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婚約破棄?

お読みいただきありがとうございます。

暇潰しにどうぞ。

 ミルフィアとアーサーは郊外の湖の畔に場所を変えた。


アーサーはミルフィアの前で跪いて婚約を申し込んだ。


「ミルフィア、僕と婚約して欲しい。一生貴女だけを愛すると誓う。浮気なんてしない」


「アーサー様、婚約のお話お受けいたします」


「嬉しいよ。こんなに誰かを愛することが出来るなんて思っていなかった。これは僕からの婚約の贈り物だ」


差し出されたのは深い青の箱に入ったラピスラズリの指輪だった。


「ミルフィアには地味かもしれないと思ったんだが僕の瞳の色だ。そして石の持つ意味は 飛躍 身に着けて貰えたら嬉しい」


「わたくしがお受けするとお考えになっていたのですか?」


「いや、もしそうなった時には指輪を贈りたいと思って用意していたんだ。何も用意しないで申込みをするのは許されないと思って」


「指輪をはめて下さいますか?」


アーサーはミルフィアの小さな手を取り薬指に指輪をはめた。


「綺麗です。サイズもぴったりです」


「良かった。手を繋いだときくらいしか指のサイズがわからないから苦労したよ」


「慣れていらっしゃるのだと思いました」


「慣れてなどいない、どれだけ僕が女性恐怖症か知らないから・・・話せるようになったらでいいかな?」


「話されなくていいですよ。嫌なことは忘れる方がいいのですから。無理は駄目です」


「ありがとう、貴女は透き通った湖のようだ。心が綺麗になっていく。

卒業したら仕事が始まり忙しくなるだろうが、何としてでも会う時間は作る。忘れられては困るからね」


「忘れるはずはございませんけれど会う時間は大切ですわね」


「ねえもう少し砕けた話し方をしてくれない?ロハンと話している時のような、妬けるんだ」


「そんなに砕けた話し方はしていないと思うのですが、では遠慮なく。  じゃあ沢山会ってくれたら嬉しいわ」


「いいね、そんな感じでお願いしたい。婚約者になったという実感が湧く」


「お兄様を悔しがらせたいだけなのではないですか?」


「まあそれもあるかもしれない、ロハンには対抗心が湧くんだ。ねえ凄く抱きしめたいんだけど許してくれない?」


「はい」

真っ赤になったミルフィアは俯いてしまった。アーサー様はとてもいい香りがした。柑橘系の香りだ。胸板もお兄様より少し厚い気がする。


「こうしていると、とても落ち着く。ミルフィアの甘い香りが僕を包む。何の香水?」


「香水はつけていません。お風呂の香油くらいでしょうか」


「そうなのか、きつい匂いは苦手だから。今度二人でミルフィアに合う香水を見つけに行こう。あっ言葉が戻ってしまったよミルフィア」


「なかなか直ぐには変えられないわ、少しずつでいいかしら」


「ああそうしてくれたら嬉しいよ、僕だけのミルフィア。明日侯爵に申し込みに行かせてもらうよ。いらっしゃるかな?」


「帰ったら聞いてみるわ」


「これから食事をして帰ろうね。レストランを予約しているんだよ。婚約の記念になるような場所を選んでおいて良かった」


アーサー様の瞳が蕩けていた。


公爵家御用達のレストランなのでサービスはもちろん味も一流だった。キャンドルが置かれピアノ演奏が流れている。会話の邪魔にならないくらいの音だ。綺麗な花が配置よく置かれていた。


食事を楽しみながらアーサー様が

「在学中に婚約式をしよう。ミルフィアが卒業したら結婚式を挙げよう。どんなドレスがいいか考えておいて」

と言われた。


ウエディングドレスといえば真っ白なレースという前世のイメージが浮かんだ。婚約式のドレスはどんな物にしよう、アーサー様の卒業式まで後二ヶ月しかない。帰ったらお母様と相談しなくては。忙しくなってきたミルフィアだった。


翌日公爵様とアーサー様が我が家を訪れ婚約が書類によって交わされた。

昨日帰ってから家族にアーサー様の事を伝えた。両親は驚いていたが兄は普段通りでむしろ口角が上がっていたようだった。アーサーの両親は息子が結婚してくれる気になったとあって大喜びだった。


母はやはり婚約式のドレスが気になるようで、デザイナーを急いで呼び注文をした。薄いピンク色のプリンセスラインで、裾は長く襟に繊細なレースが、スカート部分にはシフォンを重ね小さなダイヤが付けられてた。


婚約式は卒業式の二週間前に公爵家が持っている教会で双方の家族だけで執り行われた。青空が広がり小鳥の囀りが聞こえる良い日だった。


アーサーは白のタキシードで彫刻のような容貌がそれを引き立てていた。


ミルフィアを見たアーサーは


「僕の天使はなんて美しいんだ、そのまま何処かへ飛んでいきそうだ。何処にも行かないでね」


と言って抱きしめ頬にキスをした。


「何処にも行きません。離さないで下さい。アーサー様とても素敵です」


と赤くなってどうにか言葉を返した。



婚約の噂は直ぐに広まり皆の知るところとなった。卒業式も近いので皆自分のことで忙しいらしく特に騒がれることもなかった。


婚約の印にお揃いの小さなダイヤで作ったペアリングを左手の中指に着けることにした。

これはミルフィアの発案だ。クラスメイトに気づかれヒット商品になったのは言うまでも無い。





ミルフィアは十五歳になっていた。アーサーは宰相補佐の仕事に振り回されながらも、会う時間を無理やりもぎ取っているらしく、デートは順調に出来ていた。

いつも花束を持ち屋敷まで迎えに来る時の顔は蕩けるような笑顔だ。


「もうすぐミルフィアと結婚できる、こんなに幸せで良いのかと思うくらいだ」


「わたくしも無事に卒業式を迎えられそうだし、幸せ過ぎて怖いくらいよ」


ミルフィアは卒業パーティーさえ終われば物語の強制力から解き放たれやっと自由を手にできると思っていた。しかし未だに安心は出来ていない。


過保護なロハンは卒業式とパーティーは絶対見守ると言っていた。中等部と高等部は同じ日に式が行われるので、両親も式には参列する。卒業パーティーなのでパートナーがいなくても参加ができる。ロハンにはまだ婚約者はいなかった。

アーサーはパーティーのエスコートは自分がするからと言っていたが、仕事がきちんと、終わるのか怪しいところだとミルフィアは思っていた。



家族がいるし、アーサー様までいるのだ。何も起こるはずがないと自分に言い聞かせた。


パーティーが始まった。親世代は自分たちの社交を繰り広げ子供世代はダンスを始めた。ファーストダンスはロハンだった。やはり間に合わなかった。


「兄様で我慢してくれる?多分今頃焦って着替えているかもしれないな」


「我慢だなんて、お兄様と踊るのは楽しいです」


その時会場の真ん中で婚約破棄を叫んでいる令息がいた。サライではなかった。ドミニカ伯爵家の次男だ。

腕には可愛らしいピンク頭の令嬢がぶら下がっている。見た事のない顔だった。


破棄の相手は固まってしまっている。サラーリア伯爵家の長女の方だった。


サラーリア伯爵家に婿に入る立場なのに、何を考えているのだろうかと周りの貴族は思っていた。

伯爵が近づき令嬢を連れて出て行った。婚約破棄はお前の有責で行うと言い残して。



どうしても婚約破棄は起きなければいけないストーリーのようだとミルフィアは、ロハンの腕に掴まりながら溜息を零した。


妹が震えていることに気付いたロハンは両親に話をして屋敷に連れて帰ることにした。馬車に乗り込み肩を抱きしめてくれたロハンは


「これで終わったんだね」

と言った。


「はいお兄様。人の事でも見るのは辛いものですね」


「馬鹿なやつはそれ相当の人生を送るだけだ。あの令嬢は親がちゃんとした人のようだ、心配はいらないと思うよ」


「お兄様の言葉はお薬のように心を落ち着かせてくれます」


「これからはアーサーの役目だな。今頃焦ってこっちへ向かっているだろう」


ロハンの言った通り少し経った頃にアーサーが焦って屋敷にやって来た。


「間に合わなくて申し訳ないミルフィア。嫌な物を見たらしいね。側にいてあげられなくてごめん。仕事なんて辞めてしまおうかな、ミルフィアを守れないなんて意味がないよ」


「何を言ってるの?お仕事ができる人って格好いいと思うわ。もう大丈夫よ、あんな事をする人はそうそういないはずよ」


「そうかい?ミルフィアがそう言うなら頑張るよ。今日も美しい僕の天使」


「アーサー、君ってそんな男だったの?ミルフィアを任せるのは考え直そうかな」


「いたんだ、ロハン。これはミルフィア仕様だから心配しないでくれ」


「此処は僕達の屋敷だよ、いるに決まってるでしょう」


可笑しくなってしまったミルフィアは二人をお茶に誘った。


「頭に綿でも入っているのかな、その男。あんな場所で騒ぎを起こしてただじゃ済ませられない。この頃出回っている恋愛小説にそういう場面が出てくるというのは聞いていたんだけど、ほんとにやる奴がいるなんて驚きだ」


とアーサーが言ったので


「「そんな小説が出てるの?」」


「相変わらず気が合ってるね、妬けるよ。巷で売られていて結構人気があるらしいけど、実際に被害が起きたとなると王宮側でも考えないといけなくなってしまった」


ミルフィアはロハンの顔を見て頷いた。

そこで漸く正直に昔予知夢として見たことと、似たようなことが自分に起きるのではないかと怯えて暮らしていたことを話した。

もうこれからの記憶は残っていないので前世については誰にも話すつもりはなかった。


「そうだったんだ。どこか遠くを見ているような気がしたのはそのせいだったんだね、話してくれてありがとう。怖かったね」


と言って頭を撫でてくれた。


「予知夢はもう見なくなったの?」


「五歳のときが一番はっきりとしていて、後は時々見ることがあったけど、今はないの」


「そう、良かった。もう怯えることはない。僕ともうすぐ結婚するんだから安心すると良いよ、僕が全力で守るから」


「頼りにしてます、アーサー様」


甘いムードに退散を決めたロハンだった。


アーサーは結婚を機に伯爵位を譲り受けた。ミルフィアと暮らすためのタウンハウスを宮殿の近くに買っていた。モーガン家から近いのでロハンはご機嫌である。
















誤字脱字報告ありがとうございます。大変助かっています、

もっとイチャイチャさせようと思っていたのですが、たどり着けませんでした。次回で最終回にしたいので溺愛ぶりをを書きたいと思います。

次作  貴方の愛は誰のもの?記憶をなくした私は消えようと思います  を執筆中です。読んでいただけると嬉しいです。

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