悪夢夜(あくむや)~聞エル?~
第三弾でました!! ごゆっくりお楽しみください。
俊介は朝、教室で奇妙な話を聞いた。
「近所の日比吏神社で、幽霊が出るらしいよ。あったら最後、もうこの世界には戻れないんだって」
幽霊なんてものはいないと思っていた。 ただの迷信だろうとしか思っていなかったのだ。その日は別に嫌な時間割ではなかったのであっという間に一日が過ぎていく感じがした。
俊介はサッカー部の部長をしている。そのため皆が帰った後、部屋の点検とボールの空気点検を行ってから帰るのだ。今日はいつもより遅くなってしまった。時計を見ると既に六時半を回っており、太陽がそろそろ沈もうとしていた。本当はバスで帰った方が楽なのだが、残念ながらバスは行ってしまったばかりだった。この時間帯は一時間に一本しか通らないので次のバスを待つのは流石にないなと思い、しぶしぶ歩き出した。近道をしようとして、日比吏神社に入っていく。ふと朝の事を思い出した。本当に幽霊など存在するのだろうか。考え、入るのをためらっていたが、結局幽霊はいないと判断し中へと入って行った。神社の裏にはちょっとした丘がある。この丘を越えれば家まですぐだ。木でできた階段があり、それをある程度登ると今度は下りになる。その単純な道を行こうとしたその時だった。
「聞エル? 僕ノ声ガ聞エル?」
少し高い少年のような声が聞こえた。辺りを見渡すがそれらしき影はどこにもない。俊介は空耳だろうと勝手に解釈し、走って階段を上って行った。不意に誰かが横を通り過ぎた。足を止める。目の前には白シャツに短パン姿の男の子が立っていた。前髪が顔にかかっていて顔を確認することはできない。ただ泣いている事だけが分かった。鼻をすすり、くすん、くすんと泣いていた。俊介は気味が悪くなりその子の横を通りすぎようとした。
「オニイチャン、待ッテ」
呼び止められ、腕を掴まれる。俊介は吃驚して、少年の手を振り払う。
「何なんだよ、お前」
俊介がそう言った時だった。足元の土がボコリと盛り上がり無数の手が這い出てきた。その手は俊介の脚を掴み歩けないようにした後、ニュルリと伸びて腕を掴み、完全に彼の動きを封じた。俊介は逃げようとして必死にもがくが手は離れない。少年は前髪を両手でかき上げる。そこにはあるはずの目と鼻がなかった。あるのはニヤリと笑った耳まで裂けた口のみ。俊介は更にもがく。少年はゆっくりと彼に近づいてきて口を大きく開けると笑いだした。
「遊ンデヨ、遊ボウヨ、オニイチャン」
少年はそう言うと俊介の頭を大きな口でくわえた。そしてズルリ、ズルリ。と彼を飲み込んでいく。声をあげられぬまま、彼は少年にのみこまれてしまった。そしてそこに残ったのは――――
彼の鞄と靴だけだった……。
いかがでしたか?
今回も最後まで終わらせました。なぞを残す事は出来たのですが、スッキリ終わった方のがいいかな~とか思ったりしてしまいまして。ですが結局はモヤモヤしたものが残ったりもするんですよね。それが悪夢夜です。
ネタが尽きるまで悪夢夜は続きます。
それでは、また次回お会いしましょう。