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差別ー壊れる国

学園長が差別撤廃の為に行ったいろんな事の結果が出てくる回です。


僕は周りのみんなが和気藹々とお昼ご飯を食べ出して居る中、

ただの一人、突っ立て居た。


常に侍女として浮かべて居る僕の無表情のまま、


ただ、目だけを軽く、見開いて驚きの表情をして居るんだと思うね。


なんてことだろう、

今までの僕の『日数式無表情グランプリ』の更新が止まっちゃったね。


いや、

そんな事はどうでもいいんだよね、

問題は今、貴族の、それも侯爵家の嫡子くんの口からとんでもない声が聞こえたんだよね?


僕は今一度その子、

マジキムくんが言った言葉を胸の中で反芻してみる。


ーー使用人とか貴族とか関係ないだろ?なんでそんなに卑視すんだよ?ーー


あーあ、

次代の政を司るであろう貴族の子がこんな事を言い出すだなんて…


この国の未来は暗いね、


学園長は差別を無くしたいんじゃ無くて実はこの国を滅ぼしたいのかもしれないね。


そしてその当の僕よりも年齢差もあってか頭一つ分小さなマジキムくんは僕を半ば睨みつけながら言う。


「お前…えと、デカラビア…さんだっけ?あんた、この能天気バカのリトを育てたんだろ?」


うん?

それが何だって言うのかな?


それとバルベリトくんをバカと言うのは事実だからともかくして、

使用人にさんとか付けちゃだめだよ?

少なくとも公の場ではさ、


…なんてこったい、ここは学校じゃないか、立派に公の場だね。


「マジキム様、私(わたくし)ども使用人には敬称など…」


まがりなりにも僕は『プロ』だと自認して居るからね。


だからその後に「恐れ多く…」

的な事を続けようと思ったんだけどね。


その前に遮られちゃったよ。


「それだよ!別に俺に『様』なんかいらないって」


だって、

半分くらい口癖みたいな物だもん。


今更直せなんて言われても困るし、

これからも直すつもりなんかないよね?


「私(わたくし)ども使用人はその様な事恐れ多いのです」


だから僕だって意地を張るよ?

貴族の若造如きにどうこう言われてころっと変わる様じゃプロの使用人とは言えないんだよ?


使用人にプロもへったくれもあるのかどうかは知らないけどさ。


「なんだよ!おい、リト!本っ当にこいつがお前の育ての親かよ!」


マジキムくんはバルベリトくんの方に向き直って僕を指差しながら聞く。


うん?

なんで僕がバルベリトくんの育ての親じゃないかと疑われちゃってるのかな?


心外だなぁ、

僕としてはこの子の父親、母親よりかは身近な存在だったと自負してるんだけどね?


「え?あぁ、もちろん」


突然話をふられたバルベリトくんは困惑しながらも応える。


おい、なんで一人だけでご飯を食べて居るのかな?


あぁ、僕も早くご飯食べたいんだけどさ?


「なんっで、こんな奴が育ててリトみたいになんだよ?」


訝しげな目線をメイド服に送られても帰ってくるのは光の反射ぐらいだと思うよ?


それにさ、

バルベリトくんは元々前世の体験が丸々残っている子だからね。


そんなに悶々と悩んだところで答えなんか出てこないよ、マジキムくん?


「…それに、今、私(わたくし)は食べる物を持参して居りません、共に食卓に着いたところで皆様を不快にさせ…」


言った所で僕は続きの言葉を呑み込みざるおえなかった。


そりゃあ、突然胸ぐらを掴まれても喋り続けれればそのヒトは軽く勇者だと思うね。


「お前…なんでそんな…」


で、も、

僕は何て反応すれば良いのかな?


突然男の子に胸ぐらを掴まれるだなんて中々無い様な新鮮な感情ではあるんだけどね。


ベタに「きゃーえっちー」とでも言えば良いのかな?


キャラが壊れそうだからやめておこうかな?

それはそれで非建設的な方向だろうからね。


まぁ、ピタゴラスの定理をアニメのキャラクターがプリントされた定期入れに説くよりかは幾分まし…


って、

こんなわけのわからない揶揄にもやって居ないたとえをすると言う事は僕もだいぶ混乱して居るみたいだね。


端からみれば多分無表情に僕の胸ぐらをつかんで居るマジキムくんを見下ろして居る事になるんだろうけどさ。


「マジキム様…」


僕は取り合えずマジキムくんの名前を呼ぶ事にした。


何を話すかは全然決まって居ないけどね、まぁ良いよね?


「差別を…格差を生み出したのは誰かご存知ですか?」


よし、

先ずはこの世界の宗教的観念からせめてみようかな?


流石にね、

神様を否定するには一貴族の坊ちゃんには荷が重いよね?


対するマジキムくん、

ただ眼光は鋭く、無言で首をプルプルと振るう。


水から上がって直ぐの犬みたいだね。


「それは、他ならぬ、全知全能たる神様なのですよ…」


事実、僕の前世での聖書にも神様がアダムの下にイヴをおいたからね。


「…しってる…」


気弱げに、俯きながら応えるマジキムくん。


心なしか僕の胸ぐらを掴む腕からも力が抜けてくみたい。


うんうん、よかったね最低限の教養はあるみたいだしね。


だというのに、

マジキムが良き理解を示してくれたと言うのに!


空気の読めない僕のご主人様と来たらなんて言う事だろうね、

事も有ろうに神様を否定しちゃったよ。


「そ、そんなのおかしいじゃねぇか!神様って良い奴じゃねぇのかよ⁈」


うん、バルベリトくん、

君は本当に領地で僕が勉強を教えて居る時に、

引いては子守唄がわりに聞かせていた神話をどう聞いていたのかな?


僕だったら既に聖典を一言一句逃さず言える様になる程君に教えているとおもうんだけど?


「…バルベリト様…差別とは、格差とは、ただの悪ではありませんよ、悪は悪でも…」ーー「必要悪ですよ」ーー


僕はもしかしたら今、微笑んで居るかもしれない、

それも儚げに。


マジキムくんの胸ぐらを掴んで居た手が完全に力無く離される。


バルベリトくんの黄金色の瞳を所在なく揺れて居るのが見える。


今思えば教室中の皆がこちらをみて居るのに気がついたね。


それでも僕はいつもの無表情を決め込んだ。


本当はあくびをしたい欲求を押し殺して居るんだけどね?


“天邪鬼ね、本当に”


『リゼ』が半ば呆れた様に僕に言ってくる。


違うよ、

そう言うわけじゃないさ。


僕はただ、貴族の様に選ばれた存在でもないし、

ヒトの様に生きていく資格のある生命じゃない。


所詮、

僕等カケラは本体によって作られたバックアップ。


魂に、心に大いなる欠陥を持った不完全な生命にすぎないんだよ。


そう、

僕にはただ生きていくだけの資格は無いのさ。


まさに赤の女王の定理だね、

その場に留まる為には走り続けなければならない。


僕ら、未来が初めから運命(シナリオ)に用意されて居ない不特定因子は存在する為には進化を死続ける必要があるんだ。


「じゃあ…あんたは…」


うん?

マジキムくんはまだ僕に用があるのかな?


「貴族が無茶苦茶な事を命令したら、それをマモんのか?」


マジキムくんの紅蓮に輝く瞳が僕を捉える。


きっとこの色も僕が辛そうと思う理由の一つだったりするのかもね。


「御主人様や敬うべきヒトの命令を遵守する…それが、使用人の歓びであり、務めです」


僕はきちっと、返したね、

我ながらの完璧な答えに感動すら覚える程だよ。


しかし、

どうやら今の貴族な子はそうはいかないって言うのがデフォルトなのかもしれない。


マジキムくんは予想の斜め上を行く答えをさらに返してくれたね。


「なら、俺があんたに命令するぞ、一緒に飯を食え!」


は?

僕は世界の時が止まったのを感じたよ。


なんでそう成る訳?

中心極限定理並みに意味が不明なんだけど?


なんでそんな命令がくるの?


「おい、聞こえなかったのかよ?」


なんか高圧的になるマジキムくん。

そうすれば僕が言う事を聞くと思って居るのかな?


間違いではないけれどさ。


「畏まりました」


僕は内心にてため息を吐きながら憂いて思う。


まぁ、自業自得、だね。

因みにどうでも良いけれど自業自得と言うのは考え方は元々仏法の物なんだね。


迷走した神様はつい最近これをしったらしいよ、

遅れて居るね。


そんな事はどうでも良いんだけどね、

僕はどうやらありもしない昼食を食べる事を王権の盾たる貴族様のお坊ちゃんに命じられたからね。


“まったく…って、『アシュタルト』!危険度A級プラスが来たわよ!”


うん?

僕が様々な事を自身の使い魔にツッコム前にその時は来た。


あぁ、めんどくささの嵐、

この学園に君臨する秀者。


差別を心より嫌う珍しい人生を歩んで来た27歳と言う事が最近わかった女性。


「言うじゃ無いか、給餌」


学園長、そのヒトがそこに居た。


南無阿弥陀仏、一難去ってまた一難とはこの事を言うのかもしれないね。




クリエイト様、七不思議系、アイディアありがとうございました!



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