第8話:日常に忍び寄る影
ボスとの死闘から数日後。
颯太は大学のキャンパスにいた。
ノートパソコンを開き、講義を受ける――
ただの、普通の大学生の一日。
だが、机の下のベルトが重く感じる。
まるで生き物のように鼓動し、時折、囁きが耳に届いた。
『退屈だろう?……ここを壊してみろ……』
颯太は首を振り、声を振り払う。
だが、隣の席の友人・遥が心配そうに覗き込む。
「颯太? なんか最近、顔色悪いよ」
「え? あ、いや……寝不足でさ」
曖昧に笑うが、彼女の視線が突き刺さる。
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影響
夜の戦いでの疲労は日中にも残り、講義中に意識が飛ぶことも増えた。
目を閉じると、倒した怪物たちの断末魔がフラッシュバックのように蘇る。
気づけば、指先で無意識に“カードを差し込む動作”をしていた。
「……颯太、本当に大丈夫?」
遥が心配そうに問いかける。
だが次の瞬間。
彼女の背後に“何か”がちらついた。
――あの影だ。
「……嘘だろ……」
颯太は立ち上がり、講義室を飛び出した。
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日常の侵食
キャンパスの中庭。
そこに現れたのは、学生には見えない怪物。
颯太だけが、その姿を認識できていた。
腰のベルトが震え、低く嗤う。
『フフフ……日常など存在しない……お前は選ばれた……』
颯太は唇を噛む。
このままでは、友人たちまで巻き込まれる。
「……守る。絶対に」
爪カードを握りしめ、颯太は決意と共に中庭へ飛び出した。
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次回への布石
影はすぐに消えた。
だが、颯太は悟る。
――“日常”はもう完全に侵食され始めている、と。
遥が駆け寄る。
「颯太……? 何を追いかけてるの……?」
答えられない。
ただ、胸のベルトが静かに震え続けていた。
『いずれ……彼女も……カードになる……』
颯太は全力で否定するように心の中で叫んだ。
「させない……絶対に」
夜だけでなく、昼の生活にまで影が入り込み、戦いは新たな局面を迎えようとしていた――。