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白と黒の狭間で ~現冥境奇譚~  作者: 白杉裕樹
第一章
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第20話 出会いと共闘2

「おまたせしました。確かに、向こうからの資料には該当者は外出許可を出して外に出たそうです」


 一人の異能者が資料を見ながら答えた。

「該当者を発見。只今、式神に監視・追跡をさせております」


 宛先不明でギルド支部に送られてきた情報が正確だったという事か。


 最初は半信半疑だったが、試した甲斐があったという訳だ。

「それで、その該当者はどこに?」

 タブレットに地図を出すと、駅方面から橋を渡り……このキャンプ場の入り口にある広場に居ると報告があった。



「では、お望みどおりに仕掛けるとしようか」

 明らかにこちらが動くと踏んだ行動だ。

 罠もないだろう……あったとしても問題はない。



 該当者を襲えば、復讐者達も顔を出すと踏んだが……未だに行先不明だった。

 どうやら今回の獲物は、頭が相当良いみたいだ。


 前回のメンバーと比べると、若干少ない構成だ。

 さすがに、全員を連れてくるわけにはいかなかった。


 情報が偽の情報の場合もあったからだ。

 他の会場にも、数人ずつ監視として分散させてある。



「どちらにしても、まずはこの該当者から処分していくとする」




 ここまで長引いたのも初めてだ。

 本来なら、1戦すれば終わる。この日本という国での行動は、未開でありながらとても不思議な体験ばかりだ。


「何が起こるかわからないからな。慎重にな」

 そう言いながら、終のいる公園へ向かった。




 公園の端で待機する終。

 

 足元に霧が立ち込めたかと思うと、その霧が急に盛り上がり終に覆いかぶさろうと襲ってきた。


ぐぅぅぅぅ……

 瘴気からうめき声が聞こえる。


 憎しみや悲しみ、憎悪が凝縮され、集結した姿はドス黒い色をしている。



「こんな時に、瘴気かっ……!」

 苛立つ終。無理もない。

 討伐パーティーらしき感覚が迫って来るのが判ったからだ。


 目の前に現れる瘴気があまりにも数が多すぎる。


“「風の精霊よ、この汚れた一帯を吹き飛ばせっ!、暴風の嵐っ!

 (Spiorad gaoithe, buille an limistéar salach sa cheantar seo、Stoirm stoirme!)」”

 

 終を中心に竜巻が発生すると、瘴気の霧を容赦なく切り裂き、吸い上げていく。

 吸い上げられた霧は切り裂かれ……そして、粉々になって消え去った。


「全く、予想外だよ」

 そう言いながら、消え去った後の警戒を始めた。


 もうすぐ始まる。

 そう、自分の勘が言っている。



 いきなり終の周囲に戦闘結界が張られた。

 山の一部分を覆う広大な戦闘結界だ。


“防御結界っ!”

 何かが近づいてくる……炎の魔法だっ!


 結界の周囲に、炎の塊が辺り一面に降り注いだ。


「危なかった……」 

 終は、改めて構えた。


 広大な結界の中、どこから飛んできた?



 休み暇なく、今度は氷の巨大な塊が降り注いでいく。


「防御結界は……あと、2~3発喰らったら終わりか」



“魔力感知っ!”


 終が周辺の感知を始めると、どうやら山の方から点在するかの様に魔力を感じた。


「1つ……2つ……3つ、こちらかは確認が出来ないが……ええぃ、ままよっ!」


 防御結界を解除すると、終が弓を打つ仕草を始めた。


“炎の矢っ!(Saighead lasair!)”

 



「ぎゃぁっ!」

 どこか遠くで、男の悲鳴が聞こえた。


 命中したか……

 終は当初の考えを止め、キャンプ場の入り口の方へ走り出した。



 キャンプ場入口の上り坂を歩くと、キャンプ場に続く道とさらに山の奥へと続く道があった。

 その道はけもの道に似ていて、道幅は狭く舗装されていない状態だった。


 少し小高い丘から見下ろすと、左手にはキャンプ場が見える。

 右側さらに下の方に公園が見えた。

 すぐ脇で男性が1人、倒れていた。


 例の復讐者達のパーティーではなさそうだ。

 どうやら重傷を負っていいるが、命にかかわる状況ではなさそうだ。

 終はホッとした。

 気絶している術者を転移させると、次の場所へと移動を始めた。



 とにかく、ここにとどまっているのは危険だ。

 すぐに敵の誰かが来るだろう。


「いたぞっ!」

 どこからともなく声が聞こえた。


 見つかったか……声がしたのは、山の上。

 次の瞬間、何十発の炎の槍が周囲に着弾する。


 魔法の炎によって燃え広がる、森の木々。

 戦闘結界内だから、この被害によってケガをしたり死亡したりする者はいないだろう。

 異能者(魔術師)の素質を持つ者を除いて。


 よく見ると、右上方に複数の人影が見える。

 あれが、討伐パーティー。


 欧州魔術師ギルドから派遣されてきたというが、その行いは乱暴そのものだ。

 目撃者をも攻撃対象となるのだから、余程、権限が高位の位置で認められているのだろう。


 しかし、今は自分の敵だ。

 彼らを排除しないと、自分はずっと追われるだろう。


 対魔法、対物理防御の護符を発動させた。

 薄明るく輝きながら、終の後ろで規則正しく並んでいる。


「ある程度は、何とかなるな……まずは、先制攻撃っ!」

 終が手をかざすと、彼らの上空に魔法陣が出現した。


“いけっ、神々の鉄槌!”


 そう言うと、上空の魔法陣から無数の雷と氷の刃が巨大な竜巻を発生させ地面の地形を変えようとしていた。

 防御結界を張り、先制攻撃を耐えたみたいだ。


 しかし、何人かは膝をついてるようだ。

 防御で魔力を使いすぎたのかもしれない。

 次の瞬間、予想通り飛んでくる無数の魔法の槍。


「ちと……困ったな」

 終が困惑した。

 こちらの防御結界の張り直しを許さない程の攻撃が連続して降り注いでくる。

「やはり、場慣れしてるよなぁ」


 いくら魔法が無詠唱と言えども、詠唱の解除と詠唱の間にほんの少しだけ無防備な時間が発生してしまう。

 この時ばかりは防ぎようがない。

 個人では限界があるという事を露呈していた。


 詠唱の隙間にくる攻撃は、護符に耐えてもらうしかなかった。


“火炎の魔槍っ!(Spear draíochta lasair!)”


 終も相手の魔法と魔法な間に、反撃を試みた。

 もう、総力戦……消耗戦の戦いになりつつあった。


 どちらかが力尽きるまで、この戦闘は終わらないだろう。

 戦闘が終わっても、どちらも無傷とはいかない。


 もしかしたら、復讐者達はそんな状況になるのを狙って姿を現さないのだろうか。


「自分って、嫌われてるんだなぁ~」

 周りはみんな敵。

 いつまで不殺が続けられるのか……不殺を辞めた時、自分はどうなるのだろうか。


 ふと、そんな事を考えていた時、突然、戦闘結界に亀裂が入った……



 新しい敵っ!?


 終の心に、改めて警戒を強めた。

 

 

 結界を破って侵入してきたのは、一人の男だった。

この作品は、基本的に火曜、金曜にアップしていきます。よろしくお願いします♪


本編である「出会いと共闘」編は事情により毎週火曜日の投稿となります。

金曜日は閑話が不定期に入る予定です。

次回の「出会いと共闘3」は、10月25日0時にアップ予定です。


乞うご期待ください

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