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「余命、6か月です」

 そう言われた時、当事者ってどんな反応するんだろう。泣きわめいたり、悲観したり、どうにか治してくれと懇願したり、あるいは自分の運命を否認したりするんだろうか。


 余命6か月ですと宣告された私の反応は、「はあ」だった。特に思ったことはない。ああそうですか、の「はあ」。我ながら間抜けな返事をしたと思う。


 近頃体調が悪いな、夏バテかなと思って行ってみた病院で「大きな病院へ行ってみてください」と言われ、大きな病院に行ってみたら「余命6カ月」。何かの冗談かと思ったが、先生の真剣な顔を見ると本当のことらしい。よくある医療ドラマの告知シーンみたいに、自分のレントゲン写真を見せられてここにある影がどうのこうのと説明されたが、素人目にはよく分からなかった。


 とりあえず明確なことは、私の命は残り少ないらしい。



 幼いころに父が、大学1年生の時に母が死んだ。それから2年もたたないうちに、今度は自分だ。兄弟はいないので、私の家族はこれで全滅。運命の神様も結構皮肉だと思う。

 余命半年と宣告されてすぐに、私は大学とバイトを辞めた。入院する気もなければ延命する気もない。残り半年、今まで貯めてきた貯金でのんびりと暮らそうと思った。



 私が自分の運命に驚いたり悲観したりしなかったのは多分、生きることにそんなに執着していないからだろう。夢も何もなくだらだらと生きてきて、いつ死んでもいいと思ってた。死のうと思ったことは何回もある。だけど私は意気地なしだった。手首を切ろうとしたこともあるけど、怖くて少ししか切れなかった。血がうっすらとにじんで終わり。それ以上深く切る勇気はなかった。その傷はあっという間に治ってしまって、今はもう跡形もない。

 高いビルを見るたびに飛び降りる自分を想像するけどやったことはない。ネクタイで首を吊ろうとしたけど、少し体重をかけただけで怖くなってやめてしまった。沢山薬を飲むのも考えたけれど、胃洗浄が苦しいというのを聞いてやめた。白線の外側で電車を待つけど、その向こうへ行ったことはない。車の前に飛び出すのは、運転手がかわいそうだとかなんとか理由をつけてやろうとしない。

 運よく事故で即死できたらいいのに、と思ってたくらい。


 要するに私は、かなり意気地のない死にたがりだった。



 だけど余命6カ月だと言われても、特にうれしくもなかった。気合いを入れずにやっていたゲームがゲームオーバーになっても、悔しくないみたいに。


もちろん私が死んだら、「コンティニュー」なんてできないけれど。

 


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