幕間5:苦悩の王
「予言の回避方法はまだ見つからないのか!?」
王は声を荒げて叫んだ。
王宮魔導士のデイスは冷静に返す。
「落ち着きください、王よ。予言を回避する方法を全力で探っておるところです。」
「またそれか!聞き飽きたぞ!全力であろうがなかろうが構わない!結果を出せ!」
王は髪をかきむしり呻く。
「ああ、我ら王家が紡いできた千年王国が滅ぶ…血で濡れた王座など滅びの予言に違いない…どうすればいい?どうすれば避けられる?スバリオがいけないのか?予言の回避に娘を差し出せと言うなら喜んで差し出そう」
かつて勇者をみいだし、賢王とうたわれた面影はもうない。
予言に打ちのめされた凡夫が王座に座っていた。
ーーー
王宮魔導士デイスは王座を離れ、王宮の塔から城下町を眺めていた。
城壁に囲まれた王国は、北の山岳地帯の上に城を構えている。そこから見える景色は素晴らしいものである。
城壁のうちに目を向ければ、賑わう市場や港、民たちの生活が垣間見える。
城壁の外に目を向ければ、雄大な自然が広がる。
西を見れば大海原が広がり、東を見れば草原や森が見える。草原にはいくつかの大きな集落があり、魔王のいない平和な世界を享受していることだろう。
「この平和を守らなければな」
デイスは1人呟いた。
動かねばなるまい。王に進言せねば。千年王国の安寧のために。