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新しい出会い

読んでいただきありがとうございます。引き続きお楽しみいただけたらと思います。

 父親に相談するとアクセサリーから始めるのがいいのではないかと言われた。出入りの宝石商は信用のおける人物なので、話をしておいてやろうと言ってもらえた。


宝石商によると、細かな細工をする時に出る小さな欠片は、職人が変な気を起こさないように、集めて厳重に保管されているそうだ。

しかし使い道を思いつかなかった為、溜まっていく一方だったらしい。それを侯爵家が良い値段で引き取ってくれるとあって、大喜びで譲ってくれることになった。


キラキラと輝く小さな石を見せてもらったミルフィアは、期待に胸を躍らせた。デザインは自分で考えるつもりだ。

後は腕のいい職人を探すだけになった。


リオは侍従として成長をしていた。お茶を淹れたり、ミルフィアを起こしに来たり、護衛の役目をこなしたりするようになっていた。街歩きのときは複数の護衛の一人になった。


部屋にお茶を持ってきたリオが珍しそうに石を見た。


「これがキラキラした宝石になるのですか?」


「そうよ、これを加工して小さなアクセサリーを作りたいの。可愛くなると思うのよね」


「手先が器用な者がいないと駄目ですね。そういえばお嬢様、今にも潰れそうな時計屋があるんですが、そこの店主ならやってくれるかもしれません」


「今度行ってみましょうか?一個だけ石を持っていって細工ができるかどうか聞いてみてもいいかもしれないわ。人柄はどうなのかしら。変な人だとお父様が許してくださらないかもしれない」


「旦那様に確かめて頂いた方が良いですね」


「お父様に相談しなくては。お会いできるようにお願いをしておいて」


「かしこまりました」


結局宝石の細工職人と時計屋は職種が違うという事でこの話は流れたが、時計の飾りに小さな宝石を付けたらどうかと、ミルフィアが提案して試作品を侯爵家に届けてもらうことになった。


リオが潰れそうだと言っていた通り、お先真っ暗な状態だったらしい。時計屋は一世一代の仕事だと腹を括って頑張り、丁寧に造り上げて侯爵家に届けに来た。

門のところで入りにくそうにウロウロしていたのを見た門番が、「旦那様にお届け物があるのかい?」と声をかけてようやく頷いたらしい。


家令に案内された時計屋は恐る恐る屋敷の中に足を踏み入れた。

商人用の応接室に案内された時計屋は、侯爵が入ってくるまで落ち着かなそうに立っていた。余りに場違いな所へ来た気がしたからだ。メイドがお茶を出し、お座りくださいと言われてからようやくソファーの端に座った。


侯爵が入ってきて

「時計ができたそうだね、見せてもらってもいいかな?」

と声をかけた。

「はいもちろんでございます。こちらが製品でございます」

「おおこれは控えめで良いね。あまり派手なものは普段使いには向かないからね」

と懐中時計を見て言った。そしてポケットマネーで多すぎるほどのお金を渡した。困ったのは時計屋である。

「こんなには頂けません」

「そうか、それならこの金額で儲けを引いてから何個か時計を造って貰えないだろうか、それならちゃんとした取引だから構わないだろう。これを考えたのは娘なので自慢したい親心が入っているのだ。また石は届けさせるから」

「かしこまりました。ありがとうございます」


こうして時計屋は危機を逃れ、まともな生活が出来るようになった。おまけに侯爵様御用達と看板に書いていいという許可を貰って、さらに栄えていくことになる。もちろん目玉は宝石入りの時計だ。


小さな宝石をアクセサリーに加工する職人の話は時計屋からもたらされた。これまた潰れそうな町の金属加工をしている職人がいるという話を聞いて、父に頼んで調べてもらった。


父侯爵と一緒にその工房に行ってみることになった。 町外れにあるその建物は今にも崩れそうな感じだったが、先に連絡が行っていたので外が綺麗に掃き清められ、中も思ったよりも清潔な感じだった。


「お邪魔するよ」

護衛がまず声をかけてからドアを開けた。中にいたのはまだ若い男性だった。 

「君が職人さんかな?」

と言う侯爵の質問に

「はいそうです。今日はどのような御用でしょうか?」

「君に見てもらいたいものがあるんだ。この石なんだが」 

そう言って石をいくつか見せた。

「これは綺麗な物ですね。これをどうしろとおっしゃるんですか?」


「ミルフィア説明しなさい」

「こんにちは、ミルフィアといいます。貴方にこの石の加工をお願いしたいの」

「お嬢様、私はハンスといいます。まず自分の加工しているものを見ていただいてからでよろしいでしょうか?」

「もちろんよ、貴方がどんな物を作られるのかとても興味があるの」


ハンスが作っていたのはとても繊細な金属を加工したアクセサリーだった。ブローチや指輪、ネックレスまである。

「素敵、どうしてこれが売れなかったのかわからないわ」

「商売の才能がないのです。それに貴族の方は宝石がついているものを求められます」

「これに持ってきた石を使ってもらって低位の貴族の令嬢や裕福な庶民の方に受け入れられるものを作りたいの。女の子って可愛いものが好きなのよ、恋人から贈られたり、自分で買ったりするのはとても楽しいと思うの。貴方のデザインはとても美しいわ。値段的にはおいくらくらいするのかしら」 


「お嬢様のお小遣いで買えるくらいかと」

「まあ、ごまかしたわね。でもいいわ、貴方の腕は良さそうだもの。ねえお父様きちんとした契約をハンスさんと交わしたいですわ、立会人になってくださる?」

「いいが、公平にするには弁護士を立会人にするのがいいだろう」

「それではそういうことでよろしくて?遠慮はしないでね。儲かってきたらまた考えるということにしましょう」


「いいんですか?私などで」


「もちろんよ、気に入ったんですもの。この作品を作られる方ならわたくしのデザインしたものも作って下さると信じられました。わたくしがここに通ってくるのは色々不都合がありますの。学院に行っているので時間や警護の関係で。屋敷まで来ていただけます?」


「はいお伺いいたします」

「ありがとう、小さな宝石でアクセサリーを造って頂いて皆様に喜んで頂けるようにするのが夢でしたの」


ミルフィアは今度は小さな店舗を探さないとと頭の中はその事で占められていた。店の中の配置まで考え始めていた。


「ミルフィア戻ってきなさい、思考があっちの方へ行っているよ」


「ごめんなさいお父様。楽しくなってしまいました。ハンスさん一作目はわたくしの物をお願いできるかしら?ネックレスがいいわ。鎖は金でお願いね」


「はいお嬢様のイメージに合わせたものをお作りします」


「楽しみです、待っていますね」


着々と夢に向かって歩いているミルフィアだった。



商売のことばかり考えているようなミルフィアだったが、学院でも成績が良く一番を取ることがほとんどだった。


図書館に寄って調べ物をしていると兄がやって来た。

「ミルフィアは、何を調べているの?」

「お兄様、お昼以来ですわね」

「随分会ってない気がするんだよ」

「気の所為ですわ」


「君たちほんとに仲良しなんだね」

笑いを含んだ声が頭の上から聞こえてきた。思わず見上げると彫刻かと思うほど整った顔の上級生が兄妹を見ていた。 


「はじめましてご令嬢、アーサー・クリンガムだ」 


「ミルフィア・モーガンと申します。兄をご存知なのですか?」


「ロハンとは友達だよ」 

その時司書のわざとらしい咳が聞こえてきた。

場所を変えた方がいいと思った三人は談話室に移動した。                                                               

                                                        

生徒用に設えられているその部屋は貴族のためのものとして整えられており、上品な室内だった。どっしりとしたテーブルに座り心地の良いソファー、簡単なキッチンのようなものまでついている。メイドや侍従がお茶を淹れるのに使うのだろう。


今もアーサーの侍従が紅茶を淹れ三人の前に置いてくれた。


「いつもロハンから君の自慢を聞かされていてね、いつか実物に会いたいと思っていたんだよ、思いがけず会えて嬉しいよ。ロハンの言う通り可愛いね、納得した」


「お兄様は妹大好き人間ですので、話半分で聞いて頂けると正解になるかなと思いますわ」


「そうなのかい?ロハンは真面目なんだけど、君のこととなると激甘だからね。僕もこんな妹が欲しいな。ロハン、権利を少しだけ頂戴」


「駄目に決まってるでしょう、許すわけがない。僕の妹なんですから」


「意地悪だねえ、いいよ勝手に兄に立候補するから。いいよね、ミルフィアちゃん」


ミルフィアは二人の仲の良さにびっくりしていたのと、言われたことに理解が追いついていなかったが不快ではなかったので頷いた。

すかさずミルフィアを抱き寄せたのは兄だった。


「ミルフィアは僕の妹です。渡しません」


「心が狭いね、たまに話をするだけなのに駄目なのかい?」


「話をするだけですよ」


思わず笑ってしまったミルフィアは顔を引き締めながら


「お兄様、クリンガム公爵令息様と本当に仲が良ろしいのですね」


「ああ、仲良くさせて頂いている。いい友達なんだ」


兄に気の許せる友達がいて良かったと思うミルフィアだった。




誤字報告ありがとうございます。大変助かっています。感謝しかありません。

ミルフィアは着実に足元を固めるために頑張っています。

シスコンのロハン君との掛け合いがお互いの癒やしになっています。ミルフィアは未だに強制力に怯えているので。

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