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ミルフィアの実行

お読み頂きありがとうございます。暇つぶしにしていただければ嬉しいです。

 ミルフィアは混乱していた。まだ六歳なのに婚約予定のサライに会ってしまった。


小説と似たようなことが起きている。でも婚約の話が出ているわけでもない、落ち着かなくてはと自分に言い聞かせたミルフィアだった。


もしそういう話になった時の対処法を考えておかなくてはいけない。

そもそ何故格下の伯爵家に嫁ぐ話になったのか思い出さなくてはと大きく息を吸って落ち着くことにした。


小説の中では、ミルフィアの一目惚れだった。どうしても結婚したいとお父様にお願いして整った話だった。

それが嫌だったサライが婚約破棄に持ち込むんだった。サライはミルフィアのことが好きではなかったということね。


それなら簡単、私はサライを好きではないし、そんなお願いをすることもない。もし万が一そういう流れになってもお断りすればいいだけだ。


ミルフィアは自分に言い聞かせるように呟いた。


前世のことがわかるのはすでに予知夢として家族だけの秘密にされていたのでいいのだが、一年後に鑑定というチートなスキルがある事が判明した。


他に漏れると縁談が降るように来たり、人攫いに合う可能性が更に高くなったため、秘密として固く守られることになった。


鑑定というスキルは、侯爵家の娘としてはごく普通のものだという捉え方をしてもらえる。小さな頃から本物しか見ていない令嬢だからこそ、出来て当たり前で済まされる。とても幸運な物だった。


きっかけは母と屋敷に商人を招いた時だった。大小色々な宝石がテーブルの上に並べられ、キラキラとその輝きを放っていた。

ミルフィアにもブローチを買ってあげましょうという、母の一言で同席させられていた。その時に石の価値を一瞬で見抜いたのが認められた最初だった。


まさかと思った母は屋敷の中の骨董や絵の価値を、ミルフィアに言わせた。

間違いのない鑑定眼に驚いた母は夫と息子に知らせた。

家族は興奮していたが、もちろんミルフィアも拳を握りしめた。


これで結婚しなくても一人で生きていけるという確信が得られたからだ。


子供のうちからこの能力でお金を貯めよう。街で売られているものの中に掘り出し物があるかもしれない。それを適正価格で売れば利益が出る。それを貯金に回すのだ、大人になるまでにかなりの金額が貯まることが予想できた。


頭の中では簡単なのだが実践するのには無理があった。外出して買い物というわけにもいかない。まだ六歳なのだから。そこで父親を味方に付けることにした。


「お父様、ミルフィア、経営の真似事がしてみたいの。この目を使ってお金儲けがしてみたい」

「うちはお金があるんだよ、ミルフィア。お前に分けてあげる財産も沢山あるんだ。心配はいらないよ」

「ミルフィアは、小さいからお買い物は行けないでしょ。だから、お父様やお母様と一緒にお出かけした時にお買い物をしてお役に立ちたいの」

「お父様はなかなか付き合ってあげられないけど、お母様が出かけるときなら許そうか。ただしお母様の許しがあるときだ」

「ありがとうございます、お父様」


年に数回ある母とのお出かけを有効に使ったミルフィアは、確実に資産を増やしていた。

そんなミルフィアを兄は微笑ましそうに見ていた。いずれ家を出る妹の財産はできるだけ多いほうがいいと思っていたからだ。


いくら財産の豊かな家に嫁いでも、自分のお金があるというのは大事なことだとは勉強していてわかったことだ。


ロハンも領地経営をやっていかなければならない。家を盛り立てるという厳しさは、父の仕事ぶりを見ていれば少しだけだがわかるような気がしていた。


着々と自分で生きていく力を付けたミルフィアは、平穏な毎日に油断していたのかもしれない。


八歳の時に、スタンレイ伯爵から息子とのお見合いを是非お願いしたいと頼んで来たのだ。

父はまだ早いと断ってくれたようだが、子息が是非お会いしたいと願っているらしく粘られたと言った。


相手はあのサライ・スタンレイ、断ってもいいなら一度だけ会ってもいいと、

仕方なく重い気持ちで返事をした。

暗い顔をした娘に心を痛めた父親はそんなに嫌なら止めようかと聞いた。


父がした約束だ。違えるわけにはいかないだろう。貴族令嬢として毅然とお断りをしよう。小説を思い出し、好きでもないくせに何故会いたいと言うのかわからないミルフィアだった。


顔合わせの日がやって来た。朝から憂鬱な顔をしたミルフィアを家族が心配そうに見ていた。


予知夢でサライは将来浮気をし、冤罪をかけて私を貶めると家族には伝えてある。

今まで予知夢で色々な災害が起きることを言い当てていたミルフィアを家族は信用してくれていたので、その話もすんなり信じてもらえたので良かったと思う。

後は会って断るだけだ。父親はしきりに謝ってくれたが仕方がない。ミルフィアは覚悟を決めた。


スタンレイ夫妻とサライが侯爵邸にやって来た。


「お待ちしておりました。さあ中へお入り下さい」

家令が応接室へ案内した。お茶をメイドが運び目の前で淹れた。子ども達と夫人達のためにお菓子も用意されていた。

そこへミルフィアを連れた侯爵夫妻が入ってきた。


「ようこそおいでくださいました」

「こちらこそご無理を言ってしまい申し訳ございません」

「これが娘のミルフィアです」

「ミルフィアと申します」

とカーテシーをした。

「まあ綺麗なお嬢様ですこと」

サライは緊張しているのか固まったままで

「サライ・スタンレイです」

と言った。


「ミルフィア、サライ君に庭を案内してあげなさい」

「はいお父様、参りましょうサライ様」

サライは黙って付いてきた。


「お花はお好きですか?沢山の花が咲いていますがどれかお好きな花はありますか?そちらのテーブルでお茶にいたしましょう」


「ありがとう、花はよくわからないですが好きです。今日は無理なお願いを聞いて頂きありがとうございます」


「昔家に遊びに来ていらっしゃいましたね。兄と遊ばれていたと思うのですが何故私と会いたいと言われたのでしょう」


「貴女がピアノを弾いていたのが可愛らしく、お兄様の後ろに隠れてしまわれたのもなんて可愛いのだろうと、ずっと思ってきました。もう一度貴女に会いたいと願っていました。ご迷惑かと思いましたが、父に無理を言ってこの場を作って貰いました」


「これから大きくなるのですから、もっと素敵な方が現れると思います。私も学院に行くようになったらお友達をたくさん作りたいと考えています。その時に婚約者がいたら友人が作れなくなるかもしれません」


「ミルフィア様以上の方が現れるとは思えません。それに友達は作られたらいいと思います、僕も友人を作りたいです。交友の場ですよね、学院は」


(そう思うでしょう?だから貴方とは関わり合いになりたくないのよ。どうせ浮気するんだから、今から面倒な関係はやめましょう)


できるなら声に出して言ってやりたいミルフィアだった。









誤字脱字報告ありがとうございます。前回でヒーローの家名を間違えてしまい申しわけありませんでした。メモを手元に置いているのですが...  連休中も更新していきますのでよろしくお願いします。 

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