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第0話 絶体絶命
周りを囲む怪物達の息遣いが、すぐ傍まで近づいてきている。
怖い。死にたくない。どうしてこうなった。
頭はそんなことで一杯だ。
装備は小ぶりのナイフと、バックラーのみ。こんな物で一体どうするっていうんだ。
少し浮かれていただけじゃないか。
ファンタジーの世界で、見たことも無い雄大な自然の中で、ゴブリンのような化け物に出会って。
意外と倒すことが出来て。嬉しくて。
その結果がこれだ。
僕は今、完全なる復讐対象。所謂、仇として囲まれている。
勿論ただで殺されてやる訳には行かない。
こうなったのは、僕のせいだ。それは分かっている。
しかしだ。しかし。
あの美しい女神の頼みを断っていれば、縁側で茶を啜り、日光浴をする、平和な未来もあったのかもしれない。
まあそんなこと、僕の望むところではないのだが。