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第三話 優雅なるお茶会

「ーーで、アンジェ。君はどう思う?」

「……は、はあ」


 アンジェリーヌは気もそぞろで、アルベルトが何を言ったのか聞いていなかった。

 金曜日の午後、アンジェリーヌはアル・アイ・ポテの三人と優雅にお茶を楽しんで(?)いた。

 学院は、

 金曜日ーー午後から休講

 土曜日ーー休日

 日曜日ーー休日

となっており、金曜日の午後は学院生同士が交流に勤しむのが慣例である。

 なお、週末は帰領する者もおれば、王都の寄宿先で家庭教師に学ぶ者もいて、それなりに学院生も忙しいのであった。

 『貴族の道は一日にしてならず』とは誰が言ったか、的を得た格言である。



 学院の庭園で、お茶は湯気を立て爽やかな香りを運んでくる。


(ひぃぃぃ、私を入れないでぇっ!)


 と言うアンジェリーヌの心の叫びはさておき、出会いから一ヶ月が過ぎ、四人は気の置けない仲になっていた。

 アンジェリーヌも、何だかんだで一緒に行動して(巻き込まれて?)いる。

 思えば、アンジェリーヌは前世では三十歳……。目の前で政治の話に興じる十五歳の少年たちは、はっきり言えば宇宙人である。

 ーーゲームでは熱中したが、今は冷めまくっている。


(お前ら、レディを前に政治の話なんて、本当に十五歳かッッ!)


 話半分で聞いているアンジェリーヌも、しっかりツッコミは入れる。心の中で。

 ……まあ、それぞれが国や領の中枢で活躍を期待される人材であるため、おかしくはないのか。それに、この世界では社会に出るのが早いため、当然の成り行きなのかもしれない。


「ーー要は、親がいない子供たちが一人前になるまで、国はどう支援するのが良いのか、という話さ」


 ポテトが横から補足をする。

 小賢しいが、便利な男である。


「……えっと、孤児院を作ったり教育の無償化、貧しい家庭への児童手当を厚くしたり、とかでしょうか」


 思わず、まともに答えるアンジェリーヌ。

 アルベルトが目を見開き、対照的にアインホルンとポテトは目を細めた。


(ひ、ひぃぃぃ! なんかマズイこと言った!?)


 少年たちの反応を見て、アンジェリーヌは嫌な汗を流す。


「そうだね。王都やセラム教の教会しか孤児に支援の手を差しのべていないけど、地方にも王立の孤児院を設置するということだろうか。教育の無償化や児童手当で貧しい家庭の子供も学ぶ機会が飛躍的に増える。国力増強に繋がる。教会や一部の富裕層の気紛れではなく、税金を使うことで国全体が孤児の面倒を見る、ということだね」


 アルベルトが一人頷く。


「……教育の普及は、国力を増強する。戦闘訓練を受ける機会があれば、才能を見出だすことも可能。いやあ、さすがブクマ王国の貴族だね。イケヤ王国から出て来て良かったよ」


 アインホルンが、笑う。


「アンジェ、よく考えているね。伯爵令嬢と言えば、政治に興味ないもんなんだけど」


 ポテトも感心していた。


(じゃあ、レディのいるお茶の時に政治の話すんな!)


 とアンジェリーヌは心の中のツッコミはしっかり入れつつ、


(思い出した! この場面は、エリーゼがアルベルトに孤児救済の話をしてエリーゼの愛の深さを知る場面! 私の愛の深さを知ってどうする!?)


 と、自分の言葉がゲームの主人公のものだったと自覚する。


 「こ、これは何かの本に書いてあった事に過ぎませんので……」


 誤魔化そうとする、アンジェリーヌ。

 自分が主人公の言葉を真似て、どういう結果を及ぼしてしまうのか予測がつかない。


「博識なんだね、アンジェ」


 アルベルトは、にこやかだ。

 素直に感じ入った、というアルベルトに対してアインホルンとポテトは違和感を感じさせた。

 警戒しているのだろうか。とにかく、深く関わりすぎるのはマズイ。展開が、わからなさすぎる。


「そろそろ、今日はお開きにするか」


 ポテトが切り出す。


「そうだね、明日も早いし」


 アインホルンも了解する。


「ふへ? 明日?」


 アンジェリーヌは聞き捨てならない言葉に反応する。


「明日は、王都の郊外に散策だよ」

「散策?」

「そう、四人で」

「四人?」


 アルベルトの言葉に、『聞いてなかったぁぁっ!』と絶叫(心の中で)するアンジェリーヌであった。


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