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第15話 入学試験

劉陽安はムッとしたが、淑雪は機を逃さなかった。

「私、蔡淑雪は蘇州の医業・王氏を祖とし、祖父は南京で良医となるも靖難せいなんえきのあと病没、両親は遷都に伴い北京で医館に籍を置きました。宣徳年間の洪水が元で両親は亡くなり、同郷の女医・趙若薇ちょう・じゃくびのもとで医学を学びました。現在、脈診と幾ばくかの処方、外科治療を習得しております。半人前の身ながら、私は一生を女医として終える誓いを立てました。どうぞ研鑽の道を拓かれるよう、于璚英う・けいえいと共に入学試験が受けられるよう、伏してお願いいたします!」


その言葉が終ると、二人は門の下の石敷きに突っ伏した。


 程副使は二人の身上書を劉大使に渡した。

「蔡姑娘は医戸、于璚英は列婦。北京はまだ工事が続き、夏の突発的な洪水のあとは疫病が出る。当面は人手不足だ。ならば我々は医生を育てるべきと考えるが」


それでも劉大使は渋い顔だ。

「言い分は最もだが、女子を入れると太医院の院使が難癖をつけに来るぞ」

「腕が確かなら文句ないでしょう」

「女ということが問題なのだ。太医院が男女七歳にして同席せずという儒家の教えを尊ぶならば、我々もそうあらねばならん。まして若い女が男の恰好をして男の体に触れるなど、もってのほかだ」


 程副使は思い出したように提案した。

「少し前だったか、宮中の妃嬪が太医院の男の医官を恥ずかしがって女医を求めたとか。そこで皇帝陛下は司儀監しぎかん御医処おんいしょに優秀な女医を民間から選抜して登録することを考えられたと聞くぞ。

 幸い恵民薬局は民草のためにある。試験くらいしてやってもいいだろう」


 皇帝の意向を出されては、むげに反対できない。劉大使は言った。

「仕方ない、理論記述と実践を二つ試す。明後日、たつの三刻に始める。遅れたら試験中止だ」


 試験の日、恵民薬局の医士と医生は珍しい女の受験者に仕事を忘れて、結果発表の場に集まった。

 劉陽安がまたしても渋い顔で、結果を述べる。

蔡淑雪さい・しゅくせつの四診に関する論文は具体例が添えてあり、非常に優れている。医士に引けを取らない。また、実技では経絡の位置に誤りなく、脈診も同様である。

 于璚英う・けいえいの四診に関する認識は一部が浅く誤りもあり、また独学の偏りがある。実技において経絡の位置はほぼ正確だが、脈診は相当の修養を要する。また婦道における徳を退け、進んで男に触れようとするは遺憾である」


 璚英が「劉大使さま」と声を上げた。

「進んで人に触れずして怪我人の手当になりますか。私の最後の実技は骨接ぎで、着衣のままでは骨周りの筋肉や血脈の状態が分かりません。診断を誤れば、一生の傷となります。私は婦道を尊びます。それ以上に医学の道を尊びます。命に男女の別がありましょうや。それとも恵民薬局は男のみを救うと仰りますや!」

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