第5話:群れ襲来と代償の兆し
夜の街は妙に静かだった。
颯太はコンビニ帰りの人々を横目に歩く。
普通の人間には“見えない”はずの異形が、じわじわと通りを埋め尽くしていくのを、颯太だけが見ていた。
――影から這い出る無数の怪物。
四つん這いの異形、笑う顔だけの塊、腕だけの亡霊。
数にして十を超える。
「……マジかよ……こんなに一度に」
腰ベルトが囁く。
『ククク……群れだ……血肉と恐怖の群れだ……全部カードに還せ……』
背筋が凍るほどの囁きに、颯太は震えながらもカードを構える。
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群れ戦開始
――《カード・イン!クローモード!》
白虎のアーマーが颯太の体を包み、鋭い爪が雨の夜に煌めく。
最初の敵を切り裂くと、その体は煙のように崩れ、無地のカードが浮かぶ。
バックルに吸い込まれた瞬間、颯太の視界に文字が浮かぶ。
――【特殊能力:影足】
「……速さが増すのか……!」
次の敵に対抗するため、颯太はカードを引き抜き、再度挿入する。
――《カード・イン!ファングモード!》
狼のアーマーが装着され、颯太の速度が一気に跳ね上がる。
「はぁっ!」
爪と牙を駆使して、群れを次々と斬り伏せていく。
だが――数が多すぎる。
斬っても斬っても湧いてくる。
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影モードと吸収能力
「……なら……!」
――《カード・イン!影モード!》
漆黒に包まれ、颯太は影と同化するように敵の背後へ回る。
その動きは、先ほど吸収した“影足”によってさらに速くなっていた。
颯太は背後から一気に三体を切り裂く。
群れは次々にカード化され、バックルに吸い込まれていく。
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必殺技:シャドウファングブレイク
残った群れを前に、颯太は叫ぶ。
「……まとめて終わらせる!」
三枚のカードを同時に挿入する。
――《クローモード、ファングモード、影モード……コンバイン!》
――《必殺……シャドウファングブレイク!》
虎の爪、狼の牙、アサシンの影。
三体の召喚獣が現れ、颯太に力を宿す。
光と闇の刃が群れを一閃――。
十を超える怪物が絶叫しながら霧散し、全ての無地カードがベルトに収束していった。
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力の代償
戦いの後、颯太は路地に片膝をついた。
息が荒い。手が震える。
まるで体の一部を削り取られるような虚脱感。
腰ベルトの囁きが、愉悦に満ちて響く。
『ククク……代償を感じたか? 力とは甘美で、残酷だ……』
颯太は苦しげに笑う。
「……それでも……俺は守る……。この街の人を……」
夜の雨が、彼の決意を静かに包み込んでいた。