第6話:もう一人の装着者
夜のビル街。
群れとの戦いで疲弊した颯太は、息を整えながら路地を歩いていた。
バックルには、倒した怪物たちの無地カードがずらりと並んでいる。
――そのとき。
前方から、カツン、と靴音が響く。
暗闇から現れたのは、一人の青年。
颯太と同じ年頃。だが、その腰には見覚えのある装着ベルトがあった。
「……お前も、そのベルトを……?」
颯太が言葉をかけると、青年は冷笑を浮かべた。
「違うな。これは“力”だ。弱者を踏みにじり、俺が上に立つためのな」
青年の手には、既に怪物のカードが数枚握られている。
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人間 VS 人間
「……人を守るために使うんじゃないのか!」
颯太が叫ぶと、青年は嗤った。
「ハッ、人を守る? くだらない。
怪物を倒して力を集める。
それが、このベルトの本当の使い方だろう?」
そう言って、青年はカードをベルトに挿入した。
――《カード・イン!ベノムモード!》
彼の体に、蛇を思わせる黒緑のアーマーが装着される。
鋭い舌が覗き、皮膚は鱗のように硬化していく。
颯太の背筋に冷たいものが走った。
「……人間が……モンスターみたいに……」
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バトル開始
青年の蛇アーマーが素早く動き、颯太の喉元に迫る。
颯太も反射的にカードを挿入する。
――《クローモード!》
白虎の爪が蛇の牙を弾き返す。
だが、相手は人間。これまでの怪物のような単純な動きではない。
巧みにカードの能力を使いこなし、颯太を圧倒していく。
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囁く悪魔
激しい戦闘の中、颯太の腰ベルトが嗤う。
『フフフ……見ろ……人はすぐに力に酔いしれる……
お前と同じ装着者が、次々と現れるぞ……』
颯太は怒鳴る。
「黙れッ! 俺は……俺は人を守るために戦うんだ!」
爪と牙のカードを連続挿入し、反撃に転じる。
だが、相手の力は拮抗している。
最後の一撃がぶつかり合い、双方が弾き飛ばされる。
雨の中、二人の装着者が睨み合う。
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不吉な予兆
青年は舌打ちし、闇の中へと姿を消した。
「また会おう。次は、そのカードごと……お前を奪う」
静寂が戻る夜。
颯太は震える手でカードを握りしめる。
人間同士の戦い。
それは怪物よりも恐ろしい現実だった。
『ククク……いいぞ……いずれ、お前の心も染まる……』
ベルトの囁きが、不気味に響き続ける――。