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その③

朝の教室 AM8時ごろ


伊勢は教室の一番後ろの窓側の席へ向かっていった。

まだクラスの半数も教室には集まっていない。まあ、それもそのはずである。何故なら、授業は8時40分から始まるので20分前に入れば充分に事足りるからだ。


伊勢は授業を殆ど聞いていない。しかし、成績は真ん中よりも上の方である。嵯峨が言うにはバカではないらしい。

「さぁてと、今日はどこでサボろっかな。」

そうつぶやいて何気なく窓の外をみると白い清潔感ある制服の集団の中に一つだけ浮いている紺色の制服が伊勢の目に映った。


「ん、あれは昨日みた転校生じゃん。さっそく嵯峨に報告しなきゃ。」

伊勢は隣の教室へと向かっていった。


「嵯峨ぁー。いるか?」

伊勢は馬鹿デカイ声を出して、教室を見回した。

見た感じでは嵯峨が居なかったので長髪の女の子に親しげに話しかけた。

「ねえ、凜ちゃん。睦月はまだきてないのかな」


凜ちゃんと呼ばれた女は長い髪を鬱陶しくかき上げながらいった。

「今日はまだ見てない。というか、次にその名で呼んだら殺すぞ。」

女の子らしかぬドスの効いた声だった。

「無理無理。ただが叙位12位の凜チャンなんかに叙位5位のオレが負けるわけがないし、それに殺しは校則違反だよ。『女帝』の凛チャン。」


この学園は叙位という制度が設けられている。

これは、学園の中で明確に生徒の権力をあらわしているものである。

叙位は放課後に、部活とは関係なしに生徒同士がリアルファイトを行い順位を決めている。



その中でも叙位20位以内の優秀な生徒に通り名がつけられるシステムになっている。

海原凜は、女性の中でトップの位置にいる為『女帝』という名が本郷理事長から授けられている。

無論、通り名を付けるのは本郷理事長の趣味である。



「どうかしらね。あんたなんかが叙位5位なわけない。なんかコネでも使ったんじゃないの。貴様の通り名『闘神』が泣いているぞ。」

海原は伊勢を皮肉った。

海原と伊勢の痴話喧嘩が始まろうとしたときに後ろから声が聞こえた。


「二人とも朝から五月蝿いぞ。」


伊勢と海原は声がする方に顔を向けるとそこに嵯峨が不機嫌そうに立っていた。


「コイツが悪い。」


海原と伊勢はまるで双子のような息ピッタリのハモりをみせた。

しかし、二人はそのハモリが気に入らなかったのか、互いに睨みつけ始めた。


「ところで竜司はなんで隣のクラスにいるんだ?」


嵯峨は二人の間を邪魔するように割ってはいっていき自分の席に荷物を置いた。

伊勢は用件を思い出したのか海原とのにらめっこを止めた。

「そうだった。凛ちゃんがうるさかったから危うく忘れるとこだった。やっぱり昨日言った転校生はやっぱり男だったよ。」

「そうか、話はそれだけか?」

嵯峨は次に出る言葉に予測がついていたが、一応伊勢に聞いてみた。


「まさか昨日の賭けのことは覚えてるよね。」

伊勢はニヤニヤしながら嵯峨をみている。

「さぁな。なんの話しだかまったくだ。」

「そりゃあないよ。昼飯にタダでありつけると思ったのに。」

嵯峨がとぼけるように言うとすぐに伊勢はオーバーなリアクションをとった。

「伊勢に嵯峨、賭け事は校則で禁止されているのを知っててやっているのか。伊勢はともかく嵯峨までなにをしているんだ…。」

海原は呆れたのかため息をつきながらつぶやいた。

「うるさいなぁ。これは男同士のお話だから、凜チャンには全く関係ないよ~だ。」

伊勢は嵯峨との会話を邪魔されたのが気に食わなかったのか海原のお小言が嫌だったのかはさだかではないが海原には無関係であることを主張していた。

「海原にまったく関係ないことは無いだろう。ライバルになる可能性があるんだからな。」

「しかし、いまの時期に転校生というのは気になるな。」

海原はを独り言のようにつぶやいた。

「それに転校生の情報が入ってないのも気になる。」

嵯峨はカバンから教科書を取り出し、机の中に入れてゆく。

「私は今知ったぞ。ここに転校出来るのなら余程の強いものなんだろうな。」

海原が少しばかり危機感を持っていることは口調でわかった。


「二人は見てないからわかんないけど、オレがみた感じでは百位ぐらいが限界だね。」

「そんなに頼りないのか?」

海原は眉間にシワを寄せながら伊勢に疑問を投げかけた。

伊勢は呆れながら手を振って「ありえないよ。」と言った。

「だが、情報が少な過ぎる。伊勢はどんな根拠があってそんな事がいえるんだ?」

嵯峨は、いつもは「そうか」と言って片付けてしまう海原があまりにも伊勢に食い下がるのを見て不思議に思った。

「海原、どうしてお前は転校生が弱いかことに疑問を持っているんだ。ただのスポーツ特待生かもしれないだろ。」

「なら、ただのスポーツ特待生が五月の時期に転校してくるのか。それにこの学園は二年前からスポーツ特待生の引き抜きはしていないし、今回が引抜だとしても生徒にこんなにも情報が入らないのは明らかに不自然だろう。」

海原は一気に捲くし立てるように自分の疑問をぶちまけた。

それを聞いた嵯峨は、海原も自分と同じ様な考えを持ったことを知って笑ってしまった。

もちろん、海原や伊勢にはわからない程度にだ。

所詮、他の人間と同じレベルの思考力しかないという平凡な自分に笑っていた。しかし、笑い声が聞こえたのか笑った顔を見られたのかは定かではないが、海原はあきらかに顔を不機嫌に歪ませ、嵯峨に言った。

「何がおかしい。何故、嵯峨はわらっていられる。」

「いや、海原の言っていることは正しい。おかしかったのは伊勢から聞かされたときの俺の意見とあまりにも似ていたのでな。」

「言い訳などいい。」

海原は依然として不機嫌な海原は怒って教室を出て行ってしまった。

「あーあ、凜ちゃんが怒っちゃった。放課後が怖いぞぉ。」

伊勢は少し楽しそうな顔で言う。

「分かってる。」

嵯峨は覚悟というよりも諦めた感じで呟いた。

「あっ、あと昼飯の件は忘れないでねぇ。」

「あぁ、忘れてた。」

嵯峨は深いため息をついた。




やっぱり二週間に一回のペースのにおとします。

すいません。

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