the worst day in one's life 生涯最悪の日
えっと初の投稿です。
稚拙で不甲斐ない文章ですがよろしくお願いします。
拝啓
日差しも強くなり始めているこの頃ですがいかがお過ごしでしょうか・・・。ってちゃんとした手紙の書き方なんて母さんは俺に教えてないよね。
まぁ、学校で習った気がするけど親子なんだから堅苦しいのは抜きにするね。
六月十日にいよいよ月詠武術学院に編入することになりました。
十日からは寮生活になるから来週からの仕送りは寮のアパート宛に送ってね。
間違ってに学院宛て送っちゃダメだからね。
この前からスポーツを始めたって聞いたけど、母さんはもう若くないんだからくれぐれも無理はしないようにね。
あと、連絡しないでこっちに来ないでね。いろいろと手続きが必要だから門前払いされる羽目になるよ。
じゃあ、なにかあったら手紙か電話するね。
身体には気をつけてください。
琢磨より
「よし、これでいいかな。」
周防 琢磨は満足そうな感じでつぶやいた。
時計を見ると九時を指していた。
「そろそろ学院に行かないとな」
琢磨は前の学校の制服を手にとりホテルの部屋をでていった。
琢磨は学院に行く途中にコンビニの前にあった郵便ポストに両親宛ての手紙をポストに投函した。
「暑いな」
今年の春は異常なくらいに暑かった。
まだ5月だというのに気温は二十五度を超える日が何日もあった。
これも地球温暖化による影響なのか。と呟きたいほどの暑さだった。
琢磨が行こうとしている月詠武術学園は日本で一番広い高校である。
そこはここ二十年足らずの専門校であるが、現在では学院の名の通り日本で多くのオリンピック級の選手や格闘技でプロになった選手が多数いる。
意外なことに自衛隊や傭兵部隊などにも卒業生がたくさん輩出している。
もちろん武術や格闘技だけじゃなく、医者や看護師、軍医なども多い。
全国で難関とも呼ばれる程の高校となった。いわゆるブランド校なのだ。
女子生徒の制服も可愛く、男子だけでなく女の子にも人気校でもある。
琢磨がいたホテルから学院まではだいたい十五分程で着いた。
学院は都内の中心って言っても過言じゃない場所にある。
周りには高層ビルや高層マンションなどが立ち並んでおり学院からは東京タワーがハッキリと見ることができる。
琢磨は学院に入るのは二度目だったのですんなりとはいれた。
最初に入った時は侵入者扱いをされて警察まで連行されそうになったものだ。
その時にちょうど理事長と出会って解放されたのは言うまでもない。
月詠武術学院は5階建てになっており、様々な医療器具の揃っている医療棟、一般授業をおこなう学院棟、学院生全員が住む寮棟の3つに別れている。
そのほかに格技場が2つに体育館が2つ、そのほかに弓道場や剣道場、屋内練習場、射撃場などが完備されているなど街の中心部とは思えないほどの広大さである。
初めて見た時は違う国に入り込んだのではないかと感じてしまうほどの異質な空間だった。
慣れない琢磨は先生に先導されながら理事長室へと入っていく。
コンコン
乾いた木製のものを小突く音。
「入りなさい。」
すぐさま返事が返ってきた。
琢磨は扉の前で深呼吸をし、ドアノブを回した。
「失礼します。」
琢磨は部屋に入ると深々と挨拶をする。
「まぁ、座りなさい」
理事長と思われる人うながすと話しをきりだした。
「いよいよ明日から本校へ編入となるが緊張してるかね?」
「いいえ。こういうコトにはなれてますから。それに向こうよりは安全ですからね。」
琢磨は笑顔で答えた。
その様子を理事長はみると笑いだした。
「やはり君は素晴らしい逸材だよ。こっちもこっちで危険なのだがな。」
理事長は琢磨を褒め称えた。
それから五分程だが寮についての話を聞くと横に立っていた秘書の方が時計をみた。
「理事長。お時間がありませんのでそろそろ…。」
「そうか…。もうそんな時間か。」
理事長は名残惜しそうにつぶやいた。
「じゃあ僕も挨拶だけだったので失礼します。」
琢磨は手本のようなお辞儀をみせた。
それをみた理事長は顔を上げた琢磨の目を見ていった。
「明日から我が校の生徒だ。よろしくたのんだぞ。」
「はい。」
琢磨は丁寧な動作でお辞儀をした。
午後十時四十八分…。
時間が変わり学園の校舎は月明かりによって照らされていた。
そこに二つの人影がある。一人は小太刀を握って座っていて、もう一つの影はナイフを器用に指先で回しながら壁に寄りかかっていた。
「嵯峨はもう知ってるかな。明日は転校生が来るらしいよ。」
ナイフをもて遊んでいる伊勢が小太刀を鞘にしまう嵯峨に話し掛けた。
「あぁ、大槻の情報網でも性別さえも分からないらしいな。」
「へぇ、そうなんだぁ。あの電脳王の大槻がねぇ。」
意外そうにつぶやくと伊勢の手が止まった。
「どうした。」
嵯峨はいつもおしゃべりな伊勢が黙り込んだことに気味悪く思った。
短い沈黙…。
伊勢は真剣な眼差しで嵯峨に言った。
「なぁ…。転校生が男か女か明日の昼飯賭けてみないか。」
伊勢の拍子抜けな提案に嵯峨は落胆した。
「なにを言い出すのかと思えばそんなことか。」
「なに言ってんの!一食分はデカいぞ。学生は辛いんだからな。」
「そんなコトで真剣になれるなんて…。馬鹿かお前は。」
嵯峨は深くため息のをついた。
「別にいいじゃん。それで嵯峨はどっちにする。」
嵯峨は少し投げやりな感じで答えた。
「女じゃないのか」
伊勢は少し考えてた様子で言った。
「うーん、じゃあ俺は男でいっかなぁ。」
伊勢は再びナイフを回し始めた。
「これで賭けは成立だねぇ。」
伊勢は満点の笑みで話をまとめてしまった。
嵯峨はその笑顔をみて後悔した。そしてばつが悪そうに頭をかいた。
「竜司。実はドッチだか知ってるだろ。」
伊勢は小悪魔的な笑顔で答える。
「実は三限目サボって体育館の屋上にいたら理事長室で話してるのをたまたま見ちゃったんだ。」
「お前またサボったのか。この調子じゃあ今年も単位が厳しいぞ。」
嵯峨は伊勢の自由奔放さに少し呆れながら言った。
「そん時はなんとかなるよ。」
伊勢は相変わらず軽い感じで微笑む。
嵯峨は伊勢の顔を見ると説教をする気力がなくなってしまった。
そして、話題を無理矢理に戻し始めた。
「で、転校生の性別は男なんだな。」
「う~ん、そうなるかなぁ。でも…。」
伊勢は少し曖昧な感じで答えた。
「でも、なんなんだ。」
嵯峨はもったいぶる伊勢を急かすように聞いた。
伊勢がピタリとナイフで遊んでいた手をとめた。
「でも、この時期に転校してくる生徒にしてはあまりにも弱すぎるんだよなぁ。」
「そうか…。お前がいうなら間違いないな。」
嵯峨は伊勢の言うことを聞き入れたが納得はいかなかった。
伊勢の人を見抜く力は尋常じゃないほどずば抜けている。
実際に一年近く一緒に過ごした嵯峨はそれを実感している。しかし、この学院に中途入学するには相当の実力者でないと無理だ。もしかして伊勢が相手の力量を見間違えたのか。だがそれでは一体…。
嵯峨の思考がフル回転する。
しかし、結論を出すにはあまりにも情報が少なすぎた。
「なぁ、他に情報は無いのか。」
「う~ん。ないなぁ。」
伊勢もまさにお手上げ状態という感じで両手を挙げた。
「そうか。」
嵯峨はそれだけ言うと黙り込んでしまった。
いつもの嵯峨の悪い癖だ。なにかが矛盾しているとそれが解決するまで考えてしまう。結論は決してでてこないと分かっていてもだ。
伊勢は嵯峨を見てそう思った。
「ここで考えても結論はでないよ。それに明日になれば分かることだしね。」
その言葉に嵯峨は自分の思考回路を閉じた。
「そうだな。明日になれば転校生がどんな奴なのか分かるか…。」
「そうそう。その運命は神だけが知っている。だから明日になるのを待たなきゃ。」
伊勢がそう言うと嵯峨は立ち上がり伊勢とともに薄暗い学院内へと消えて行った…。
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週一ペースで更新したいと思います。