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デート2

お読みいただきありがとうございます。ミルフィアとアーサーの関係が良いものになりそうです。

暇つぶしにどうぞ。

 ピクニックへ行ってからアーサー様のアタックが始まった。

ランチタイムにはミルフィアを教室まで迎えに来て、特別室まで連れて行き三人で食事をする。

賑やかに食べるのが当たり前なので抵抗はなかった。会うと必ず綺麗だねとか可愛いねと言ってくる。


兄が褒めてくれるので耐性はあったが心が揺れた。

このまま婚約してしまえばサライ様から完全に逃げてしまえるという心の声も聞こえて来るのだ。


そんな事を考えていたからだろうか、久しぶりにショップの売り場に立った時にお客としてサライ様が来た。


「こんにちは、ここ君の店だったの?」


「いらっしゃいませ、ここは兄が代表のお店です。今日はたまたま顔を出していました。いつかは助けてくださりありがとうございました。直接お礼も言えず申し訳ございませんでした」


「目の前で傷ついた人がいたから助けた、それだけだよ。気にしないで。それにあの人わざと君をめがけて本を落としたような気がした。周りにいた生徒にも目撃者は沢山いたよ」


「そうですか、もう済んだことですから気にしていません。どんな方だったのかも覚えていませんので」


多分お兄様が何らかの処罰を下したんだろうなとミルフィアは思った。それが兄だ、やられっぱなしでいるわけがない。


「何か目につくようなものがございましたら店員にお申し付け下さい」


リオに接客を頼み応接室に下がった。


ふう、なんか気が張る。アーサー様の話を受ければ正々堂々と撥ね退けることが出来るのよ。考えるべきかなと思ってしまったミルフィアだ。


サライ様は真ん中にブルーカイヤナイトがはめ込まれた時計を買って帰ったらしい。


さっきあの人って言ってたけど、出会っていなかったってことかしら。深く考えるのはやめよう。

人は変わるのよ。油断はしないわ。


毎日アーサー様が迎えに来るので学院では恋人認定されている。氷の公爵令息様がモーガン兄妹に甘いという事が認識されているのかもしれない。


それでも


クリンガム公爵令息様に相応しくないくせによく一緒にいられるわね


と言う嫌味が聞こえて来ることがある。


そういうところが嫌われるのよと教えて上げたいが、そういう人には親切にする気はないので黙っている。




二度目のデートは街歩きだ。もちろんその日に着るワンピースは三日前に届いた。今回は薄いピンク色のプリンセスラインでスカートの裾にレースがあしらわれていた。可愛い、好みがどうして分かるのかしら。


午前中にアーサー様が迎えに来た。白いシャツと黒のクラヴァットで相変わらず麗しい。薔薇の花束を持ち玄関に立たれる姿が決まっている。存在するだけでオーラが出るなんて凄すぎる。これでお出かけしたら目立ち過ぎるのではないかしら。



「今日も凄く可愛い、この薔薇よりも綺麗だよ」


と花束を差し出しながら囁かれた。ミルフィアは真っ赤になって俯いたが


「アーサー様も素敵です。目立ちすぎて反則です」


とだけやっと言うことが出来た。


「さあ行こうか、変身の秘密兵器が馬車の中に置いてあるんだ、楽しみにしてて」


「そうなのですか?楽しみです」


「そのキラキラした目がたまらなくいいね。ところでロハンは何処に?」


「お兄様は家の用事でお出かけです。一緒に行かれないと悔しがっておいででしたわ」


「デートに付いて来ようなんて野暮もいいところだ。用事があって良かったよ」


変身の秘密兵器とは黒い髪の鬘と黒縁のメガネだった。それだけで別人になったようだ。でもやはり気品は隠せていない。


前世の記憶の欠片で黒髪に反応してしまう。眼鏡男子にもきゅんと来た。


前世の好きな人が眼鏡をかけていたのだろうか、知りようもないけどアーサー様には勝てないだろう。


「そんなにこの姿が気に入った?じっと見てくれて嬉しいよ」


「あっ失礼しました。思いがけなかったので見惚れてしまいました」


「デートのときはこの姿にしようかな、ミルフィアちゃん特別仕様、どう?」


ミルフィアはなんと返事をしたらいいのかわからず赤くなって俯いてしまった。


「それは良いということだね、これで君を落としたら婚約してくれるのかな?あっ質問のプロポーズは駄目だったんだよね。まだ時間はあるから覚悟しといてね」


ミルフィアがドギマギしている間に街へ着いたらしい。馬車を降りアーサーがエスコートをしてくれ、手を繋いで歩きだした。もちろん恋人繋ぎだ。


街は賑やかで多くの店があり、出店も沢山並んでいて人々を楽しませていた。おなじみのクレープ屋やアイスクリーム屋には人が列を作り、肉を串に刺して売っている店からはいい匂いが流れて来ていた。


「ランチは何が食べたい?色々買って食べてみようか」


「はい、いつもは見るだけで食べた事がないので嬉しいです」


まずは肉の串刺しから買ってみた。甘辛いタレが香ばしい焼き目に合ってとても美味しい。アーサー様は三本も食べていた。

わたくしは一本、後でクレープやアイスも食べるつもりだから。


アイスを食べている時にじっとアーサー様が口元を見つめていた。アイスが付いているのかとハンカチを出そうとしたら人差し指で掬い取られぺろっと舐められた。さっきから翻弄されっぱなしだ。大人の余裕かしら、どきどきが止まらない。


遠くからわたくしの店の様子を見た。沢山の人が出入りをして下さっている。嬉しいので思わずにっこりしてしまった。


「店は順調だね、いい店だから大事にしないとね」


「はい、うまく行って良かったです。皆に助けてもらったので潰れたりしたら申し訳がないところでした」


「潰れないよ、君が考えて作った店じゃないか、上手く行くさ」


「そう言って頂けて嬉しいです」



それから王立植物園に行き散歩をした。色々な花や木が植えてあり見応えがあった。相変わらず手は恋人繋ぎのままだ。

植物園の中にあるカフェで一休みすることになった。

歩き続けて喉が渇いていたので心遣いが嬉しい。


案内された席は下の花の様子がよく見える場所だった。

わたくしがチョコレートのケーキと紅茶をアーサー様は珈琲を頼んだ。


「珈琲だけで宜しいのですか?甘いものは疲れを癒やします」


「疲れてなんていないよ、君と一緒なんだから。羽が生えて飛びそうなくらい元気だ。美味しそうに食べている君を見るのも楽しいんだ」


「それは良かったです、このケーキ美味しいですよ。一口どうぞ。あっごめんなさい、お兄様じゃないのに失礼しました」


「ロハンにあーんをしているの?許せないな、もう子供じゃないんだからやっちゃ駄目だ」


そう言いながらミルフィアの手首を持ちぺろっとケーキを食べてしまった。


これ他人にしては駄目だった。わたくしったら何という事をしてしまったのかしら。それで叱られたの?でもアーサー様の顔は笑っている。


「良く分からないって顔をしているよね、いいかい?僕は君が好き、君たち兄妹が仲が良いのは知っているけどあーんはもう止めて欲しい。これは嫉妬だよ」


「嫉妬・・・ アーサー様がわたくしを好き?」


「納得がいったかい?いつも溺愛されているから慣れてしまって感覚が鈍くなってしまっていると思うんだけど、僕をこんな気持ちにさせるのは君だけだ」


小説にアーサーという人物は出て来なかったはず。だから全然警戒していなかった。つまりこの容姿で高い身分なのにモブ扱い。なんて贅沢な作品だったのかしら。


でもわたくしはサライ様に嵌められてバッドエンドになる設定で書かれていた。だから抗うように生きてきた。アーサー様だとこれからも平和な生活が保証される。考えてみてもいいかもしれない。

ここへ来てやっと自分の立ち位置について気がついたミルフィアだった。


「アーサー様場所を変えませんか」




ようやくアーサーの気持ちに気付いたミルフィアです。シスコンロハンの手のひらで転がされている感があります。

誤字脱字報告、ありがとうございました。大変助かっています。直ぐに訂正をしました。

応援ありがとうございます。力になりました。これからもよろしくお願いします。


次作 貴方の愛は誰のもの? 記憶を無くした私は消えようと思います  を執筆中です。 

読んで頂けると嬉しいです。

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