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第六話 アラムの天馬

 アンジェリーヌたちは滝の周辺で食事を採り、ゆったりとした時間を過した。

 が、帰路につく前に、思わぬ遭遇があった。


「おやーー」


 四人の目の前に、天馬ペガサスが現れたのだ。

 その天馬は体毛がほんのり桃色で、アルベルトは見覚えがあった。アルベルトの妹、アラムの愛馬である。


「これはーー?」


 アラムの愛馬を見かけ、不審を覚えたアルベルトは護衛を呼び寄せ、アラムを探させた。

 が、近くにはいない。

 アルベルトは王宮に使いを走らせつつ、その場で動員できる最大限の人員で捜索に移った。


(天馬が単騎で逃げ出したり、アラムは他の護衛と一緒にいる可能性もあるけれど……)


 アンジェリーヌは妙な胸騒ぎに駆られる。

 こんなシーンは『カロ恋』に存在しない。様々な想定外が発生しているが、アラムが主で絡むイベントなど、一切なかったはずだ。アラムは、『カロ恋』にも出てくるので知っているが、非常に接するのが難しいレアキャラだ。


(……こんな序盤で出てくるキャラではないのに)


 訝しがるアンジェリーヌに、増援が到着すれば戻るようアルベルトが伝えてくる。

 アンジェリーヌは流れで頷くが、それで良いのかーー。


カッーー


 ふいに離れた場所が光る。

 魔法の光だ。

 そちらで、高威力の魔法が使われたようだ。


「みんなは帰ってくれ!」


 アルベルトが木に繋いでいた馬に飛び乗り、魔法が使われた場所に急行した。

 付近に残された護衛は二人だったが、二人ともアルベルトに追従する。


「アル!」


 ポテトも、アルベルトを追いかけた。


「……!」


 アンジェリーヌは反応できず、アルベルトたちを見送るだけであった。

 アインホルンが一人、アンジェリーヌの側に残っている。


「……っ!」


 アンジェリーヌは歯噛みした。

 アインホルンは、他国の人間ということもあるが、アンジェリーヌを一人にできないことから残っている。

 護衛がいない今、アンジェリーヌでは魔物に遭遇してしまうと身を守る術がないーー。

 しかし、アンジェリーヌは叫んだ。


「アイン、お願い! 私のことはいいから、急いで! 私も続くから!」


 アンジェリーヌには、なんとなくわかる。

 アインホルンは、おそらく強い。剣が得意なような立ち振舞であるが、魔法にも精通している気がする。ーー乙女の勘だ。

 先程の魔法の光は、かなり強いものだった。だとすれば、アインホルンがアルベルトたちの側にいたほうが良い。

 この国の危険な場面に、他国の王子であるアインホルンを巻き込んで良いのかと一瞬躊躇ってしまうが、アインホルンはそんなことを気にしないはずだ。

 

(くそぉっ! ここで根性見せないと、乙女が(すた)る)


 アンジェリーヌが自分の軍馬に向かおうとするが、


「ーー急ぐので失礼」


と、アインホルンに抱きかかえられる。


(ーー!?)


 素早くアインホルンの軍馬の鞍に横乗りにされ、アンジェリーヌはアインホルンにしがみつく格好だ。


「急ぐよ、しっかり掴まって」

「う、うんーー」


 手綱を操るアインホルンの邪魔にならないように気をつけるアンジェリーヌであるがーー、


(アインホルンって、意外とガッチリしてる。しかも、良い香りがーーて、私がドキッとしてどうする!?)


と、思わずドギマギしてしまう。

 ーーのもつかの間、


「こっからは、奥の手だよ!」


と、アインホルンが急に立ち姿勢となり、アンジェリーヌは視界がおかしいことに気がつく。


「へ?」


 軍馬も劇的に速くなる。


「ひ、ひぃぃぃッッ!」

「騒ぐな! 舌を噛むぞ!」

「ーーだって、こんな!?」


 騒ぐアンジェリーヌ。

 しかし、無理もない。軍馬はいつの間にか樹木を蹴りーー走ると言うよりも跳躍を繰り返し、最短距離を進んでゆく。


(た、確かにこれなら早い……。こんな乗馬方法があるなんて……魔力を使って馬を跳躍させてるんだ。人馬一体ここに極まれり!?……死ぬほど怖いけど!?)


 アンジェリーヌは、必死にしがみつく。

 アインホルンも集中しているようなので、騒ぐことはしない。


「よし、追いつくぞーー」


 アインホルンがそう言った直後、開けた所に出た。


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