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02章:全く優雅じゃない我の変遷

討魔歴、実に忌々しい…

が、受け入れなければ話が進まん。


我を倒した勇者は、王国へと凱旋した。

そこで王様に魔王討伐の報酬として公爵位を受領したらしい。

そして、時代の年号として討魔歴が制定されたようだ。


…らしい、…ようだ、とは何か?だと?

まだ我は生まれておらん!


そうして貴族となった勇者ブレスは魔法使いマルと結ばれた。

討魔歴元年に開かれた結婚式は、我を倒した平和ムードでお祭り騒ぎだったそうな。


そして、討魔歴3年。

我が誕生する。

もちろん、我は魔王だ。国中に響き渡る大声で泣いてやったとも。

...実際は、驚愕の叫びだったのだがな。両親の顔を見つめて戦慄したとも。


しかし、勇者一行を両親に持った我に待っていたのは地獄だった。


勇者たちの教育方針なのだろうか?

ろくに外に出ることを許されず、勉強勉強また勉強。

勉強漬けの毎日だった。


我は武闘派魔王ぞ!?

学問など四天王に任せておけばよいのだ!


そもそも、物心持ったころから我を妨げるものは何もなかった。

完全なる自由、それが我に与えられた唯一。

なのに第二の人生はこのありさま。

神よ...貴様を呪う!


…たまの剣術稽古と魔術稽古だけが、我の癒しであった。稽古相手はもちろん両親。

流石は勇者一行。稽古のレベルは非常に高く、周りの大人たちはあっという間に我に敵わなくなった。

この点だけは恵まれていた。勇者の息子であることに感謝だ。


さて、時は進み討魔歴10年。

7歳になった我は、とうとう社交界デビューする羽目になってしまった。


ああ、実に面倒くさい!

社交界など世辞が飛び交うくだらぬ場に決まっておる。事実そうだった。

勇者たる我が父も、社交場は苦手などとのたまうではないか。

ならば行かなければよいものを...

貴族の付き合いとやらを優先し、自由に身動きできない。

勇者として我に歯向かったあの勇ましさは影もなく、へこへこと頭を下げる姿には幻滅すればよいのか、それとも憐れに思えばよいのか...


今も付き合いの続く友に出会えたことだけが、社交界唯一の収穫だったな。


果たして、社交界は実につまらぬものだった。

力によらない序列などくだらない。

勇者を王とした社会の方が、よほどわかりやすく、過ごしやすかっただろうに。


さて、そして討魔歴18年。

15歳になった我は魔法学校に通うことになった。


魔法学校とは、貴族のための養成機関…というものらしい。

貴族としての力と気品を兼ね備えるための場だと、勇者は説明した。


だが、実際のところはどうだろうな。

魔法学校を出たはずの貴族が、くだらぬ社交界にうつつを抜かすのだ。

魔法学校もまた、つまらぬのではないか?


だが、多くが集まり学ぶ場というのは我が野望に都合が良い。

くく、見ているが良い勇者よ。

我が貴様の息子として、魔王の目的を果たす様をな!

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