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04章:生徒代表、我!

アマジア魔法学校。

王国設立から1000年続く由緒正しき魔法学校。

時を見る魔法使いによって設立されたそれは、生まれだけの貴族を鍛え、民衆のために立つ真の貴族へと変えるための教育機関だ。

自立心を養う為に完全寮生となっており、今まで他人に頼って来た貴族たちは非常に苦労するという。

もっとも、お手伝いやらメイドやらを連れてくるものも多く、自立心を養うという目的はどこへやら、だがな。


ま、そんなお題目に興味はない。

せいぜい、「時を見る魔法使い」なるやからに興味が湧くくらいか。

時を見るというのが本当なら、その魔法使いは未来を予知できることになる。

なんとも、戦いがいのありそうな相手ではないか。


目下の問題は、今行われている入学式だ。

魔法学校に集められた貴族たちが一堂に会し、先生たちに魔法学校へ入学したことへの祝辞と、貴族としての責務を説かれる場。


なんと、その生徒代表挨拶を、我がしなければならない!


例年通りなら、入学試験の成績優秀者か、王女のスバリオが挨拶するものだろう。

だがスバリオはなぜか辞退したらしい。


そして代わりに我を推薦したのだと…

我に挨拶などと面倒でくだらないものを押し付けるなどと…まぁ理由はだいたい見当がついている。

なんだかんだ長い付き合いだ。

我がこういう場が苦手なこと、スバリオはよく知っているはず。

だからこそ、この場を譲ることで困る我を見て楽しんでいるに違いない


成績優秀者なら、今回は貴族ではない入学者が2人いる。

我が剣のライバルであるトレンともう1人、よくは知らんがシデルとかいう小娘だ。


民間からの入学が許されるのは、魔術の才があり、かつ魔法学校が用意した高難度の試験をパスしたもののみ。

つまり、本来なら挨拶するのはトレンかシデルのどちらかのはず。


我ははっきり言って勉学が苦手だ。

子供のころの勉強漬けの日々が思い出されて体がかゆくなる。

成績優秀者であろうはずがない。

にもかかわらず選ばれたということは、王女の推薦以上に、我が公爵家に取り入ろうという愚かな考えを持つ者がいるに違いない。


だが、言い訳をするつもりもない。

なんであれ、生徒の代表として選ばれたのだ。

魔王は苦難から逃げない。逃げるなどあってはならない。


「…皆の魔法学園での生活は、運命の元、素晴らしいものになると確信しています。」

「以上、王宮魔術師デイス様からのご挨拶でした」

「次に生徒代表挨拶を、フォルク・ハートが行います」


…とうとう来たか。気は乗らないが、行くしかあるまい。


蒼き瞳の輝きを我は捉えた。


(フォルク、素晴らしい挨拶を期待していますわよ~)


遠目にもわかる。ものすごいニヤニヤしている。

あいつめ、後で覚えていろ。


壇上に上がる。

集まった全生徒を眺めると、魔王として皆の前に立った記憶を思い出す。

不安と期待に満ちた目で皆が我を見つめる魔物たち。だから約束してやったのだ。我が力の元に全てがひれ伏す世界を。


この15 年、弱体化した力を取り戻す為に努力してきた。全盛期とは程遠いが、もう待つわけにはいかない。

ただ安穏と過ごすのはもう終わりだ。

魔法学校での日々は、我が覇道を刻む日々。


我はこの魔法学校で全てを超え、我が力に全てがひれ伏す世界を実現する。


この挨拶はその第一歩となる。文面もちゃんと考えているぞ。


「我は魔王」

「全ての力の頂点であり、全ての生物は我が前にひれ伏す」

「この魔法学校に我が覇道を刻む」

「貴様らは絶望する。覚悟するがいい」


...と、こんな感じだ。なかなか良いだろう?


だが、さすがにこのまま挨拶してはならん。

わざわざ勇者の息子として猫をかぶっているというのに、自分から正体を明かすのはバカのすることだ。

我は魔王。皆が思うよりもクレバーなのだ。


というわけで、生徒向けにマイルドにした文面を考えてきたぞ。


「皆さんこんにちは、僕はフォルク・ハート。

ご存知の方もいるかもしれませんが、勇者ブレス・ハートを父に持ちます。

しかし、皆と同じようにここではただのフォルクです。父は関係なく、皆と同じくまだ力無い1人の人間です。

今はただの力無い存在かもしれません。

しかし、貴族という立場、勇者の息子という立場に相応しいものになれると信じています。

なぜなら、共に歩む仲間がいるからです。

皆と共にこの魔法学校で歩む日々が、私の力となるであろうと確信しています。

それと同時に、皆にとっても素晴らしい日々になるよう出来る限りの努力をしていきたいと思っています。

皆様、共に頑張っていきましょう!」


ふふんどうだ、我の目的が伝わる名演説だったといえよう。


舞台の下から拍手が聞こえてきて、我は演説…もとい代表挨拶が成功したことを確信した。


スバリオのやつも悔しそうにしていることだろう…む、あやつめ、余裕といった顔で我を眺めてやがる。

企みが失敗したのだ、もっと悔しそうにしないか!


(流石はフォルク、我が友に相応しい立派な演説でしたわ)


我はスバリオの奴を睨みつけるが、奴は妙に嬉しそうだ。まだ何か企みがあるのか?


(わたくし、実はあなたの演説が聞きたかっただけですのよ?)

(...醜態をできれば見たかった...というのは否定しませんし、この状況にもっていたのはわたくしですけどね♪)


スバリオはいたずらっぽく舌を出してきた。やっぱり貴様か!


…まぁ良い。我が覇道は、ここから始まる。

しかと目に刻むが良い。

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