。戦いに使えそうなものが見当たらない」


 ルシファーはこういった物が珍しいのか、店のあちこちに目を向けている。

 えっと……ジルとマディスは……。


「これなんてどうでしょう? 首輪ですよ」

「首輪に「着けた者は発情期の犬のようになる」って呪いをかけて誰かに着けたら面白そうだよね~」


 って、いきなり物騒な会話しないでよ!

 というか、呪いの魔法陣を本当に作る気なの……?


「当たり前ですよ。呪いの装備品は自作しますよ」

「悪い事をして一切反省しない人間に着けたら面白いんじゃないかな?」

「だからなんでそんな物ばかり考えるかな……」


 そんな物作らなくても良いじゃない……。

 まあ、反省しようともしない人間に強制的につける拘束具としては使えるかもしれないけど……。


「何言ってるんですかルーチェさん。呪いで悪い人がもがき苦しむ姿こそ美しいんですよ?」

「全然美しくないよ!? むしろ見ていて痛々しくない!?」


 というか、いくら悪人相手でもやっていい限度があるからね!?


「限度なんて要らないじゃないですか。この頁に書いてある呪いとか良さそうですよ」

「やりすぎたらむしろ私たちが悪人になるから! だからそんな物騒な呪いの書かれた頁を見ないでよ! 後マディスも材料用意しない!」


 ジルが見ていた頁には「身体を徐々に腐らせて激痛を生じさせ、最終的に身体を完全に腐らせて生きたままゾンビ状態にする」呪いの魔法陣の作り方が載っていた。

 こんな呪いの魔法陣を作って誰かに呪われた装備をつけたりしたら、確実に私たちが悪人になっちゃうよ!


「毎度毎度そうやって行動を制限されるとつまらないですよ。良心なんて捨てて、目も当てられなくなるような酷い呪いをかけてみても良いじゃないですか」

「良心なんて要らないよ? 足を引っ張るだけだから」

「いくら足を引っ張るだけだとしても、だからって良心を捨てて非道な呪いを平然とかけたりするようになったら、それこそ最悪だよ!」


 人を救うどころか災厄をばらまくなんて!


「そんなの、装備した方が悪いんですよ。贈り物として贈った物に呪いがかかっていたとしても装備した人の責任です」

「だよね~。贈り物だからって装備した結果呪われたんだもん」

「それはもうその人の責任じゃすまないからね!? 明らかに贈り物を送った方が悪いよ!」


 贈り物が呪われていたなんて考える人まずいないし!

 というか、そんなの考えたくないし!


「そうですか? 気に入らない相手の家を潰すために呪いのかかった装備品を送り付けるのはヒローズではよくあることですよ。ね、マディスさん」

「そうだね~。禍々しい贈り物がよく家に届けられたよ。まあ、その場で捨てちゃってたから何にも起きなかったけど」

「ヒローズの荒れっぷりが心配になるよ……」


 まあ、この二人の事だから冗談なのかもしれないけど。

 面白そうだからって理由だけで酷い呪いのかかった首輪を作ろうとしてるくらいだし……。


「良いじゃないですか。人生は楽しんだものの勝ちですよ?」

「規則とか良心に縛られてたら、人生が非常につまらない物になるからね~。楽しんだ方が良いよ?」

「だから楽しむのにも限度があるんだってば!」


 二人の言う「楽しむ」は明らかに行き過ぎてるんだよ!


「……なあ、ルーチェ。リボンをバンダナにするってさっき店の外で聞いたが、どうやればいいんだ? というか、こんな紐そもそもどうやってつけるんだ?」


 二人の相手をしてたら、ルシファーが赤色のリボンを持ってきた。

 店に入った時も物珍しそうにしてたけど、ルシファーはこういうの見たことないの?


「あるわけないだろ。そもそも、兜をかぶることしか考えてなかったんだ。頭に兜以外の物をつける事すら考えていなかった」

「じゃあ、貸してくれる? つけてあげる」


 渡されたリボンを持ってルシファーの後ろに回り、ルシファーの額にリボンを巻きつけ、頭の後ろで回したリボンを結ぶ。

 ……どうかな?


「……なんだか妙な感覚だな。こういうのをつけたこと自体無かったからか、落ち着かない」


 ルシファーはそう言っているけど、赤色のバンダナ、なかなか似合ってると思うけどな。


「そう言えばリボンはバンダナにも出来るって言ってましたよね。ルシファーさん。赤色のバンダナ、似合いますよ」

「うーん、腕輪を買おうと思ってたけど、バンダナもこうしてみると悪くなさそうだよね~」


 だよね。買っちゃう?

 ……まあ、防御効果は無い物と思って良いけど。


「……一応、買うだけ買おうか。他も見てくる」


 買う事を決めたらしく、バンダナを外して私に渡すルシファー。

 そのまま他の物も見に行ってしまった。


「それで、二人は何を買うのか決めたの?」

「一応、首輪と腕輪を買おうかと」

「僕は……まだ決まらないかな。で、ルーチェは?」


 私? ……そう言えば、まだ何も見てないや。


「ルーチェさんも何か買いましょうよ」

「うん。分かってるけど……」


 でも、いざこうやって見たら、今度は何を買おうか悩んじゃうよ……。

 モノクル、リボン、腕輪、指輪、ティアラ……本当に色々な物が置いてるんだもん。


「まあ、私も自分がつける物は考えていなかったんですよね……。呪いをかける方ばかり考えてしまって」

「……僕も同じ。というか、何か欲しいかって聞かれても特に思いつかないんだよね~」


 私もこういう物を買う事は考えてなかったしね。

 加護をつければ使えるから買っておこうと思っただけだし。


「でも、何かしら買うんですよね?」

「うん。加護をつけて使えるようにすれば、ちゃんと使えるようになるでしょ?」


 まあ、それが無いと文字通りただの装飾品だから、すぐに使えなくなるかもしれないけど。


「……じゃあ、ルーチェさん。こういうのどうですか?」

「え? 何これ?」


 ジルが手渡してきたのは大きな腕輪……腕輪?

 腕輪にしては大きいような……。

 それに、何この棘……針山みたいにびっしりと生えてるけど。


「首に着けるらしいですよ。これをつけておけば、首をへし折ろうとした相手が逆に返り討ちになるみたいです」

「まあ、これだけびっしりと棘が生えていればね……」


 ジルに渡された首輪は、リングの外側にびっしりと鋭い棘が生えていて、とても握れそうにない。

 こんな物つけてる相手の首に掴み掛ったら、それこそ手が傷だらけになるだろうね。


「それで、どうです? 着けてみませんか?」

「うーん……確かに、防御能力はありそうなんだけど……」


 でも、そんなにびっしり棘が生えた首輪、装備したくないよ……。

 使い方間違えたら自分の身体に刺さるかもしれないし……。


「そうですか? では、これはどうですか?」


 次に渡されたのは、根元で二つに分かれている一本の棒。

 ……どうやってつけるの?


「こんなふうに、髪に挿すみたいですよ」


 そう言いながら自分の前髪を挟むようにその棒を差し込むジル。

 前髪が棒で固定されて落ちてこなくなっている。


「戦闘の時に髪が乱れると困るからそういう時には便利かもね。ジルは髪長いし」


 だけど、私は髪を伸ばしているわけじゃないから、使わないかな?

 ……私は、腕輪か指輪にでもしようかな?


「まあ、確かにルーチェさんの髪の長さだと髪留めは要らないですよね……。頭を激しく動かしても乱れそうにないくらい長さですし」

「あんまり長いと、邪魔になっちゃうからね」


 それに長い髪の毛って、洗うのも大変だから……。

 髪全体を洗おうとするとどうしても時間がかかるし……。


「まあ、確かに多少の時間はかかりますけどね。けど、長い髪の方が良いと思いますよ?」

「でも、ね……。なんだか色々不便な気がしてきちゃって……」


 大体、常に戦いをする世界に居ると、どうしても不利になるようなことは出来ないよ……。 


「余裕が無いはずの戦闘中に誰がするのかは分からないですけど、確かに髪を掴まれたら困りますよね」

「でしょ?」


 髪が長いと、それだけ掴みやすくなっちゃうわけだし……。


「まあ、その話は置いておきましょうか。今は何を買うのか決めないと」

「そうだね。話してたら決められないや」


 ジルとの話を切り上げ、私も装飾品を見て回ることにした。

 ……何か良い物無いかな?






ーーーー






「……でも、やっぱり目ぼしい物って無いよね。というか、そもそも加護をつけるまで装飾品をつけるって発想が無かったし……」


 あれから店の中を見て回っているけど、やっぱりどれを買えばいいのか決められないでいた。

 指輪なんていいかも、と思ったけど、指輪は宝石をそのままカットしました! って感じの物ばかりで、値段も馬鹿みたいに高い。

 それならとネックレスやイヤリングも見てみたけど、こっちもこっちで宝石がたくさん埋め込まれてるやたら豪華な物しか売ってなかったし……。

 貴族の人ならそう言うのを喜んで買うんだろうけど、私にはちょっと合わないかな……。

 けど、リボンもなんだか微妙だし、やっぱり妥当な腕輪にしようかな……。


「何かお困りですか、お客様?」

「え?」


 突然声をかけられたので振り向くと、何かの羽を象った飾りを頭につけた女性が。

 ……羽飾り? 悪くないかも。これにしようかな。


「? どうしました?」

「羽飾り、店のどこにありますか?」


 というか、このままだといつまで経っても決められなさそうだし、さっさと決めてしまわないと!


「羽飾り……ああ、これですか? あちらの角にありますよ。ついてきてください」


 歩き出した女性についていく。

 案内された場所には、羽飾りがいくつか陳列されていた。


「ここにあるのが基本的な物になります。上質な物でしたら宝石を散りばめた物もございますが……」

「あ、いえ。ここの物で良いです」

「そうですか。それでは……」


 宝石を散りばめた羽飾りって……。

 まあ、貴族の人ならそういうのが大好きなのかもしれないけど。

 さてと……。


「どの色の物を買おうかな?」


 並んでいる羽飾りは赤、青、緑、水色、紫、黄色、黒、白の八色。

 ……また悩んじゃいそうだよ……。


「うーん……」


 黒色か白色が良いかな?

 どっちにしよう。

 どっちも良いと思うんだけど……。


「ルーチェさん? まだ探してたんですか?」

「え?」


 後ろから聞こえた声に振り返ると、左手に様々な装飾品が入った籠を下げたジルが立っていた。

 ……って、どれだけ買うの!?

 10個以上入ってるじゃない!


「ええ。だって決まりませんし、いっそ衝動買いでもした方が良いかなと」

「高い物買ってないよね……? 宝石付きのネックレスとか見たけど、すごく高かったよ」

「大丈夫ですよ。ちゃんと値段は見てますから。それより、決めないんですか?」

「ああ、うん。……もう両方買っちゃうよ」


 黒色と白色の羽飾りを棚から取ってジルの持っている籠に入れる。

 ジルみたいに考えてればここまで悩まなくて済んだ気がする……。

 もっと気楽に考えた方がよかったのかな?


「ええ。気楽に考えましょうよ。というか、加護をつけたらどうせ色が変わったりするんでしょうし、悩むだけ損ですよ」

「あ……!」


 ジルのその言葉で、炎の魔法陣に置いた盾が真っ赤になっていたのを思い出した。

 ……もしかして、色は気にするだけ無駄だった?

動物に送り付けたプレゼントがゴミだったとしても、それはゴミと言う名のプレゼントである。

同様に、呪いのかかった装備品がプレゼントだったとしても、それはれっきとしたプレゼントである。

言い訳? 違う。これは真理だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ