第1話:闇獣の囁き
夜風が静かに吹き抜ける商店街。
アルバイト帰りの大学生、颯太は重い足取りで歩いていた。
「はぁ……今日も疲れたなぁ…」
遠くで、かすかに揉める声。
喧嘩か――いや、関わりたくない。
颯太は自称平和主義者を気取って、反対方向へ遠回りする。
そのとき、暗がりでひと際光るものが目に入った。
小さな腰ベルト――光沢のあるバックルに、3枚のカードがぎっしり収まっている。
――爪、牙、影。
「虎?狼?人型アサシン? ……え、何これ…?」
好奇心に駆られ、腰にベルトを巻く。
カチッ
装着音と共に、低く不気味な囁き声が耳元に響く。
『フフフ……お前も器となる……』
颯太は息を飲む。心臓の鼓動がいつもより早い。
――けれども、胸の奥が少しだけワクワクしていた。
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初変身:クローモード
颯太はバックルから爪カードを引き抜き、ベルトに挿入した。
――《カード・イン……クローモード……》
白い虎型アーマーが全身を覆い、肩と腕に鋭い爪が出現。
鏡のように反射する窓に映る姿は、不気味で、でもどこかヒーローらしい。
「……虎になったみたいだ…」
腰ベルトの囁きが低く笑う。
『よく似合っている……だが、力はまだ序の口……』
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路地に怪物が潜んでいた。
黒い肌、異様に長い手足、口からは低いうなり声が漏れる。
颯太はクローモードで立ち向かう。
通常攻撃では間に合わず、必殺技を発動――
――《クローブレイク……カード・イン!》
背後から虎型の召喚獣が現れ、力を宿す。
爪が光を帯び、一撃で怪物を切り裂く。
怪物は光に包まれ、無地のカードとしてバックルに吸収される。
『フフフ……これで、力を得る準備が整った……』
颯太はカードを眺める。
――無地カードに封じられた力を、再びベルトに挿入すれば特殊能力が使えるのだ。
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颯太は心の中でつぶやいた。
「……つまり、倒した敵の能力を、自分の戦いに使えるってことか……?」
腰ベルトの囁きが、低く不気味に笑う。
『フフフ……それを理解したなら、次は楽しみだ……』
夜風が耳元を撫でる。
街は静まり返っているが、颯太の心は既に戦闘者として目覚めていた。
不気味さとヒーロー感が交錯する中、颯太の戦いは、まだ始まったばかりだった。