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強奪勇者物語  作者: ルスト
テラピア
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なりきり傭兵との戦いに決着をつけましょう

「さあ、なりきりアトラムよ! その力を貸せ!」


 そう言って傭兵が取り出した人形を胸に取り付けた瞬間、傭兵の姿が人形の物に変身しました。って、何なのそのアイテム!?


「!?」

「くくく……これが私の本当の力よ! さあ、死ぬがいいわ!」


 ……声がまったく変わらないのは本当にどうしようもないのかな? 見た目はツインテールの女の子なのに、声がさっきの傭兵の声そのままだから違和感が凄いよ。


「何を使おうと同じことだ! くたばれ!フリーズブレイバー!」


 そしていきなり攻撃するグリーダー。まあ、この人の頭には正々堂々なんて言葉は無さそうだから仕方ないんだろうけど。氷刃が傭兵の方に向かっていきます。


「効くかあ! 炎舞連刃!」


 迫ってくる氷の刃に対し、炎を纏ったかかと落としからの斬り払いで対抗する自称傭兵。……ただの傭兵がこんな事出来ないだろうし、本当にこの人何者なの!?


「ロックスコール!」


 傭兵の攻撃のすきをついてグリーダーがまた岩の雨で押しつぶそうとしました。でも、さすがに二回目は効かないんじゃないかな?……あれ? 岩でよく見えないけど傭兵の下に出てきた円陣は一体何?


「ふん! 二度も同じ手は……」

「お別れだ! サンドストーム!」


 円陣が光ったと思いきや、その直後に傭兵を砂地獄が襲いました。って、足場が崩れかけてる状況でそんなもの撃ったら……!






 ボロボロボロボロボロ……!


「ぬおおおおおお!?」

「貴様あ! またしても俺を巻き添えに……!」

「足場が崩れて……きゃああああああ!」


 砂地獄によって足場が一気に崩壊し、私たちはまとめて奈落の底へ落下することに






 ドサッ


「あ……れ? ここって、私達が居た平原……?」


 異空間が崩壊してそのまま落ちるかと思ったら、元の世界に戻ってこれたのかな? 周りにはさっきの破片みたいなものが落ちてるけど、テラピア平原に帰ってこれたみたい。


「貴様あ! 生かして帰さん!」

「悪は私が叩き斬る! この剣にかけて!」


 安心できたのも束の間、今度はテラピア平原で戦うみたいです。……乱入してでも倒した方が良いよね?


「無限に湧き出る光の爆発にて永遠にもがき苦しむがいい! シャインクラスター!」

「魔法なんざ当たらなければどうと言う事は無い! 隙だらけなんだよ!」


 傭兵が唱えた魔法でグリーダーが居る場所を狙ってものすごい数の光の小爆発が起きてるけどグリーダーは動き続けてそれを避け、そのままがら空きの本体に斬り込んで……


「一閃!」

「ぐはあああ!?」


 攻撃して……グリーダーが傭兵から離れた! 今なら……


「氷に飲まれ凍結せよ! ……フリーズ!」


 範囲系の氷結魔法で傭兵を凍らせて倒せるはず!


「ぬおお!? おのれ……侮ったか……!」


 よし! 傭兵は凍った! これで……!


「アイテム強奪! せいっ!」

「ちょっと!?」


 凍った傭兵目がけてグリーダーが攻撃して、傭兵を覆った氷を無理矢理破壊しちゃったよ!?


「ぐはっ……!」

「戦利品獲得! もはや貴様に用は無い! 消えろ!」


 そのまま傭兵はグリーダーに殴られてどこかへ飛んで行っちゃった。……あれ、飛んで行った傭兵の姿が元に戻っていってる? そのまま遠くに飛んで行っちゃったけど。


「よし! これでアイテムは俺の物だ! こんな人形別に要らんが、奪っておいて損は無いだろうな!」

「要らなかったら取らなくていいよね!?」


 要らないって思ってる時点でわざわざ氷を破壊してまでその人形を奪う必要ないと思うんだけど!


「何を言う。要らない物でもあえて戦利品として持っていくこともまた、冒険の基本だぞ?」

「そんな基本聞いたことも無いけど!?」


 本当にこの人の常識はどうなっているんだろ。民家を襲うとか言ってるし、普通じゃないよね?


「何を言う。俺ほど素晴らしい常識人はまず居ないぞ?」

「一体グリーダーのどの辺が常識人なのかな!?」


 物を強奪することが常識なんていくらなんでもあり得ないよね!?


「何を言うんだ。民家を襲撃して集めたり、戦闘中に敵から掠め取ったり、倒した相手から剥ぎ取ったものを冒険者が売ることで世界は回っているんだぞ?」

「冒険者が敵や一般人から奪った物が売られることで回る経済なんてそれこそ嫌だよ!」


 そんな経済体制絶対認められないよね!? 冒険者が強奪することで回る経済なんて酷いよ!


「これほど強者に優しい経済体制はそうそうないんだがな……この世界には存在しないのか。つまらん」

「つまらんとかいう以前の問題だよ!? 弱者に厳しすぎるのは十分問題だからね!?」


 そんな経済体制だったら、弱者はただ奪われるだけになっちゃうじゃない!


「それが良いんじゃないか。世界の問題を勇者に丸投げするだけの愚か者から奪って何が悪い?」

「世界の問題を勇者に丸投げって、それが一応勇者の役割でしょ!?」


 だって、一般人には戦う力すらないって言うし……。勇者物語でも勇者になるためにはその力で一般人を守りましょうって……。


「一般人を守ってもアイテムを寄越さないことが多いから、魔物に襲われていても無視するのが得策だぞ?」

「確かに守ってあげても何もくれない人もいるかもしれないけど、だからってそんな酷い事言わないで助けてあげようよ! 一応勇者やってるんだし!」

 その頃、グリーダーに殴り飛ばされていった傭兵はどこかの海岸にたどり着いていた。


「まだだ……! 私は……こんな所では死なぬぞ! 次こそは! もっと強力ななりきりの力と私の力をもってして倒して見せるぞムサシよ!」


 そして傭兵は立ち上がり、しばらく立ちすくすと天を仰いで叫びをあげた。


「どこにいるかは見当もつかぬが必ず探し出して見せるぞムサシよ! そして……また会おう! さらばだ!」


 ムサシに再会を誓った傭兵はそのまま海の上をあてもなく走りはじめた。彼がムサシに再開する日は来るのだろうか。

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