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第二話 逃げるに……

 さて、アンジェリーヌは心の中で悲鳴を上げつつも頭を働かせ、記憶を呼び起こす。


(こ、この場面は、主人公のエリーゼ王女が初めて攻略対象であるアルベルトと遭遇するところでしょッ!? なんで私が!?)


 アンジェリーヌは思わず、遠い目をしてしまう。


「やあ、アインホルン王子」

「おや、アルベルト王子」


 そんなアンジェリーヌを尻目に、二人は親しげに挨拶を交わす。


「悪役はイヤ、悪役はイヤ……。ん、待てよ?」


 ハッとアンジェリーヌは顔をあげ、辺りを見回す。

 そう言えば、ナビス公国の王女であるエリーゼはどこにいるんだろう。設定では、エリーゼはアンジェリーヌと同い年で、アインホルンとともに学院にやって来る。

 ちなみに、アインホルンは性格が壊滅的に悪く、大国の王子であることを鼻にかけており、なにかと属国のようなナビス公国王女のエリーゼを奴隷のように扱う胸くそ悪い男であった。

 攻略対象の中で異彩を放つキャラである。



 ーーそれはさておき、挙動不審なアンジェリーヌの前で、二人の王子の会話が続く。


「どこに行くんだい? ランチかな(チョロチョロすんなよ、ネクラ野郎)」


 アルベルトは親しげな笑みを浮かべた。


「いや、ランチは終わったよ。庭園の散策でもしようかと(気安く話しかけんな、ボケェ。……御大層に通り名が【神眼王子】だと!? フカシてんじゃねぇぞ。ガルル)」


 アインホルンは、にこやかに応じる。


「今日は天気も良いし、それは気持ちが良さそうだね(こいつ、なにか企んでないだろうな。うさんくせー!)」

「次はアルベルト王子もお誘いしたいな(こいつ、存在感無さすぎ! 薄い男だ!)」

「それはいいね、是非(誰が行くか。虫酸が走る!)」


 などと二人の王子は当たり障りのない会話を続けた。


(ひ、ひぃぃぃ! にこやかな会話が怖い! きっと、腹の中では()の中みたいなことを思っているんだわ……)


 側で、ブルブル震えながら様子を見ているアンジェリーヌ。

 なお、二人の心の声を聞いた訳ではないのだが、アンジェリーヌは二人が何を考えながら会話していたのか、想像を逞しくしたーー。



 アンジェリーヌが震えているとーー、


「おやーー。アインホルン王子、紹介したい人が。こちらは、ベトマ伯爵令嬢のアンジェリーヌだ」


 アルベルトがアンジェリーヌに気付き、声をかけてくる。


「ひぃぃぃ、ごきげんよう!」


 突然声をかけられて、取り乱すアンジェリーヌ。

 アンジェリーヌは、


(気配を消して、フェードアウトするべきだった~)


と、激しく後悔した。


「私はアインホルン。イケヤ王国から来たんだ。よろしくね、アンジェリーヌ嬢」


 アインホルンが気さくに応じる。


「あ、こちらこそ、ご挨拶できて光栄です……」


 しどろもどろのアンジェリーヌ。


(なんとか、切り抜けなければッッ! そしてフェードアウト!)


 必死に頭を回転させるアンジェリーヌ。


「アンジェリーヌ嬢がイケヤ王国に足を運ぶことがあれば、王国内を案内しよう。是非、来てくれ」


 アインホルンは、にこやかに言った。


「まあ、嬉しいーー。はっ、そう言えば、急用がーー」

「わ、ビックリした……! これは、アルベルト殿下にアインホルン殿下……」


と、アンジェリーヌが逃げの一手を打とうとするも、絶妙なタイミングで阻止された。

 なんと、もう一人会話に加わってくる人物がいたのである。それは、栗毛にクリッとした目元の、ポテトである。

 ポテトは王子二人に目礼した。

 彼は、男爵家の令息だ。少し身分がう。



 学院においては、身分の差は考慮せず平等に扱われる。しかし、そう言われても家の身分が学院でもつきまとうのは仕方のない事だ。


「やあ、ポテト君だったね」

「はい、アルベルト殿下」

「ひ、ひぃぃぃ! ポテトまで……」


 奇妙な悲鳴が漏れるアンジェリーヌを横目に男三人は盛り上がった。

 ポテトが加わると、空気が和やかに変わる。潤滑油のような男だ。


 しばらくの間、アルベルトとポテトが談笑していた。


「ーー良かったら、堅苦しいのは抜きにしないか? 折角の学院だし」

「それはいいな。親しみやすいよ」


 アルベルトの提案に、アインホルンも賛成した。


「それは畏れ多い」


 ポテトは遠慮したが、二人の王子がポテトを巻き込んだ。

 また、ポテトの態度は、畏れ多いなど微塵も感じてないようだ。


「それでは、俺はアル。アインホルン王子は、アイン。ポテト君はそのままポテトだな」

「よし、それいいな」


 アルベルトが話をまとめ、アインホルンも乗り気だ。


「じゃあ、アルにアイン。よろしく頼むよ」


 ポテトも、すっかり溶け込んだ。

 と言うより、ポテトが間に入ることにより王子二人がテンポ良く話が出来ている。

 さきほどの社交的な雰囲気とは異なっていた。

 アンジェリーヌは、ゆっくり、目立たないように、数歩後退している。

 三十六計逃げるに如かず。


「「それに、アンジェ」」


 少年三人がアンジェリーヌの方を振り向いた。

 ーーアンジェリーヌの愛称呼びも、決定事項のようだ。


「い、いやーッ! 私を破滅に追いやらないでッッ!」


 訳のわからない叫びを上げ、アンジェリーヌは逃げ出すのだった……。


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