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10章:試験勉強がつまらん!

「次回の授業は実技テストを行います。」


生徒たちがどよめく。

静かになるのを待ってから、先生が続ける。


「皆さんが魔法学校に入学して3ヶ月になります。これまで様々なことを学びました。魔法の入門から魔物の生態、果ては舞踏や貴族の風習など様々です。

貴族として、民の前に立つ存在として、これまで学んだ力を今発揮する時です!」


生徒を見回しながら、先生はさらに続ける。


「この度の試験は、王家所有のダンジョンにて行います。ダンジョンに潜り、己が力を示すのです!」


再び生徒たちのどよめき。

それもそうだ。いきなり試験と言われ、いきなりダンジョンに潜ることになるなど。


魔法学校で自立心を鍛え、力をつけて来た生徒たちにとっては、ワクワクなんてもんではないだろう。いてもたってもたまらず、ダンジョンで力を試したいはずだ。


逆に、良く言えば貴族らしく、悪く言えば自堕落に過ごして来たものたちにとってはつらい宣告だろう。ダンジョン探索に失敗すれば大きな恥をかくだろうからな。プライドの高いものは耐えられまい。

ま、自業自得だがな。


我と言えば、座学か、ちょっとした実習ばかりの授業にうんざりしていたところだ。

トレンとの剣術稽古があるとはいえ、それ以外でも体を動かしたいと思っていた。

しかもダンジョン探索だと言うではないか。

魔王を名乗る前は、我も宝を求めて危険なダンジョンに潜ったりしたものだ。四天王のひとりと初めて出会ったのも、あちこち流浪してダンジョン巡りしていた頃だったか?

あの頃は皆とはライバル関係だったな。実に懐かしい。


懐かしさに浸っていると、いつの間にか授業は終わり、周りに人が集まっていた。

「フォルクー、ダンジョン探索だってー」

「楽しみですね師匠!、どんなダンジョンなのでしょう?」

「あの、スバリオ様なら何か知っているのでしょうか?」

「残念ながら初耳ですわね。まぁ知らない方が面白いに決まっていますわ」


スバリオにトレン、ウィケとシデル。もう馴染みのメンバーだ。

派閥を組んだのもあるが、最近いつも一緒だな。

む、ある意味、こやつらが今の我の四天王なのかも知れぬな?

ふむ、面白い。


「我は...僕は決めたぞ」

「なにをー決めたのー?」

「今回のテスト、この僕フォルクが1番になる!」

「さすが師匠!目標が大きい!」

「あらあら、わたくしがいるのに1番になれるとお思いなのです?」

「はんっ、知識勝負以外でスバリオに負ける気はせんな」

「見ていなさいな?今度こそ負かしてやりますわ」

「ま、まぁまぁ、2人とも落ち着いてください。ヒートアップするにはまだ早いですよ」


いや、我が1番を取る!

力の差を見せつけて、そして宣言するのだ。貴様らを新たな四天王に命ずるとな!


「次の授業はー1週間後だからー、テスト対策できるねー」

「一緒にやりませんか?師匠!」


こやつらと勉強すれば実に捗るだろう。が、しかし、明確な差をわからせ四天王に命ずるならば、協力するのは避けるべきだろう。


「いや、今回は断ろう」

「あら、よろしいんですの?」

「そんな~師匠~…」

「僕はこのテストで力の差をわからせるつもりだ。貴様ら4人で協力するがいい。それを我が打ち倒そう」

「おー、言うねー、フォルクー」


かくして、我の新たな四天王確保計画がスタートするのだった。



ーーー



とは言ったものの、何か対策があるわけでもない。

手伝いながら先生に聞いてみたものの、試験情報は秘匿であるようだ。


だが、傾向は予想できる。

これまで学んだ授業の中で、選択科目ではないものが評価対象になるだろう。

基礎魔法理論は必須だろうな…剣術基礎も出てくるだろう、ダンジョン探索ならサバイバル基礎なんかも必要になってくる。

それからそれから…


そうして予習するべき科目に目星をつけ、復習を始める。

ふむふむ、過去に習ったことを改めて学び直すのも楽しいではないか。



ーーー



飽きた。飽きた。

飽きた!


大体、我は入学以前から勉強尽くしだったのだ!授業の内容もほとんど知っていることばかり。たまに知らぬものがあってもたかが知れている。


仕方がない。勉強はここまでにして、トレンと剣術稽古でもするか。


そう思いトレンを尋ねたが、返事は意外なものだった。


「断るー」

「なに!?トレンよ、なんのつもりだ!?」


いつも二つ返事でOKするだろう!

なぜだ!?


「今からー、シデルとースバリオとーウィケでー、勉強会するんだー。フォルクー、君に勝つためにねー」

「なんだと?」

「だからーフォルクとの剣術稽古もーしばらくは無しー」

「そんなバカな!?我は...僕は何をして時間を潰せばいいんだ!」

「いやー、勉強しなよー?」


そう言って、トレンは去っていった。

我は1人取り残された。

何故だ、なぜこんなことになった…



ーーー



翌日、授業で一緒になったスバリオに声をかけた。


「スバリオ!今日は談義しないのか?」


スバリオはこちらを一瞥したかと思うと、ニヤリと意地悪な笑みを見せた。


「フォルク、残念ながらテストが終わるまで談義は行いませんわ。」

「なっ!?」

「ウィケたちとテスト対策準備がありますので、ごきげんよう」


スバリオは楽しそうに去っていった。

その後…


「シデルよ、我の技を伝授してやろうぞ!」

「ごめんなさい師匠!、今回ばかりは師匠に頼れません!、みんなと勉強会があるので失礼します!」


「ウィケ、派閥の件だが…」

「ご、ごめんなさいフォルク様!今だけは…えっと…とにかくごめんなさい!」


我は涙を流すのをこらえて、自室へと戻った。


我って、ここまで寂しがりやだったっけ…そんなことを思いながらぼんやり過ごしていたら、いつの間にかテスト当日になっていた。

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