ᓚᘏᗢ 背伸びがしたい仔猫と童心に返る老猫 ᗢᘏᓗ +冥福
8月になる一週間ほど前、姉が仔猫を拾ってきた。
別に仔猫を拾ってくるのは構わない。だが自分で面倒を見ないのは迷惑だ。
初め家族から聞いた話では、一日預かってくれ、というものだった。そんなぐらいなら自分で面倒見ろと言いたい。
拾ってきて医者へ連れて行き、その足でウチへと来た仔猫。キトゥンブルーの目をしたキジトラ白の模様のオス猫。なんか旦那の実家で猫が亡くなったとかで、プレゼントしようと企んでいるらしかった。生き物をいきなり連れて来られたら、相手も迷惑だろう、と思わないでもない。家族もそこを注意したらしい。
そこで姉が癇癪を起したようだ。子供かッ! 自分が考えた通りに行かないと苛立って怒り出す。幼稚なんだ。家族とも同様の見解だった。
お盆に連れて行く、とそれまで預かってと言っていたらしい。いつの間にか日にちが増えていた。ウチにも猫がいるんだし迷惑だと言っているのに……。
何日か経つと家に仔猫用のおもちゃやら、トイレやら、エサやら、増えていく。旦那の実家から断られたようだった。なし崩し的にウチに居つかせるつもりなのだろうか。
里親探しが難航している。里親ってのはもちろん仔猫の、だ。出来れば問題ないと思われる知人。ネットとかで探すと虐待とかが怖いじゃん。また猫やら犬やらを飼ったことがある経験持ち。仔猫、結構やんちゃだから途中で面倒見切れないからと捨てられても困るし。このぐらいは最低限望みたい。
仔猫などが欲しいと言っている人なら、普通はもう手に入れている。そんなにタイミングは良くない。
動物を飼えるという人も少ない。すでに飼っている、とかね。動物不可の家だったり。動物好きでもアレルギー持ちだとか。
身近だと全滅しているんだよな。
仔猫用のエサ、仔猫が食わない。残した物をウチの猫が食べていた。そして仔猫は成猫のドライフードをガッツいている。あべこべだ。
仔猫は仔猫のエサの容器ごとひっくり返して遊んでいる。ウチの猫は仔猫のエサを綺麗に片している。エサの把握が出来ない。一応これでも猫の食べる物と排泄の管理は可能ならしている。だが出来ない。てめえら人の隙見て交換するんじゃねぇよ!
仔猫はトイレの躾けもまだだったのか、部屋が匂う。あっちでう〇こが転がっていて、こっちで散らばっている。部屋の隅をトイレにしたり、椅子の下で排泄したり。飼い猫も玄関の猫用のトイレまで行くのだが、周りにしちゃう。
迷惑が二倍になっている。
ウチの老猫、いつもテレビの上の狭いバランスが必要な場所が好きだった。たまに熟睡してテレビから落ちてもした。もしくはテレビの前でよく寝ていた。
8月に入ってすぐ。朝、飯を食べるときにテレビを見たりしている。だからだ。そのときはテレビの上に猫が見かけないと部屋を見渡したのだ。
部屋を探すと隅に横たわっていた。じっくりと見て、ちゃんと呼吸をしていることを確認する。これは以前、犬が亡くなった時に、私はそんなわけがないと胸が上下に動かないことが信じられず、じっと見て、僅かに毛が揺らいでいたのを確認して生きていると誤認したことがあった。それはたぶん自分の呼吸で毛がそよいでいたんだと思う。だからこそ、ちゃんと見るようになった。
調子が悪い様子だったのは前日の夜からだったそうだ。私はその猫と一緒に寝ているわけではなかったので気付くのが遅れたのだ。数週間前にも調子が悪かったのか大人しかったことがあった。でも次の日には調子は戻っていた。だからしばらく様子を見た。見てしまった。すぐに医者に連れて行ったからと言ってどうにかなったわけではないとは思う。そう思うのだが、やはり初動が遅かったかもしれないと後悔してしまう。にゃーにゃーと仔猫のエサを強請ってる姿は元気だったから。
今年の初めに亡くなった猫はデブ猫だったから多少は調子が悪くなってからでも保った方だったのだろう。風邪を引いて二か月弱。しかし、この猫は痩せていて、仔猫を除けば私が知る最も軽い猫だった。
翌日の朝、家族がミルクを無理やりにでも口に付けて舐めさせていた。何か口にしないと弱ってしまうのは分かっている。なので少し強引にでも栄養を与えようとしたのだろう。
でも私が次に見たときには冷たくなっていた。家族はその前にまたミルクを飲ませていたという。つまりその時は生きていたのだ。
トイレにも行けなかったのか、猫を退かした畳には漏らした跡があった。
ご飯時、テレビの前に仔猫がいる。テレビの上にはまだ登れないようだ。
テレビの動いている人物を叩いたりしていた。
だとしてテレビの画面が隠れるのは一瞬だけで文字が読めなくなったりはしない。
以前だと垂れた尻尾が画面の邪魔をしていた。尻尾を裏側へ退かしたり向きを反対にしたりして対策したものだ。
テレビの上に猫がいない、と悲しくなる前に仔猫が暴れていて情緒が崩れる。
なんだろう。未だに亡くなってから、この猫を想って泣けていない。