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『見えてはいけないもの(HP)が、見えている件』  作者: くろめがね


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2/2

第二話 最弱扱いの判断

第二話です。

今回は「判断が当たる」だけでなく、

当たらなかったらどうなるかを強めに描きました。


この主人公は万能ではありません。

間に合わないことも、止めきれないこともあります。

それでも――

判断を続けるしかない人です。


引き続き、お付き合いください。


(……でかい)


洞窟の奥に、それはいた。

闇に溶ける輪郭。低く、広い。

呼吸のたび、岩肌がわずかに震える。


ヴァルカが足を止めた。

ほんの一瞬だが、確実に。


それだけで、相当だ。


「来るな」


俺は言った。


ミレイアが即座に立ち止まり、ガルドを支える手に力を込める。

彼女は迷わない。判断を疑わない。

その近さが、今はありがたい。


ヴァルカだけが、振り返らなかった。


「……理由は?」


低い声。短い問い。

俺は一歩、前に出る。

出る必要はない。だが、ここは言わなければならない場面だ。


「今、行くと――」


言葉を選ぶ暇はなかった。


闇が動いた。


天井から、重いものが剥がれ落ちる。

石と石が擦れる音。

あれは跳ぶ。速くはないが、重い。


「ヴァルカ!」


俺が叫ぶより先に、彼女は動いていた。


正面から受ける。

それが“前衛”の仕事だと、彼女は疑わない。


拳が当たる。

鈍い音。

衝撃が洞窟に反響する。


だが――


ヴァルカの身体が、半歩、沈んだ。


ほんの半歩。

だが、それだけで十分だった。


(……削られた)


俺の視界で、彼女の“余裕”が、確かに減った。

まだ立っている。

だが、次は重い。


「下がれ!」


俺が叫ぶ。


「――下がらない」


ヴァルカは言い切った。

踏み込む。腹筋が締まり、重心がさらに落ちる。

受ける構えだ。


だが、俺は見ている。


このまま受け続ければ、

彼女でも、最後は崩れる。


「ミレイア、前に出るな!」


「分かってる!」


ミレイアはガルドを岩に座らせ、俺の横に来た。

近い。

肩が触れる。

息がかかる距離。


「……まだ、いける?」


彼女は俺にだけ、そう聞いた。


俺は一瞬、視線を逸らす。

“まだ”は、ある。

だが、それは“余裕”じゃない。


「三回」


「え?」


「三回、受けたら終わる」


ミレイアは一瞬、目を見開いた。

理由は聞かない。

代わりに、静かに頷いた。


「分かった」


ヴァルカが再び殴られる。

二回目。

踏ん張る。

だが、床に亀裂が走る。


(……二)


俺は息を吸い、叫んだ。


「ヴァルカ! 次で終わる! 右に――」


「黙れ!」


ヴァルカが吼える。

だが、声に苛立ちが混じっている。

余裕が削れている証拠だ。


三回目。


影が振り下ろされる。


その瞬間、

ミレイアが一歩、前に出た。


「今!」


淡い光が、彼女の掌から広がる。

派手じゃない。

だが、確実に“戻る”。


ヴァルカの足が、沈まなかった。


「……っ」


驚きが、彼女の表情を一瞬だけ歪める。


俺はその隙を逃さない。


「今だ! 左脚!」


理由は言わない。

言えない。

だが、そこだけが“持つ”。


ヴァルカの拳が、脚を打つ。

巨体が傾く。

岩が崩れる。


そのまま、

倒れた。


洞窟が、静かになる。


息をしているのは、俺たちだけだ。


ヴァルカが、しばらく黙って倒れた獣を見下ろす。

それから、ゆっくりと振り返った。


「……判断が早いな」


「臆病なだけだ」


俺はそう返した。


ヴァルカは鼻で笑った。


「それを、強いと言う」


ミレイアが、ほっと息を吐く。

胸当てが、ふわりと上下する。

彼女は俺を見て、小さく言った。


「……ありがとう」


ガルドが岩にもたれたまま、苦笑した。


「なぁ……俺、また無茶した?」


俺は答えなかった。


ただ、

生きている結果だけが、そこにあった。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


ヴァルカというキャラクターは、

「力で解決できる人」の象徴です。

だからこそ、彼女が止まる瞬間には意味があります。


次話では、

この“力と判断の差”が、もう少しはっきり表に出てきます。


感想・評価をいただけると、とても励みになります。

次も、どうぞよろしくお願いします。


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