表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/8

第八話 王宮の庭園

 ――翌週。

 定例のお茶会は、王宮にて行われた。


「やあ、胡蝶蘭とは凄いね」

「だな。アルにしては、高尚な趣味じゃないか」

「うっさい。全部俺が世話してるわけじゃないからな」


 王宮の庭園にはアルベルト専用の区画があり、そこでは胡蝶蘭が栽培されている。

 庭園にテーブルが置かれ、アンジェリーヌたち四人はお茶を楽しむ。アインホルンが感心してみせ、ポテトが茶々を入れた。アルベルトは、ぶっきらぼうに応じる。

 アンジェリーヌは庭園を眺めながら、カップを口に運んでいた。

 ーーそのお茶会の場でアンジェリーヌたち三人は、アルベルトからアラムについて説明を受けた。



 アラムは時折、王都郊外に出ていく。

 人のいない山や森で、動物たちと触れ合うためである。アラムは不思議な少女で、幼い頃から動物に好かれていた。

 王宮の庭園にあるアラム専用の区画は、小動物が相当数生息している。

 そして昨年、王宮の庭に天馬が降り立った。

 騒然とする中、アラムが天馬を手懐けて自分の乗馬としてしまった。

 ーーそれを聞いた王が、魔物使いの師をアラムに付ける。

 動物に愛され天馬を手懐けるなど、アラムに魔物使いの才能があることは疑いようがない。

 ーーあとは、制御のための技術を学ばなければならない。

 アラムのような王族にとって、魔物使いの能力は不要で、危険である。魔物の制御を誤れば自己に危害が及ぶばかりか、周囲の人間が傷つくからだ。



 アラムに付けられた魔物使いは、アラムに様々な技術や知識を教えようとした。

 が、一通り魔物使いの知識に触れると、アラムがこれを拒否。

 アラムに付けられた魔物使いも、首をひねった。アラムは、一般的な魔物使いと一線を画すようで、教えることがなくなったようだ。

 もともと、魔物使いの技術体系は確立されておらず、個人の資質による我流が多い。力で従える、魔力で操る、フェロモンで惹き付けるなど……。

 アラムはそのどれでもなく、他の魔物使いとなにかが違うようだった。


 

 さて、そんなアラムは先日、天馬に乗馬して王都近くの森に不時着する。

 天馬が暴れ、制御が難しくなったためだ。天馬を宥めて辿り着いたのが、あの森であり、アラムがその場で見たものが、シデンによるデーモンオーガの討伐であった。

 デーモンオーガの強力な魔法攻撃を防ぎ、シデンがデーモンオーガを仕留めていた。

 アラムは邪魔にならないよう、立ち去ろうとする。戦士が、魔物を斃すーー。アラムが口を出すことではなかった。

 ーーしかし、アラムは気が付いた。

 デーモンオーガの傍らに、小さく、震えている存在に。デーモンオーガの幼体であった。

 シデンは、躊躇なくデーモンオーガの幼体を始末しようとした。

 それを察知したアラムの内で、何かが灯った。アラムは、シデンの前に飛び出したーー。



「そこに、俺たちが出くわしたのか……」


 アインホルンが、アルベルトの話を聞いて唸る。


(そんなことが……)


 アンジェリーヌも、頭の中で状況を整理する。


「ふーん、大変だったな。しかし、お前のとこの妹、凄いな。そのうち、この庭園が魔物の棲家になりそうだな」


 ポテトは軽い。


「うう……。否定できん」


 アルベルトが頭を抱える。


「心配するとこ、そこ!?」


 アンジェリーヌが思わず突っ込む。


「もしそうなれば、男爵領と伯爵領に溢れた魔物を引き取ってもらうか。それぞれ、相当数の負担を……」

「アホかーっ!?」


 アルベルトの言葉に、慌てるアンジェリーヌ。


「うちは良いよ、広いから」


 と余裕のポテト。


「おいおい、魔物の軍隊とかは勘弁してくれよ」


 と目を剥くアインホルン。


「まあ、それは置いといて、今日はアラムも一言お礼を言いたいみたいで……」


 アルベルトが言い終わらないうちに、歩いてくるアラムの姿が見えた。

 一同は立ち上がり、アラムを迎える。


(ひぃぃぃ、展開が全く読めない……)


 アンジェリーヌは、展開の速さにビクビクである。



 当たり障りのない挨拶のあと、アラムが先日の一件について、アンジェリーヌたちに謝意を述べる。

 怪我も完治したことが告げられ、アルベルトも改めてアンジェリーヌたち三人に謝意を述べた。

 また、アルベルト同様にアラムに対しても、くだけた場では気軽に接してくれるよう求められる。

 謝意を受け、


「いや、特に何もしてないからね……」


とアルベルトとアラムに、気にしないように伝えるアインホルン。


「俺もだ。活躍しそこなったな」


 軽い口調のポテト。


「いえ、傷の手当てまでしていただいて……」


 と、にこやかなアラム。


「そういえば、デーモンオーガの子供はどうしてるの?」


 気軽にポテトが尋ねる。


「『デモデモ』ちゃんは、こちらに……」


 言って、パッと自分のスカートをめくるアラム。

 一同、ギョッとした。

 アラムの膨れたスカート内には、デーモンオーガの子供――デモデモがいた。

 アラムの足にしがみついている。


「こ、こら、アラム! 足を見せない!」


 アルベルトが慌てる。


「あら、私としたことが。オホホホ」


 とイタズラが成功したアラムはご満悦だ。

 デモデモも、なにやらはしゃいでいた。

 晴れた昼下がり、王宮の庭園には少年少女の笑い声が響く。

 麗らかな陽射しが、心地よいーー。



「……あ、そういえばアンジェリーヌ様」


と、ふと思い出したようにアラムがアンジェリーヌに声をかけてきた。


「ひぃぃぃ、あ、いえ。はい、アラム殿下。なんでしょうか……」

「アンジェリーヌ様は、お兄様と御結婚なさるんですか? そうしたら、アンジェリーヌ様は私のお姉様ですね」


 きゃっ、とアンジェリーヌの腕に抱き付くアラム。


「ひ、ひぃぃぃ!? とんでもない、そんな予定ございません!」

「ふむ……。俺も相手が決まってないし、アンジェが良ければ、伯爵に打診を……」

「や、やめてッ!」

「はは、アルが嫌ならイケヤ王国にどう? イケヤもいいとこだよ?」

「あ、アホーっ! 引っ掻き回さないで!」

「男爵でも大丈夫なら、うちは? 広さだけなら、辺境伯レベルだよ! 将来性を考えてみない?」

「ひぃぃぃ、あんたまで!」

(何を言い出すの、こやつら! 私は主人公か! はっ、それにしてもアラムのキャラってこんなんだっけ? ……えっと、もう訳わかんない~!)


 慌てまくるアンジェリーヌ。

 彼女の受難(?)は続きそうだ。

 青い空の下、今日も平和なお茶会であった――。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ