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デート1

アーサーとミルフィアの初めてのデートです。読んでいただけると嬉しいです。

 ミルフィアとロハンとアーサーは都合のつく限り一緒にランチを摂っていた。アーサーはあと半年で学院を卒業する。その後は宰相補佐だ。

もっと狙われて大変だろうなと想像するとなんだか気の毒になった。


「ミルフィアちゃん、気の毒なものを見るような目はやめてくれる?君たちと過ごすこの時間が僕にとっての癒やしなんだから」


「えっどうしてわかるんですか?心が読めるのですか?」


「顔に書いてあるよ、これ以上女性に追い回されるアーサー様って可哀想ってね。ねえ同情するなら婚約してくれない?」


「何を仰っているのですか?同情はしますけど婚約はしません。それにこんなところで仰ってもロマンチックのかけらもありませんわ」


「全くミルフィアの言うとおりです。なにを考えているのですアーサー」


「そろそろ婚約をと親から言われていてね、女性は苦手だけどミルフィアちゃんは側にいても大丈夫なんだ」


「僕が一緒だからでしょう。どうしてもミルフィアじゃないと生きていけない男じゃないと許しませんよ。浮気でもして泣かせたりしたら何をするかわかりませんよ」


「そういう男だったねロハンは。ごめん簡単に口にするべき言葉ではなかった。ミルフィアちゃん今度二人で会ってみない」


「そこでどうしてその誘い文句が出てくるんですか?」


「まずはデートからだろう?いつもロハンが一緒にいるじゃないか、二人になった時の僕がどんな男か知ってもらいたいんだよ。ロハン許可をくれ」


「貴方という人は僕を構ってばかりだ。どうする?断ってもいいんだぞ」


「アーサー様は楽しい方だと思います。危険ではないですし一度くらいなら構いません」


「危険ではないのは確かだ、信用はしている。ミルフィアがこう言っているので一度だけ許可しますよ。仕方がなくですよ」


「二人に貶められているような気がするのだが、気のせいだろうか?」


「「褒めてます」」


「流石に気が合うね、君たち。最初のデートはどこか希望がある?」


「アーサーは目立ちますから、一時間ほど馬車で行った所に綺麗な丘があるので、そこにしましょう」


「どうしてロハンが決めるの?ミルフィアちゃんの希望は何処か言って」


「そこがいいです、暫く遠出をしていませんでしたので楽しみです」


「本当に気が合うんだね、羨ましいよ。ピクニックだからお弁当は公爵家のシェフに頼むからね。準備は全部こちらがする。当日のワンピースも僕が選んで贈るからね。来てくれるだけでいいよ」


「手慣れていらっしゃるのですね」


「当たり前のことだよ、素敵なレディをエスコートするんだから」



デート当日天気は快晴になった。朝起きてロハンと一緒に朝食を取りながら


「お兄様は何をされるのですか?」


「アクセサリーの店を覗くよ。売れ行きは好調のようだけど、顔を見せて気持ちを引き締めてもらわないと」


「お兄様が行かれると確かに気合が入ると思いますわ。次期侯爵ですもの」


「ああ、楽しんでくるんだよ。これからアーサーに貰ったワンピースに着替えるんだね」


「淡いクリーム色でした。後で見てもらっていいですか?」


「もちろんだよ、どんなセンスか見せてもらおう」


「まあ、お兄様ったら。素敵なワンピースでしたわ、ただわたくしに似合っているかどうか見て頂きたいだけですのよ」


「似合ってなかったらアーサーに文句を言うだけだ」


「では着替えてきますね、お兄様のところへ行きますから待っていて下さい」




簡単なワンピースなのでメイドの手は借りず一人で着ることができた。淡いクリーム色のワンピースはとても軽く最高級の生地が使われていることがわかるものだった。

ネックレスは小粒のダイヤが花のようにデザインされたものにした。歩きやすいようにローヒールの白い靴だ。ソックスも白にした。レースが付いていてお気に入りなので何足か持っていた。帽子も白でつばの広いものだ。

ロハンに見せて


「可愛いよ、僕のミルフィアは、妖精のようだ」


と甘い褒め言葉をもらっているとアーサーが花束を持って迎えに来た。


「迎えに来たよ。なんて可愛いんだ、手を離すと何処かに飛んでいきそうな天使じゃないか。よく似合っている」


と甘い言葉のダブル攻撃を受けてしまった。花束をリオに渡して部屋に飾ってもらうように頼んだ。


貴族男子の凄さを改めて実感した朝になった。


「さあ行こうか?」


「はい、アーサー様今日も素敵ですね」


アーサーは白いシャツと黒のジャケットと黒のクラヴァットでスマートな出で立ちだった。


エスコートをされ馬車に乗り込んだ。侍女は後ろの馬車、護衛は並走している。目立たないように馬車には家紋はなく護衛の服装も地味に抑えてあるが、高位の貴族感が半端なく出ている。


アーサーが街を出るまでカーテンを引いてくれたので、気づかれずに王都を抜け出すことが出来た。


ミルフィアは隙間から少しだけ外を覗かせてもらった。人々が元気よく挨拶をしたり、店を開ける用意をしたりしているのがわかり、思わず微笑んでしまった。


「外を見るのは楽しいかい?学院へ行くときに見るだろう」


「学院への道と郊外への道は景色が違っていて新鮮なのです。だんだん人が少なくなって木々が増えてきてとても綺麗です」


「確かにそうだね、君といると気付くことがたくさんある」


「光栄です。これから行くところはどんなところなのか期待して昨日はなかなか眠れませんでした」


「ロハンに聞かなかったの?」


「教えてもらえませんでした。聞かないほうが楽しめるよと言うんですの」


「そうかもしれないな、僕も昔行っただけだからあんまりはっきりとは覚えていないんだ。でも安全は屋敷の者に確認をさせたから大丈夫だよ」


「そこは心配していません、アーサー様が危ないところに連れて行くなんて考えられませんから」


「ロハンがと言いたいところを僕に置き換えていい子だね君は」


「そんな事は少しだけ考えていたかもしれないです」


「正直で大変良いよ」


顔を見合わせて笑ってしまった二人だった。


目的地の丘に着いた。草が刈られ歩きやすくなっていたので手を引いてもらって丘を登った。

アーサーが手を恋人繋ぎにしてくるのでミルフィアは、どぎまぎしてしまった。


手を繋ぐなんて小さな頃以来だわ。アーサー様は平気そうな顔ね?わたくしばかり意識していたら変に思われるわ。手を引いて頂かなくては登るのは大変ですもの。


「さあ、着いたみたいだ」


「まあなんて綺麗なところでしょう、向こうの方に湖が見えるのですね。花も沢山咲いていますし木を近くに感じられるのもいいです」


「喜んでくれて良かったよ。さすがロハンだハズレがない。今度は僕が見つけたところに連れて行きたいな」


「今度なんて。本命の方ですよね、わたくしなんてまだ子供ですのに」

「子供だなんて思わないよ。成人してはいないけど中身が大人なのではないかと思う時がある。しっかりしているというか。捨てるような石を使ってアクセサリーを作るなんて普通の令嬢には考えつかないと思う」


ミルフィアはどきっとしてしまった。知らないうちに前世の記憶が混ざって考えついたのかもしれないと思ったからだ。


「ただ綺麗なものが好きなだけですわ。どうやって大きな宝石が作られるのか宝石屋さんに聞いたことがありましたの。削りかすが結構出るけど使い道がないと。女の子は可愛いものが好きなので何か作れないかなと思ったのです」


「発想が凄いんだよ、他人が考えないことを思いつくのは素晴らしいことだよ。それに本命は君しかいないよミルフィア」


「からかわないでください、本気にしたらどうするのですか?後で失敗だったなんて願い下げです」


「さすがにそんなことはしないよ、僕は女性に対して恐怖感がある。ずっと嫌いだった。でもミルフィアにそんな事を感じたことは一度もない。感じるのは居心地の良さだけだ」


「お兄様の言われた通り三人でいつもいたからではないですか?」


「そうかもしれないと思って、今日デートに誘ってみた。だけどそれだけではないとはっきり分かったんだ。考えてみてくれないか、僕では駄目だろうか?」


「今すぐお返事をするのは無理ですが時間を頂ければ考えてみます」


「そういうところも良いんだよね、僕の地位や顔に惹きつけられていない。僕を見てくれているというところが好きなところなんだ」


好きってさらっと言った。心臓に悪い。自分の言葉の破壊力をわかっているのかしら?五歳年上の余裕をこんなところで出さないで欲しい。


「好きと言われましても愛や恋の好きではないのでしょう?」


「愛や恋の好きだよ、他にない」


「えっそうなのですか?」


「そっちに決まってるじゃないか、でなきゃ、こんな事言わないよ。僕は浮気はしないし優良物件だと思うけど」


「ロマンチックな場所ですが、ロマンチックな申込み方ではないかと思いますわ」


「えっ、そうなの?どういうのが好みか教えてくれる?」


「聞いてこられるところが駄目です。ご自分で考えて下さらないとわたくしは嫌です」


「厳しいね、そういうところも好きだ。それはそうとランチにしない?公爵家の特別ピクニックランチだよ」


「頂きたいです」


「では用意をさせよう」


そう言った途端、何処からか現れた侍女や護衛がさっと敷物を広げ大きな籠と飲み物を用意した。


籠の中身はジューシーなお肉が挟まれたサンドイッチやハムとチーズを挟んだ物、ローストビーフとレタスが入った物、女の子用にだろうか、フルーツサンドの各種、苺に葡萄、オレンジが見栄え良く並べてあった。紅茶をさっと用意すると侍女が離れて行った。


「こんなに沢山頂けませんわ」


「大丈夫だ、僕が食べる。外でなら空気が良いから一層食事が進むと思う」


「それは心強いです。では頂きます」


アーサーの言った通り外ではいつもより食欲が湧き、つい食べすぎてしまったミルフィアだ。アーサーもびっくりするくらい食べていたので笑顔が絶えないランチになった。









誤字脱字報告ありがとうございます。大変助かっています。

これからアーサーの追い上げが始まります。

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